第三話 学園ランキング戦 その三
今日は土曜日、いつもは授業が休みなんだが、特別に一年生のランキング戦最終試合とクラス代表の試合が行われる。
「なんで、土曜日まで、試合するんやろ」
「それは、先輩たちが一年生のレベルを見て、有能な一年生を部活に誘うためみたい」
「それなら、平日でもええやろ」
確かに、平日は先輩方も、授業があるので、一年生の試合は観ることができないが、平日の授業を休みにすれば、いいだけである。
「あと、今日は外にも、放送するから、土曜日にしてるんやと思う」
「えっ、放送なんかあるんや」
「うん、クラス代表の試合、放送するみたい」
普通のランキング戦は、放送などないが、ハンター同士の試合は、普通に放送されている。
格闘スポーツの一つに分類され、かなりの人気番組である。
何時ものように、試合の場所と順番を確認すると、俺といろはは、一番目、さくらは四番目の試合になっている。
「いろはも、京君も、頑張って」
「任せとき」
さくらの声援を受けながら、
俺といろはは、其々、試合会場へと向かった。
今日の俺の対戦相手は、中嶋さんである。
試合開始のブザーがなると同時に、中嶋さんは、
バックステップで、俺との距離をあけ、マシンガンから弾幕をばら蒔く。
「椎堂君、リボルバー使わせないよ」
中嶋さんはそう言うと、弾幕の密度をあげて、俺がリボルバーのレンジに入れないようにする。
俺もバリヤ前面の密度を濃くして、ダメージを減らしながら、中嶋さんの隙を伺う。
「中嶋さん、えげつないなぁ、少しは、手加減してや」
「何、冗談言ってるの?そんなえげつない武器持っていて」
中嶋さんは、そう言いながら、一定の距離を保ちつつ、弾丸を発射する。
『マスター、このままでは、じり貧です。レンジ外からでも、攻撃するべきです』
イーちゃんが、徐々に増えていくバリヤのダメージを確認しつつ、助言する。
俺も動きながら、イーちゃんの弾丸通過予測を利用しつつ、近づこうとするが、なかなか、弾幕の内側には入れない。
一瞬、弾幕が止んだと思った瞬間、中嶋さんは、更に距離をとり、俺に向かって、炎の魔力を最大限に乗せたグレネードをぶっぱなした。
俺の視界は、真っ赤に光る弾丸予測に染められた。急ぎ、両手を前に出し、バリヤの前面密度を最大にしたが、そのかいもなく、バリヤのダメージは限界を越える。俺はスタン状態になり、そのまま、気を失しなった。
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「イタタタタァ」
俺は、全身に鈍痛を覚えながら、ベッドから体を起こす。フィードバックのバリヤは、破損、欠損を防いでくれるのだが、バリヤの能力を越えて、ダメージを受けると打ち身や骨折なんかには成る。
「京君、大丈夫?」
心配になったのか、さくらが救護センターに顔を出してくれた。
「あぁ、大丈夫や」
俺がそう言うと、さくらは、棚からポーションを取りだし、俺に渡してくれた。
俺は、ポーションを一気に飲むと、今では、全身に響いていた鈍痛が無くなった。
「何回飲んでも、ポーションは不思議やなぁ」
ポーションは、かなりの値段はするが、打ち身や骨折を一瞬で、治してくれる。
「不思議がるのはええけど、ポーションなんか、使うことがないほうがいいよ」
「そら、ごもっともや」
と返信を返す。
「ところで、いろはの試合はどうなったん?」
俺はさくらに聞くと、さくらはモニターを確認しつつ。
「まだ、途中やけど、今回も引き分けかな」
俺もモニターを確認すると、3分を残して、相変わらず、いろはは、対戦相手の攻撃から逃げている。
「あの逃げかたは、芸術やな」
俺がそんな感想を述べていると、終いに時間が過ぎ、いろはの引き分けが決まった。
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俺の治療もおえたので、さくらと一緒に、観戦ルームに向かった。観戦ルームは、多くの先輩や、外からのお客様で一杯だった。
「保護者も観戦できたんや」
「そうみたい。だから、土曜日に開催してるんやね」
先ほどの真相は、多分、これが正解のようだ。
そう言いつつ、空いている席を見つけ、クラスメイトの試合を観戦する。
しばらくすると、いろはも観戦室に現れた。
「いろは、ご苦労さんや」
「ありがとう」
労いの言葉を掛けて、ゆっくりしていると昨日の小柄な女性がこちらに向かったて歩いてきた。
「柊 さくらさんは、貴女か?」
「はい、そうですけど」
「申し訳ない、少し、時間をいだだけるか」
「ええと」
さくらが困ってると
「後ろの痴漢少年たちも、一緒来てくれ」
といって、勝手に個室に向かって歩き出した。
「なんやあれ?」
「昨日の件かな?」
「それやったら、さくらが呼ばれるのおかしないか?」
「そうやなぁ」
俺といろはが不思議がっていると。
「とりあえず、後に着いていきましょう」
とさくらがいうので、
俺たちは、小柄な女性に続いて、個室の中に入っていった。
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個室に入ると、室内には、4名の女性いた。
「席に座ってくれ」
と案内された女性から、席に座るように促される。
「すみません。貴女は、どなた様ですか?」
席に座るなり、さくらが申し訳なさそうに、相手の素性を確認すると
「あっ、申し訳ない。自己紹介がまだだったな。私は生徒会長をしている三井だ」
「で、こちらの背が高いのが副会長の高倉先輩、隣が会計の麻生で、あちらが、書記の紬先輩だ」
と自己紹介してくれた。
「一年の柊さくらです。こちらが鬼灯いろはで、その隣が椎堂京です」
すかさず、さくらが紹介をしてくれる。
「すみません。生徒会長が何の用件でうちらを呼び出したんですか?」
恐る恐る確認しながら、イーちゃんに問い合わせる
『生徒会のメンバーでおおとる?』
『はい、間違いないですぅ』
と応えてくれた。
「今日は、さくらさんに生徒会に入るよう、要請する為、来てもらった」
「えっ、要請ですか?」
「あぁ、生徒会は元々、少人数でパーティを組んでいるんだが、卒業生が出ると、いつも、人数が足りなくなる。そこで、毎年、優秀な一年生に生徒会に参加してもらっている」
「そうなんですか?だけど、私、入る部活きめてるんですけど・・・・」
「こう言ってもなんだが、各々のクラブも、生徒会が誘った生徒は、入会を拒否する決まりになっている。ぶっちゃけ、さくらさんが生徒会に入ることは、強制だ」
この生徒会長しれっと、恐ろしいことを言ってる。
「まっ、実際は、強制された生徒はいないんだが、こう言ってはなんだが、生徒会は、学園一番のパーティでもある。良いハンターになるには、ここより良い環境もないぞ」
確かに、生徒会はここ十年以上、ダンジョンでの稼ぎがナンバーワンである。
「さくら、折角、会長が誘ってくれてるんやから、生徒会にはいったほうがいいと思うでぇ」
「だけど、いろはと一緒に居たいし」
さくらが、本音を溢した。これがなけられば、素直で可愛い女の子なんだが
「さくら、俺、ダンジョン潜らんで」
いろはが爆弾発言をする。
通常、俺たちは、学園に入学する時、多くの装備を渡される。その装備は、入学中にダンジョンに潜って、お金を稼ぎ支払うことが前提に借金として渡されている。
よって、一年生の最後には、払わなければいけない金額が決められており、払えなければ、退学である。
「いろは君、ダンジョンに潜らないで、どうやってお金返すの?」
紬先輩が不思議そうに問いかけた。
「あっ、それは俺ら、企業推薦やから、金稼がんでいいねん」
と俺がいろはの代わりに応える。
これがいろはがダンジョンに潜らないと言った真相である。学園で発生する借金は、企業が肩代わりしてくれるので、俺といろはは、ダンジョンに潜って、お金を稼ぐ必要はない。
「そう言う訳だから、さくらは、生徒会に入ったほうがええちゃうか」
再度、さくらに生徒会に入ることを勧める。
ピヨピヨ、ピヨピヨ
不意にさくらの腕時計がなりだした。
「すみません。試合に行く時間なので、生徒会の件は、試合が終わってから、お応えします」
そう言って、急いで個室から出ていった
俺もいろはと出でいこうとすると、
「君たち、さくらさんの試合、一緒に観戦するのはどうだ」
と誘われたので、そのまま、残って観戦するこてにした。
『ポーションは、不思議アイテムですぅ』