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第八話 キャンプに向かおう

ゴブリンを殺した後、最後に落ち着いて周りを確認し、緊張をとく。不意に右手に持っていた黒い剣が消える。

この右手に持っていた剣は、魔法で造り出した闇属性の剣である。普通は魔法で剣を造るのは、かなりのマナを消費するので、生徒の間では好まれない。しかし、俺は使い慣れているせいでいつも使っている。


一息ついた後、地面に転がっているピンポン玉ぐらいの大きさの魔石と鉈を回収した。

『魔物は不思議やな。殺すと煙になって消えるんやから』

『それが、魔物ですぅ』

イーちゃんが相づちをいれる。

ダンジョンの中の魔物の特性として、殺された魔物は黒い煙となって消える。消えた後には、魔石とドロップアイテムが残される。

『この魔石、いくらくらいになるん?』

『ゴブリンの魔石は約1000円くらいですぅ』

魔石の値段は、その大きさと質によって、決まる。

強い魔物ほど高くなる。それは、強い魔物ほど、魔素が濃い場所にいる為、魔石の大きさと質が良くなるのだ。大きく質のいい魔石は生み出すエネルギーも多くなる為、値段も高くなる。

「ええっと、進む方向はこっちやな」

木に付けた印を確認して、歩き出した。

その後、魔物に教われることなく、二時間ほどして、森を抜けることができた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

森をねけた先には、崖が広がっていた。

崖の下を覗くと、眼下には、岩山があり、岩山の

左手には森が広がっている。


『この崖を降りるんやな』

『そうですぅ この崖を降りて、右手にある岩山の稜線づたいに進み。途中、岩山を降りて、真っ正面に見える湖のほとりまで、行きますぅ』

確かに森の奥遠くに湖らしき物が見える。

『ちょと、休憩しよか。イーちゃん、周りの警戒ヨロシク』

そういって、適当なところに、腰を下ろして寛ぐ。


30分ほど休憩をとった後、崖を降りる準備をする。

まず、太い木を二本選び、そこにロープを結ぶ。

そして、二つのロープの先端と崖に降ろすロープをY字になるようにつなぐ。崖の縁近くに先端が滑車になった楔をハンマーで打ち付け、滑車の部分にロープを通す。

『イーちゃん、崖の高さなんぼや』

『224メートルですぅ』

『高』

20メートルのロープを12本繋ぎ、ロープの先端に重石を付けて、ロープを崖に降ろす。

ゆっくり、ゆっくりロープを降ろしていくと、十分して、ロープが底に付いた感じがした。


『流石に、いろはが編んだロープは軽いな』

『普通のロープなら、自身の重さでロープが切れても不思議ではないですぅ』

『それは、通信線を通すときの課題かな?』

『通信線が自身の重さに耐えれない可能性は高いですぅ』

『因み、土属性の魔法特化のハンター使用して、階段造ったら、何年かかる?』

『ハンターの技量によるとおもいますけど、5年でできれば、御の字だと思いますぅ』

『5年かぁ。悩ましいな、そちらのプランも有りかもな』

『実際は、無理なプランですぅ。階層をまたぐ魔物がでるかも知れませんですぅ』

『そらまずいな。ところで、崖を降りている途中で魔物に襲われる心配はないんか?』

『崖を降りている途中は大丈夫ですぅ。危ないのは、崖を降りる瞬間と降りた後が問題ですぅ』

『さよか、行きはそれでいいんやけど、帰りはこれを登らなあかんのやな』

憂鬱になりながら、帰りの為の仕掛を造る。

原理は簡単、空の容器にストレージに貯めた水を入れ、自分の体重と同じ重さの重石を二つ作る。

できた重石の一つは、ストレージに戻す。そして、先程と同じように、滑車が付いた楔を崖に向かって打ち込む。滑車にワイヤーを通して、ワイヤーの先に重石を付け、ゆっくりと崖の下に降ろす。重石が下に付いたところで、昼食にする。


少し休憩が終わったところで、先程降ろしたワイヤーをベルトの背中側に繋ぐ。

そして、ロープを持って、崖へ飛び出した。

ロープをしっかり持ち、崖を蹴りながら、少しずつ降りていく。所々で楔を打ち込みロープと繋ぐ。その作業を繰り返しながら、下へ下へ降りていく。

残り十メートルぐらいの所で、イーちゃんから警告が入る。

『崖下にロックカメレオン いちですぅ』

俺は崖に楔を打ち付け、体を固定し、崖に立つような姿になるそして、両手にリボルバーを構え、崖下を眺める。

『何処にいるん?』

『ここですぅ』

イーちゃんはそう答え、視界の一部にマークが浮かぶ。

『擬態が上手いな。リボルバーで殺れるんか?』

『多分大丈夫としか言えないですぅ』

イーちゃんが曖昧な返事をする。

俺は諦めて、リボルバーで狙いを定め、弾丸を発射する。弾丸はロックカメレオンの胴体に吸い込まれ、大穴が空いた。ロックカメレオンはギャーギャーと叫びのたうち回る。

『んー、ダメージは与えたみたいですぅ』

『もう一発打ち込みたいが、弾がもったいないな。さっさと崖に降りて、止めさそか』

そう言って、急いで崖を降りる。

地面に両足を付けた俺は暴れるロックカメレオンの頭部に照準を付け、リボルバーの引き金を引く。

パンッ乾いた銃声の後、ロックカメレオンの頭部が飛散する。暫くして、ロックカメレオンは黒い煙に包まれ、後には、魔石としっぽが残っていた。

俺は体を繋いでいたワイヤーに先程作った重石を付け、崖に固定して、自由になる。

『周囲に魔物の反応なしですぅ』

『集団じゃなかったら、この階層でもなんとかなりそうやな。因みに、ここ何階層なん?』

『階層は八階層なんですがここは階層の縁なんで、魔物は弱めですぅ。八階層は中央の山岳地帯が魔物の巣になってるみたいですぅ』

イーちゃんの説明に感心しながら、魔石とドロップアイテムをストレージにしまう。

俺は岩山を稜線づたいに周囲を警戒しながら歩いていく。

稜線は幅50センチもない場所だった。左右が共に崖になっており、時折、突風が体をたたく。

不意に右手の谷底から、ドラゴンと思われる叫び声が響く。

もし、谷底に落ちれば、命は無いだろう。ドラゴンと相対すれば、必ず死ぬ。自分の力量に合わない場所に行けば、死ぬ。それがダンジョンである。

稜線は強い風のおかげか、魔物に会わず進むことができた。山を二つほど越え、稜線の谷に着いたとき、イーちゃんが話かけてきた。

『マスター、ここから降りて距離は長くなりますが森を抜けるか、稜線を登って途中から降り、森を抜ける距離を最短にするか。どうしますぅ』

『イーちゃんの意見はどうなん?』

『どちらも一長一短なんですぅ。岩山の魔物は対応できても、森の魔物はヤバすぎですぅ。』

『それは、岩山で集団の魔物に会ったら、同じやと思うな、距離は?』

『予測ですが、ここから降りた場合は、下山に30分、森が二キロですぅ。途中ま行くと、登り30分、下山一時間、森が一キロですぅ』

『日暮れまでの時間はどちらのルートも大丈夫そうやな。そしたら、ここから降りようか』

そう言って、楔とロープを取りだして、森に向かって、下山する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


下山途中も遠くに魔物の姿を見るも、無事森に入ることができた。


森に足を踏み入れ少しすると、周りが異様な空気になる。

前方から何十もの甲高い羽音が響く。

『蜂系統、数、多数ですぅ』

イーちゃんが警告を出す。

音をたてないよう、最新の注意をしながら、後退る。

しかし、魔物は後退に合わせついてくる。

『イーちゃん、探査を切れ』

俺はすかさず、イーちゃんに命令し、身を隠す。

暫く、じっとしていると、羽音が遠ざかる。

『ふぅー、ヤバかったな。イーちゃん此処では電波はあかんわ。視界と音声等の受信系だけで警戒してや』

『了解ですぅ』

先程のルートを避けて、ゆっくりと森の中を進む。

森の中は、背の高い木で覆われているせいか、藪は少なかった。しかし、落ち葉が積もっているせいで、足音は完全には消せず、歩く度にミシミシと音がする。

ふと、甘い香りが奥から漂う。よく見ると木々が少し開けて、花畑があるようだ。

俺は花畑を避けるルートを取ろうする。

『マスター、ルートは花畑の向こうですぅ』

『イーちゃん、あれはあかん。花の匂いがきつい。確実になんか居る』

『そうですぅ?』

イーちゃんは納得出来ない感じで答える。

俺はゆっくりとだが、花畑を回り込むルートを確実に進んで行く。

大分進んだのだろう。水の匂いが微かにする。

ホッと一瞬、気が緩んだ瞬間、背後に気配が沸く。

振り向くと同時に腕を前でクロスにし、バリヤを全快にする。バキッ体の中を嫌な音が響き体が宙に浮く。十メートルほど、空中を飛ばされ地面を転がり木の根元で止まる。

大きな大きな熊だった。毛並みは綺麗な白銀、ただ、その気配は獰悪である。

怪我は幸いか左腕が折れただけで済んだみたいだが、体が動かせない。相手の隙が無さすぎる。

熊の魔物はゆっくりと距離を詰めてくる。

俺は頭の中で打開策を模索し、一か八かリボルバーに右手を添える。

『シルバーベアの毛皮には、弾丸は通用しないですぅ』

イーちゃんが忠告を入れる。

そんな事は解っている。それが目的ではない。

俺はシルバーベアに向かって、銃弾を発射すると同時に後ろに駆け出す。全速力で走りながら、ろくに照準を合わせずにリボルバーの引き金を三度引く。

木々の間を全力で抜けて行くが、それでも、シルバーベアのほうが数段早い。

シルバーベアの息づかいが聞こえる距離になった時、いきなり、目の前に碧の物体が現れすれ違う。

俺は驚きのあまり躓き、地面に転ぶ。


激しい息づかいが収まるのを待ち、目を開けると碧のプロテクタを身に纏う女神が見えた。



『女神降臨ですぅ』

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