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第十八話 帰り道

帰りは防衛隊の人に八階層の麓まで送って貰った。

その後は予定通り、八階層を抜けて一階層まで戻る。

『イーちゃんどないする?この前みたいに此処で狩りしよか?』

『マスターのレベルアップを考えたら違う階層がいいですぅ』

『そうやろな』

この前の感じからするとこの階層で暴れてもレベルに合っていないので、早急なレベルアップにはならないだろう。

『どの階層がええと思う?』

『マスターのスタイルが対人向きなので、一階層以外では余り効率が良くないですぅ。それに移動に時間を使うと狩りをする時間が減りますぅ』

『だけど、一階層のここらへん。狩り尽くしたよな』

『はいですぅ。周辺に敵はいないですぅ』

『そしたら、この前と違う方向に行って狩りしよか』

そうして、違う階層に行くのを諦めて、また、一階層の魔物の集落を探すことにした。


前回と同じく集落を見つけては潰しつつ。三個程、集落を潰して、帰路に付くと階層道を走るボロボロの男子生徒がいた。俺は急ぎボロボロの生徒に駆け寄る。

「どないしたんや」

「たっ、助かった。三階層で魔物の異常発生が起きて、みんなが殺られて」

そう言うと、男子生徒はその場で倒れ込んだ。

俺はポーションを飲ませ、男子生徒が落ち着くのを待つ。

『イーちゃん、三階層で生徒を殺れる魔物っておるん?』

『いいえいないですぅ。余程の不運が重ならない限り、バリヤの防御を破れないですぅ』

『そうだよな』

男子生徒はポーションが効いたのか。気を取り戻しいきなり、俺の襟元を捕まえた。

「い、急いでくれ、みんなが殺られているんだ」

「落ち着きや。悪いが状況がみえん。異常発生ってなんやねん」

「バウンドドックが200匹以上で生徒を襲ってる。メンバーが四人殺られた後、お、俺は倒すのが無理だと判断して、無理矢理包囲網を突破して逃げてきたんだ。の、残りのメンバー三人は俺を逃がす為に………。は、早くみんなを、みんなを」

「バウンドドックって200匹で行動したっけ?」

『しないですぅ。精々、9匹ぐらいですぅ』

「しないから異常発生なんだ」

「ええっと、襲われた場所わかるん?」

「三階層の鎮守の杜、第3大樹の側だ」

「わかったわ。俺は会長捕まえるさかい。あんたはこのまま学園に戻って、先生に連絡してや」

「あ、ああ。わかった」

そうして、男子生徒はダンジョンの出口に向かって走りだした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『イーちゃん、どないしよ』

『まず、三井様に連絡を取るべきですぅ』

『そらそうやけど、方法がないやん』

『取れるですぅ』

『はぁい?』

『唄姫同士なら、ダンジョン内で連絡取れるですぅ』

『まじ、どんな原理やねん。電波届かんやろ』

『テレパシー?ですぅ』

『なんでやねん』

思わず突っ込んでしまった。詳しいことはわからないけど、連絡出来るのは事実らしい。

『イーちゃん、そしたらお願い。会長に繋いで』

『会長、聞こえっか。椎堂ですわ』

『え、どこから。少年か』

『会長驚かしてすんません。唄姫の機能使って連絡してるんやけど、緊急事態で三階層で生徒が襲われてスタンしているみたいや』

『ああ、こちらにも連絡が入っている。状況確認の為に三階層に向かっているところだ』

『そら都合がええ。どこかで落ち合いましょ』

『三階層の階層道中頃に大岩があるそこで』

『オーケー』

そうして、急ぎ階層道を三階層に向けて走る。

階層道を進んでいると遠くで生徒の姿が見える。

『ハローハロー、会長、途中に会った生徒に学園に戻るよういったほうがええか?』

『第一緊急事態発生と連絡して、至急、学園に戻るように言ってくれ』

『承知や』

会長との短い打ち合わせを実施して、階層道を進み。

すれ違う生徒には学園に戻るよう言いながら猛スピードで階層を下る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ハッハッ、ハッハッ。か、会長待たせてもたか」

額から大量の汗を垂らしながら、待ち合わせの場所の大岩に倒れこむ。

「いや、我々も今、着いたところだ」

「京ちゃん、走るの早すぎだよ」

麻生先輩から水を受け取り、俺は息整えてから今までの経緯を説明する。

「こちらの情報より、精度が高いな。場所が解ったがどうする?」

「望、ここは私たちも一度、学園に戻ってから体制を整えて救出に向かうべきよ」

「それが妥当だな」

会長と柚先輩が学園に戻る案を上げる。

「すまん。会長、いやな予感がする。俺だけでも偵察に行ったらあかんか?」

「ダメだ。明確な情報ではなく、いやな予感で動くのは反対だ」

「憶測やけど、多分、深階層、いや、十階層級の魔物が発生している恐れが高いんや」

「三階層の階層主はシルバーベアだったな。シルバーベアがバウンドドックを指揮するのか?」

「多分、違うと思う。さすがに犬系かウルフ系やろ」

「京、それは階層主以外の十階層級の魔物がいるということか?」

「ほぼ、間違いなく」

俺は高倉先輩の言葉を肯定する。

「根拠は」

「命令に従っている数が異様や。流石に200以上は多すぎる。三階層級の変異でも100でええはずや」

「それはそうね」

「少年、それなら尚更体制を整えるべきだ」

会長は学園に戻ることを主張する。

「討伐ならなそうやけど、俺は偵察といったんや。情報収集を疎かにしたら、討伐もできん」

「椎堂君の意見も組むべきかと、何回も討伐をする余裕はないと思います」

「会長、私も京君の意見に賛成です。救出隊を組むにしても情報収集後が良いと思います」

さくらと東雲さんが援護に回ってくれた。

「解った偵察を実施しよう。しかし、時間は日暮れの時間もある。これから90分間のみ」

会長はメンバーの顔を1人づつ見ながら話す。

「柚先輩と高倉先輩、それに麻生は学園に戻って、先生と協力して、生徒の確認と救助隊の準備、柚先輩、取りまとめをお願いする。防衛隊への依頼は私の権限を使ってくれ」

「柊と東雲は二階層の階層道出口で戻ってくる学生の案内と連絡要員、東雲は二階層から遠隔監視、柊はその護衛も兼ねること」

「少年は私と現地偵察」

「「「「「はい」」」」」

会長の支持に従いそれぞれが動きだす。

後にこれが学園歴史史上初めての大規模討伐《狼の杜》のはじまりであった。



『事件発生ですぅ』

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