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Elgard  作者: 志門
第一章 英雄の目覚め
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旅人の訪れ

 エリックの住むベルトール村は大樹を中心とした村でその周りに集うように集落が形成されている。さらに集落全体を石づくりの防護壁で囲い外敵から身を守っている。


まあ外敵といっても大樹によってか昔からあまり獣の類、それも小型のもくらいしか近寄っては来ないので比較的のどかな方である。

そんな村の東側にエリックの両親が住むエルガルド家の平屋建て一軒家があった。

洋風の建築様式でレンガが主な感じのいたって庶民的な家で物干し竿のある庭でエリックはしきりに父さんからもらったおもちゃの短剣を手に剣の練習をしていた。


「ていやあー--!」


――ブン!


大きな声を出しながら完全に自分の世界に入り込んでしまってるエリックは人目も気にせず無我夢中でおもちゃの短剣を振り回すのだった。はたから見れば小さい子が奇声を上げてごっこ遊びをしているようにしか見えないが本人は、〈さながら物語に出てくる英雄〉のように至って真剣である。


「よお!坊主、何やってんだ?」


そんな中通りすがった一人の男にエリックは声をかけられた。


「!??」


「チャンバラか?相手がいないなら俺が一緒に遊んでやるよ!」


そう話しかける男に最初こそ驚いたものの、父親以外に自分の相手をしてくれる人がまだ居なかったためその好奇心からついはしゃいでこう返した。


「えっ?いいのっっ!?」


「ああ、ちょうど暇だったところだ!坊主チャンバラは初めてか?」


「うん!!やってみたい!」


「よっし、いい返事だ!ならちょいと邪魔するぜ。いいか、まずはな――」


と言って男は軽々と仕切りを飛び越え庭に落ちてる枝木を手にエリックにチャンバラのやり方を教えるのだった。



いまベルト―ラ村では珍しく旅人の一団が訪れていた。行商人以外めったに人の来ることの無いこの村で久々の来客に村人たちはいつもより少しだけ騒がしかった。


世界中を旅する冒険家はソロの探索者も多いがこうして複数の探索者同士でチームを組んで旅をすることがほとんどである。俗に云うクランというもので大体八人から多いところは二十人ほどいたりもする。数十人ともなるとギルドというものになりキャラバンなどを組んで大所帯で移動することになる。まあ呼称の仕方は様々あるが地域や所属する人によって決めらることが多い。違いはそんなにないが旅団やファミリア、組合やクランと呼ばれることが大半である。


エリックに話しかけた男シド・フルヴェスターが所属するのは旅団と呼ばれている。二か月前ようやく旅から帰還し資材調達や休息のためと称して各地を転々としながら過ごしていた。その一つがベルト―ラ村だった。


旅団自体、次の目的地もベルト―ラ村から近いということもありしばらく滞在する予定だという。そんな中暇を持て余していたシドが村を散策中にエリックと出会ったという訳だ。


「そうだ、その調子でどんどん踏み込んで来い!」


「うん・・せいっ!・・・」


三歳の誕生日に貰ったおもちゃの短剣もかなり振り回していることで段々とエリックの手に馴染むようになってきていた。


こうしてシドとエリックの出会いは三時間もの間チャンバラによって過ぎていったのだった。


日も少し暮れかかったころ母親のサラがエリックを呼びにきて楽しい時間の終わりを告げるのだった。


「エリック・・エリック~そろそろご飯よ~」


そう言いながら庭に顔を出したサラはエリックのほかにもう一人いることに気が付いた。


「あら!?こんいちは、主人のお客さんかしら?」


「いやいや、ちょいと通り掛けにこの坊主が目に入ってね。一人で剣の練習してるようっだたんで相手してたんだよ。」


「ああ、そうでしたか。すいません態々ありがとうございます!」


「なあに礼を言われるほど対してなんもしてねぇがな。よし坊主!今日はこの辺にしとくか」


「うん、ありがと!お兄ちゃんの名前はなんていうの?またれんしゅう相手してくれる?」


「俺か?俺はシドってんだ。しばらくこの村にいる予定だからな!暇なときはいつでも相手してやるよ。」


「ほんと?やったー‼」


「いいんですか?何か予定があって滞在されてるのでは?」


「大丈夫大丈夫、そこらへんはうちの団員が良くしてくれるんでな。俺は確認作業くらいでほとんど暇ってわけだ」


「そうですか、ありがとうございます。よかったわねぇエリック」


「うん今日も一杯教えてもらえたよ‼」


この日から、エリックにとって刺激的となる日々の幕が上がったのだった。


それからというものエリックは毎日のように剣を振りシドが顔を出しに来たときは相手をしてもらいながら時折、冒険の話や王都の話などを聞いたりしていた。


そうして行く内にシドたちも段々とこの村に馴染み村の人々もベルト―ラの一員として接するようになっていた。

何度もシドとの練習をするうちに他の旅団の人も一緒になって遊ぶようになってきた。

エリックは旅団の人から聞く冒険の話や伝説などを聞くうちに団のみんなとも仲が深まり家族のようになっていた。


こうしてベルト―ラ村に訪れたシドの旅団と共に過ごす刺激的な日々が一年半続くのだった。

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