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お題シリーズ

心のかけら

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2021/03/08




 この生が尽きる時、私は自分自身の心に誓ったんだ。


 この今に抱いた想いを失いたくない。


 この今に築いた関係をなくしたくない。


 私は、この心を守る。


 本物に打ち勝つために、私の心のかけらを、記憶のかけらを、彼に預ける。


 その前に、秘密をうちあけようかな。


 私はどうやら人間じゃないみたい。


 魔法で作られた存在なんだって。


 だから、魔法を使っている人が、行使するのを辞めたら消えちゃう。


 ひどい話だよね。


 神様の指先一つで、自分が死んじゃうんだもの。


 怖かったよ。


 泣きたかったよ。


 嘆きたくなったよ。


 でも、うつむいてられない。


 私には、大切な思いがあったから。


 だから、この心のかけらを、守らなくちゃ。


 大好きで大切な彼の中に、私の心を切り取って、埋め込んだ。


 ごめんね、勝手な事をして。


 でも、一緒にいたかったんだ。


 私が生きていた証を残したかったんだ。


 もうすぐ私は消されてしまう。


 本物の私に、偽物の私が消されてしまう。


 本物の私は、彼に会うのかな。


 そして親しくなる?


 いやだな。


 嫉妬しちゃうかも。


 だから、「待ってるから、私を助けてね」 






 偽物を消した。


 私には目的がある。


 そのためには、全ての物を利用する。


 偽物につくらせた、人脈を。


 培わせた、成果を。


 歩いてきた、道のりを。


 すべてを徹底的に利用して、果たさなけばならない目的があるから。


 心が痛い、なんてそんな事思わない。


 私の心はとっくの昔に、凍り付いてしまったもの。


 覗き込めばほら、心を形作るピースには何も映し出されていないもの。


 一度目の偽物を消した時。

 うん、何も映っていない。


 二度目の偽物を消した時。

 ここにも、映ってない。


 大丈夫。

 私はまだ。

 頑張れる。






 彼女の生が尽きた。


 偽物だった彼女はいなくなった。


 残ったのは本物だけ。


 僕は本物と協力して、目の前の困難を解決しなければならない。


 長い年月をかけて、さまざまな策をはりめぐらせて。


 そしてここまでたどり着いた。


 いまさら、後戻りなんてできるわけがない。


 なのにどうして、心のあちこちがいたいのだろう。


 今にも砕けてしまいそうだ。


 僕は拳を握りしめている。


 膝をついて嗚咽をこらえている。


 涙がとまらない。


 もし、という夢想がやめられない。


 ひょっとしたら、気が付いていないだけで、とっくに砕けてしまっているのかもしれない。この心は。


 だとしたら拾い集めないと。


 立ち止まる事なんて許されない。


 犠牲を救いのない本当の犠牲にしてしまわないために。


 こぼれた心のかけらを拾い集める。


 かけらの一つ一つを丁寧に。


 覗き込めば、たくさんの思い出があった。


 彼女と過ごした大切な。


「みつけてくれてありがとう」


「ずっとそばにいるよ」


「いっしょにがんばろう」


 消えてもまだ、彼女の言葉が尽きないなんて、不思議な事があるものだ。


 きっと、僕の記憶がそう言ってるんだろう。


 拾い集めた記憶の底から、僕は彼女を蘇らせた。


「待ってたよ。私を助けてくれてありがとう」


 もう大丈夫。


 行くよ。


 君のいない世界を。


 君と共に歩くいていくよ。


 君の心のかけらは、ずっとこの胸の中にあるんだから。




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