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第二話 学園ランキング戦 その二

第一試合が終わり、少しのインターバルを挟んで、第二試合が始まろうとしていた。


今日の俺の相手は、田中くんで、近接戦闘の高速起動ランスタイプ である。マナの値は300ぐらいやったと思う。


俺のマナは128。


まともに、戦えば、勝てる見込みはない其れほど、マナの差は致命的である。簡単に考えると、マナが倍違えば、戦力は4倍差があると言わている。


試合開始のブザーが鳴り響く。


田中くんが、高速起動に移ろうとした瞬間、俺はイーちゃんのアシストを使いながら、手に持つリボルバーを全弾丸、ぶっぱなした。


「なに~」


虚をつかれた田中くんは、驚きの声を発して、まともに、全弾くらいスタン状態になった。


スタン状態とは、バリヤの能力を越えてダメージを食らうとマナを消費し過ぎて、休眠状態になることをいう。


休眠状態でも、バリヤの能力が無くなる訳ではないが、この状態になると3日以内に適切な処理をしないと死に至る。


逆に言うと、3日以内に処理すれば、死なない。バリヤがチートである所以である。


『マスター、さすがですぅ』


イーちゃんが労いの言葉をかけてくれる。

俺は、田中くんが介護アンドロイドに連れて行かれるのを見ながら会場を後にし、練習場に足を向ける。


なぜ、マナが少ない俺が田中くんに勝てたかと言うと、俺が凄い訳ではなくこのリボルバーが凄いだけである。


通常、ダンジョンに入る前の生徒はお金がないので、入学時に渡される初期装備の中から、自分にあった武器を選ぶ。

しかし、俺はO&Oという、武器販売会社が持つ推薦枠で、ハンター学園に入学した経緯もあり、装備品はその会社の試作品を使う契約になっている。

このリボルバーはその会社が作った試作品の一つで、初期装備の武器より、かなり攻撃力ある。

つまり、武器のスペックで勝ったというのが、今の試合の結果である。


『リボルバーの運用データも着々と貯まってますぅ』


イーちゃんが嬉しそうに言っている。彼女はO&Oがサポートに付けてくれたサーヴァントであり、分析員でもある。


『ほんま、この銃は、癖あるけど、凄いわ』

『早くダンジョンの実戦データも欲しいですぅ』


イーちゃんがそう呟くのを聞きながら、俺は練習場に入った。


練習場を見渡せば、端のほうにいろはの姿が確認できたので、俺はいろはのほうに向かって歩いていく。


「京は、相変わらず凄いなぁ 瞬殺やね」


殆んど時間を掛けずに、試合を終わらせてきた俺をいろはが誉めてくれる。


「俺から言わせて貰えば、30分間逃げ切るいろはのほうが凄いと思うわ」

「そうでもないよ。短い時間、弾丸避けるぐらい、誰でもできるよ」


いろははいつものようにマイペースで応えている。本人は普通に逃げ切ることができているので、凄いことをしている意識がないと思われる。


二人して、先の試合の感想を言っている途中、さくらも合流した。さくらは、先の試合手こずったせいなのか、かなり、ダルそうにしている。


「あら、さくらさん、お疲れの様ですね」


脇からいきなり、クラスメイトの花菱 可憐が声を掛けてきた。


彼女は、さくらと一緒で、今、ランキング戦のトップにいるハンターであり、また、花菱グループの令嬢でもある。


「今日は勝てたようですけど、貴女の悪運も明日までです。汚い罠で取ったトップ、明日、返して頂きますわ」


さくらと花菱さんは、明日の最終戦で戦うことに

なっている。現在、花菱さんの勝敗は29勝1分は、明日勝てば、うちのAクラスでランキング一位になり、Bクラスの代表との優勝戦にでることになる。


因みに、花菱さんの1分は、いろはが逃げ切った分である。偶々、いろはと花菱さんは、ランキング戦の最初の試合で当たり、初戦で対応にもたついた花菱さんを他所に、終始徹底、逃げに徹っしたいろはが引き分けをもぎ取った。


彼女からすれば、前評判が高かった自分に、さくらがいろはに入れ知恵して、逃げに徹しさせたと思っている。


「明日は、お互いベスト尽くしましょう」


さくらが明日の検討を称える言葉を発したが、花菱さんは、其れを無視して、奥のほうに行ってしまう。やはり、1分をかなり気にしてるんだろう。


「さくら、えらい手こずってたなぁ。調整でも、失敗したんか?」

「そう言う、訳ではないよ」


俺が、先ほどの試合の感想を言うと、さくらは、苦々しい顔つきで答えていた。


其れを聞いたいろはが、一瞬、驚きの表情をしたかと思えば、怒りのオーラを纏って、さくらの襟首を掴んで、歩き出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


マナで拘束したさくらを連れながら、いろはは黙々と廊下を歩いて行く。

さくらが、いろはの行動に驚きながら、放すよう抗議して要るが、いろはには、その声は届いてないようである。


「おい、いろは、どこ行くねん?」

と俺も声を掛けたが、完全に届いてない。

しばらくすると、ある部屋にさくらを連れて、入っていった。


「ここ、女子更衣室やんなぁ」

『そうですぅ』


イーちゃんが的確に答えてくれる。

俺は、しばらくの間、その場でストレッチを始め、突入の機会を伺う。


『なにやってんですぅ』

イーちゃんが俺の不振な行動に釘を指す。


其れから、十分後、廊下に女子の悲鳴が響き渡る。

俺は、そのチャンスを逃さない為、素早く更衣室に突入した。





















なかの女子は、全員、制服に着替えていた。

残念である。


更衣室の中を見渡せば、隅にある調整カプセルの前で、いろはが忙しそうにキーを打ち込んでいた。

その周りを怒りを纏った女性陣が囲っている。

悲鳴を聞いても、作業を止めない。流石、いろはである。


『いろは様、何してるんですぅ』

『マニュアルで、調整してるんやろ』

『・・・・・・非常識ですぅ』


そら、イーちゃんも呆れるだろう。

フィードバックの調整は普通、簡単な入力をした後、ボタン一つで済む。マニュアルで調整する奴なんかはいない。


「少年、彼は何をしてるんだ?」

いきなり、セミロングの小柄な女性が聞いてきた。

「フィードバックの調整をマニュアルでしてるんやと思いますわ」

「調整をマニュアルでして、何か意味があるのか?」

女性は、不思議そうに尋ねてきた。

「意味がある無しよりも、フィードバックはブラックボックスやから、マニュアルで調整なんかできる訳有りませんわ。フィードバックの機構は、作成者の無花果博士しか知らないと言われていますしなぁ」

「少年は、博識やな。では、彼は何をしてるんだ?」

「・・・・・・・」

最初の疑問に戻ってしまった。


不意に、いろはの手が止まる。そして、調整カプセルの中から、さくらが出てきた。


「ヨシ、終わったで。ところで、さくら、いつから調整してへんの?」

「前に、いろはに調整してもらってから・・・」

「はぁ~~、さくら、調整は大事やと俺いったよな。前に調整したのって、フィードバック貰った時やろ」

「わ、解ってるよ。あたしも調整しようとしたんやけど、だ、だけど、いろはに調整してもらえへんと違和感があって、う、上手く動かないんやもん」

さくらが慌てながら、拗ねた感じで言っている。

「自動調整したら、動きが鈍くなるんやもん」

調整は、通常、一週間に一回はする。フィードバックは、マナの総量に影響を受けるので、気にする人は毎日するぐらいである。マナの総量は、日々の鍛練で増えていくので、2か月近くほったらかしにしていれば、フィードバックが上手く起動しないのも納得である。

「だからと言って、調整しないのはダメやろ。次からはちゃんと言え。調整ぐらい直ぐにやるから」

「いろは、ありがとう」

さくらが満面な笑みで、応えている。


「ところで、少年、作業は済んだみたいだが、此処が何処だか分かっているか?」

「調整ルームやろ?」

先の女性に声を掛けられて、初めて周りを確認したいろはは、やっと、状況を理解したのか、顔色を青くして

「済みませんでした」

と一言いって、脱兎のごとく部屋から立ち去った。


「いろはでも、慌てることあんねんな」

と呟くと

「で、お前も、いつまでいるつもりだ」

先ほどの女性に怒られつつ、俺も慌てて、更衣室から逃げ出した。


後程、校内放送で、職員室に呼び出された俺といろはは、茜先生の前で、正座しながら、小一時間程、説教を食らった。




『リボルバー、強すぎですぅ』

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