1日目 朝 眞島悠人
起きて、制服を着て、部屋から出る。階段を降りてリビングのドアを開け「おはよう」と声をかけた。母さんはキッチンにいて、父さんはソファーで新聞を読んでいた。普通に普通できっと周りから見れば何の変哲もない日常だったんだろう。
「お、悠人。おはよー」
「奏太、おはよう」
奏太は僕のことを兄とは呼ばない弟だ。いわゆる二卵性双生児ってやつで見た目はあまり似ていない。奏太は見るからに運動部ですって感じを出してるが、奏太曰く僕は生物部にいそう、とのことだ。
「悠人が起きてるって珍し。しかも制服って何事?」
今日は三月も下旬。そう、春休み真っただ中だ。
「起きてるのは珍しくないだろ」
「そうでもないとおもうんだけど」
「悠人、出かけるの」
母さんがキッチンから顔を出した。目玉焼きのいい匂いがする。
「あー、うん。ちょっと」
「まあ、最近は体調もいい感じだしね。いつ戻るの?」
「あ、泊りになるかもしれない」
「え」
「なにそれー、悠人どこ行くのさ。俺もつれてけよ」
「奏太は無理」
「あなた一人で行くの?泊まり?どこに」
「まあ、母さん。たまにはいい機会だ、そっとしといてやれ」
父さんがソファーからテーブルに座りなおす。
「うーん、そうね。悠人だしね」
「なにそれ、俺じゃダメなんだ」
「そうね」
「ひどっ、母さんひどい!!」
そういうと奏太は携帯を手に取った。
「どれどれ」
隣から画面を覗きこむ。メッセージアプリに熱心に励んでいる最中だった。
「何だよ悠人」
「いやー、なんでもない。あ、この≪☆ナナ☆≫って子彼女か何か?」
「…ち、ちがうし」
「あっ、何かごめん」
「いや、ほんとに彼女じゃないんだよ」
「ほう」
「ほんとだからな!?」
「でも、すきだと」
「悠人意地悪いよね」
「無防備な奏太が悪い」
アイコンは自撮りとかじゃなくって宇宙の写真っぽい。意外なといえばあれだが奏太っぽくないきがするな。
「とりあえず、つきあってないから。中学でつきあえたほど俺大人じゃないから」
「そういえば、もうすぐ高校生ですね」
「おう」
「奏太は中高一貫の中学そのまま上がったんだったよね」
「うん?」
「来年もナナちゃんと同じ学校か」
「なっ」
「高校ではつきあえるといいね」
「ひどい、悠人もひどいわ」
「まあ、二人ともご飯食べておちつきなさい」
「いただきます」
「ふぁーい」
久しぶりに家族全員出朝ご飯を食べている気がする。おいしい。やっぱ母さんって料理上手いのかな。だったら僕ってすっごく幸せ者だ。