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第十九話 鎮守の杜

鎮守の杜(ちんじゅのもり )

三階層の大部分は森になっていて、目印として三つの大木と一つ泉がある。

階層道は二階層との境目の崖に沿って左回りに北に向かって伸びている。

階層道の中ほどには大きな岩があり、生徒は三階層の大岩と呼んでいた。

その大岩から杜に入って北西に進んだ所に第三大木があり、中堅の生徒の狩場になっていた。


俺は会長と二人で第三大木に向かって、鎮守の杜に入る。

杜は異様な静けさに包まれていた。

「会長、静かすぎへんか?」

「異様だな。少年、入るぞ着いて来い」

「ちょい待ってや」

『イーちゃん、ウイちゃんとキヨちゃんに連絡して、グループトークできるか』

『いけますぅ』

『東雲さん、会長聞こえとる?』

『ん、聞こえるわ』

『こっちも大丈夫だ』

『そしたら、今からこのグループトークで喋るんでよろしくや』

こうして、連絡を唄姫の能力で使うことにして、杜の中に進む。

『東雲さん、外部から見て、おかしい所ないか?』

『特には』

『会長、第三大木まで、どれくらいや』

『15分ぐらいかな』

『前方、200メートル、バウンドドック、数多数なの』

『流石やな。ウイちゃん、回避できそうか?』

『無理なの。バウンドドックの鼻はするどいの』

『会長どないする』

俺は会長の顔を覗き見る。会長は俺の顔を見て、目が光る。

『ウイ、包囲の薄いところに誘導、少年は私の後について来い』

『承知、後方警戒はまかしとき』

会長は猛スピードで駆けていく。俺はその後を遅れないようについて行く。

『左前、5メートル。数3なの』

会長はマシンガンを腰ダメにして、走りながら掃射。

ダダダダダダ、マシンガンから発射された弾丸は一番近いバウンドドックの額に吸い込まれていき、煙となって消えた。

会長は続けざまに隣のバウンドドックを攻撃する。

一匹のバウンドドックが右手から会長に襲いかかろうとしていたので、俺は左手で逆さまに持ったショートソードを下から首筋に向かって切り上げる。

一撃でバウンドドックは煙とかした。

『バウンドドックは普通の強さやな』

『そうだな。特別強いわけではないな。少年進むぞ』

会長は杜を縫うように進んでいく。

『前方、左側、後方に敵多数なの』

『囲まれてるなぁ』

『私たちの動きが読まれてる?』

『そらそうやろ。俺らより探知範囲広いと思うで。ウイちゃん、観測砲撃、東雲さんに指示して。あたらんでええ、牽制だけでも入れて』

『まて、東雲、観測砲撃は可能なのか?』

『やったことはないから何とも言えないのですができると思います。しかし、ここからは遠すぎます』

『届かないか。でも、切り札になるな。東雲、指示あるまで発砲禁止、少年、ここは私たちで突破する』

会長、さすが先が見えているやな。確かに、こいつらに指示している魔物がいる。

見えない遠距離攻撃は有効な手段だから、ここで使うべきではない。

『前方、左2、右3なの』

『少年、左任せた』

会長は左に向けて、マシンガンを連射する。

俺は会長の左を抜けて、向かってくるバウンドドックに左手のショートソードで切りかかる

バウンドドックにダメージを入れたが右から別のバウンドドックが襲ってきた。

身をかがんで攻撃を避けながら、掌で腹を打つ。

バウンドドックはすっ飛んでいき、ドスっと音がして木にぶつかり、地面に落ちる。

すかさず、転んだバウンドドックに近寄り足を蹴り上げ、頭蓋を破壊する。

周りを確認すると最初の一撃を入れたバウンドドックは逃げたようだ。

会長を襲ったバウンドドックは見事全部倒されていた。

『完全に囲まれたな』

『ウイちゃん、正確な数わかるか?』

『半径200メートルで57匹、ん、マスター左前方に救助者反応ありなの』

『少年、救助者に向かって、突っ込む』

会長は弾丸を発射しながら、バウンドドックの囲みに突っ込む。

俺は会長の背中を追うようにして、後をついて走る。

会長の左右からバウンドドックが襲う。

会長はしゃがみながら、左に前転し、マシンガンの引き金を引く。

マシンガンから発射された弾丸はバウンドドックの真ん中に命中して、消滅する。

右から襲ってきたバウンドドックは俺がショートソードで切りかかり、消滅させた。

『『前方三方向から魔力反応、ファイヤブレス来ますぅ(なの)』』

『会長しゃがんで』

会長は俺の指示通り、その場でしゃがむ。

俺は会長に覆いかぶさって、右手から黒い霧を出す。

三方向から迫る炎の壁は黒い霧に阻まれ、寄ってこない。

炎の壁が治まった瞬間、会長が右手に向かってマシンガンを掃射、続いて正面。

俺は左手にリボルバーの弾丸を撃ち込む。

『ヘルウルフ、三匹撃破なの』

10メートル先に三人の倒れた生徒の姿が見えた。

『会長、援護頼む』

俺は倒れてる人に向かって走る。左からバウンドドックが襲ってくるが、

バン、音がした瞬間、煙になる。

右にいたバウンドドックはすれ違う瞬間、右回転に回り、左手のショートソードで葬る。

そのままスピードを維持して、生徒に近づく。

『ひとり目』

俺は右手から黒い霧を出して、倒れてる生徒を包む。

黒い霧に包まれた生徒は姿が消えた。

『少年、何をした』

『説明は後や』

そう言って、続けざまに二人目と三人目も霧に包む。

『ウイちゃん、他の生徒は?』

『椎堂様、左手奥、大樹の根元なの』

ウイちゃんの指示に従いそちらを見る。

目を向けた瞬間、背中に悪寒が走った。

そこには確かに倒れている生徒がいた。しかし、その背中を押さえるように大きな狼がこちらを睨んでいた。

その狼の大きさは3メートルを超え、毛色はくすんだ銀、その口はひと噛みで人間を葬れる大きさだった。

『会長、撤退や』

会長も狼を見た瞬間、逆方向に走り出す。

俺はベルトに指してあったグレネードを二つ地面に落として、会長の後を追う。

バーーーーーーン、大音響が背中で響き、続いて、ボンと音がして煙が広がる。

『少年、先行しろ』

俺は会長を追い抜き、先に進む。会長は背中について来つつ、後ろに向かって、弾丸をばら撒く。

『ウイ、少年の先導』

『はいなの』

ウイちゃんの先導に従い全速力でその場を離れる。

ハイスピードで迫る木々をウイちゃんの指示で避けながら杜を進む。

ダダッ、時々、会長がマシンガンを放ち、前方にいたバウンドドックを倒す。

不意に視界が広がる。階層道に出たみたいだ。

『少年、油断をするな全速力でダンジョンを撤退する』

『承知や』

階層道を全速力で上層に向かって進む。

『東雲、さくらと共に撤退準備に入れ、合流後、全速で撤退する』

『承知しました』

不意に左からバウンドドックを一回り大きくした犬が襲ってきた。

俺は諸に体当たりをくらい地面に転ぶ。

「少年」

会長が叫び声を挙げると同時に犬を一刀両断にした。

「大丈夫や」

そう言って、立ち上がって階層道を走る。

階層の境目を通り、二階層に着くと、さくらと東雲さんが待っていた。

俺と会長は止らずに

「二人とも撤収」

と叫んで出口に向かって進む。空は夕焼けになっていた。



『強行偵察ですぅ』

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