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「本日の意見書を読み上げます。えぇっと、『クラスの一部の女子の間で男性同士の恋愛を描いた小説が流行っている。風紀を乱すので禁止して欲しい』」
「おい、まともな奴は学園にいないのか」
「そんなのが流行ってるんですか?」
「あ、俺の婚約者も読んでたっすよ~」
今日も目安箱を開ける日だ。
ボンボン王子の恋愛の進捗は知らないが、相変わらずラブレターは入っている。
この前の時はまともな意見書(生徒会関係ない)が入っていたため、今回の意見書はあまりの落差に私も驚いた。すごい、他人が読んでる小説を気にする余裕があるとかどんだけ学園生活が余裕なんだ。
「まぁ、それでは男子生徒が交換して読んでいる春本も禁止しなくてはいけませんね」
ネメック侯爵令嬢が珍しく声を上げる。いつもと違ってハッキリした発言だ。どうした?
というか、何でもかんでも本って結構高いのよね。だから交換したり、貸したりするのってオッケーだと思うんだけど。うちには本なんてほとんどないし。図書室バンザイだし。
「え……」
「いや、そこまでは……」
「みんなやってるんだし……」
「春本の方が風紀を乱しませんか? それが許可されるなら男性同士の恋愛を描いた小説も許可されるべきです。というか個人の趣味に何か言われる筋合いはありません」
どうした、ネメック侯爵令嬢。なんか今日、圧が強めですね。イメチェンですか? それとも変なもの食べた? 早く帰りたい?
「ば、バートラム嬢はどう思う?」
ボンボン王子、困った時だけ私に振らないでくれ。というかその反応なら王子達も春本読んでるんですね。お年頃ですからね~。仕方ありませんよね~。おっと、ニヤニヤしたらいかん。
「風紀を乱すというなら、第一王子殿下とピンク頭さんが一番乱していたと思います。小説の影響力は可愛いものかと」
「それを言われると痛い……」
ごめん、いじめちゃった。この前、私に好きな人を教えないからだよ。別に名前を教えて欲しいわけじゃない。私が大真面目に答えたのに、好きな人が「いる」「いない」で良かったのに、誤魔化すからだよ。私、根に持つタイプだから! 食べ物の恨みほどじゃないけど!
「別に男性同士の恋愛小説を読んだところで何が問題なのでしょうか。誰かに同性と恋愛するよう強制したのでしょうか。他人に強制したなら問題ですが……。同じく春本を読んで鞭で打ったり、靴で踏みつけたりしなければ読んでいてもいいのではないですか?」
読んで妄想するのと、強要するのは違うもんね。
「何故鞭で打つって出てくるんだ?」
「え、もしかして読んだことあるのかぁ?」
アーロン様、ニヤニヤしながら聞かないでください。デリカシーないですよ。
あと、ボンボン王子はハードめな春本は読んでないことがバレましたね。さすがボンボン、お子ちゃまよね。あ、変なところでマウントとってしまった。
ユージーン様と眼鏡令息(ごめん、名前まだうろ覚え)は何でショック受けた顔してるんですか。女性に幻想抱きすぎですよ。
「借金返済のために祖父や父の春本を売りましたね。その時、商人がペラペラめくるのを横から見ていました。それにしても春本って高く売れるんですねぇ! あ、他人のものを転売したらそれはまた問題ですね」
「そういった問題は起きていないようですし、禁止する必要はありませんわね」
ネメック侯爵令嬢が食い気味に同意を示してくれる。
それにしても春本の買取価格、高かった。あれで助かった面もあるのよね。
結局、今回の意見書に関してはスルーという結論になった。ネメック侯爵令嬢はそそくさと帰って行った。やっぱり用事があったのかな?
「ごきげんよう。ウィロウ・バートラムさんね?」
「はい」
ある日の昼休み。図書室で借りた本を読んでいると、見知らぬ令嬢に声をかけられた。
生徒会に入ってからこういうことは増えたので、用件を聞いてから名前を聞くようにしている。
「放課後にサロンまで来て頂けるかしら? あなたに会いたいという方がお待ちなの。今日は生徒会もお休みだと聞いていますから」
会話だけ聞くといじめの呼び出しよね。ツラ貸しな!みたいな。この方、上級生のようだし。
でも、教室で他の生徒達もいる中で堂々と言われたし、何より攻撃的だったり、一方的だったりする感じがしない。
「それは無理です」
だが、断る。即答した私に上級生の令嬢は目を見開いた。
まぁ無理もない。サロンって学園の中にあるのに使うのに金要るからね。
学費払ってるのに、なんなら上位貴族で成績悪い人は寄付金もはずんでるのに、使うのに誰であろうと金取るからね! 大事なことなので二回言います。
でも、お金が要るということはその分、客層がいいのだ。学園で客層なんて変な言い方だが。いわゆる高位貴族しか使わないし。第一王子みたいにピンク連れ込んでたのもいるから客層がすごくいいわけじゃないか。
「無理です」
上級生が何か言いかける前に再度念押しした。
再度の拒否に聞き耳を立てていたクラスメイト達が息をのむ。
サロンへの呼び出しは、ほぼほぼ高位貴族からの呼び出しだ。学園は平等って言ってるけど、フツーにそれ建前だから、
でも、生徒会メンバーなら生徒会の用事と私を呼び出せばいい。それに、大体呼びに来るのは眼鏡令息だ。つまり、サロンに私を呼び出す高位貴族に心当たりがゼロである。
だって私、友達いないし。私のボッチっぷりを舐めるなよ。生徒会に入ったってボッチだからな!




