第十五話 勧誘
会長とのミーティングも終わり、いろはは寮に俺と会長は残りのメンバーと合流した。
ドームでは、さくらと高倉先輩が模擬戦をしていた。
見た目はさくらが押しているように感じたが、高倉先輩は大きな盾でさくらの攻撃を全て防いでる。
さくらはスピードを使ってダメージを通そうとするが、高倉先輩の間合いの潰し方にいい感じでスピードを殺されて、クリーンヒットの攻撃を出せずにいる。
「高倉先輩凄いんやな。さくらの攻撃とおってへん」
「そうね。雅は学園トップのガードだから、攻撃を通すのは難しいわ」
「さすが、ガードやな。それに、カウンターもええ感じやし」
「雅だからよ。私や礼では、さくらちゃんの相手にもならないわ」
「麻生先輩は解るけど、柚先輩も無理なん?」
「模擬戦では、ダメね。弾幕を張ってもスピードで寄られるもの。京君、私と模擬戦する?」
「止めときます。俺とじゃ練習にもならんで、瞬殺されるだけやな。マナ128やし」
「えっ!低すぎ。京ちゃん、それは瞬殺されるよ」
麻生先輩が目をむいてる。
「あれ?京君、ランキング戦順位13位じゃなかった?」
「あれはこいつのおかけやな」
そう言って、リボルバーを見せる。
「たんなるリボルバーだよね???」
麻生先輩と紬先輩が見つめあって、不思議かってる。
「これ会社の試作品でマナを溜めれるねん。だから、一発の破壊力が5倍やねん。ただし、一日六発しか打てんけどな」
「ピーキーやね。京ちゃん」
「だけど、ダンジョンじゃ役に立たなくない?」
「使いどころは選ぶかな。基本は戦わず逃げるし」
「えー、それじゃ卒業できないよ」
「俺といろはは企業推薦やから、金払わんで卒業できるねん」
「あーズルい」
「その代わり、就職先の自由はないけどな」
「それはイヤかも」
麻生先輩はしぶい顔をしている。
ハンター学園の卒業生は大きく分けて4つの就職先があるひとつは防衛隊、これは基本的にはハンター学園在籍中に優秀な成績を修めた者が推薦され、毎年20名ぐらい選ばれる。次にフリーのハンター。世界中のダンジョンに潜り、お金を稼ぐハンターで防衛隊のように規律に縛られることもない。しかし、フリーのハンターは毎年、五千万の登録料を納める必要があるので、楽な仕事ではない。大概の者はこの二つになる。後はスポーツハンターと企業ハンター。スポーツハンターはテレビに中継されるハンター同士の戦いを専門にする人で、企業ハンターはスポンサーの元でハンターをする人である。
企業ハンターはサラリーマンと変わらないので、人気のない就職先ではある。
「麻生先輩、今週の金曜日も町に行くけど、いるもん有ったらゆうてや」
「また、行けるの?羨まし~い。リスト作っておくね」
「ああ、早めにゆうてくれたら、準備できるからな。そう言えば、通販で取り寄せできへんのか?」
「通販は無理ね。お金が無いから」
「ちょい待て、買ってくるのはええけど。払いどうなるん?」
「男気だよ。当たり前だよ」
「当たり前ちゃうがな。なんでプレゼントせなあかんねん」
「私達は学園内の電子マネーしか持ってないから、外で買う方法がないのよね」
「学園生はかなりの金額をダンジョンで稼ぐから、無制限に外から物が取り寄せられると酷い状態になるからな」
「あかんがな。だから、プリンであんな状態になるんか」
「甘味もだけど、シャンプーとか、リンス、スキンヘヤが壊滅なのよ。後、オシャレ関係は酷いわね」
「そこら辺は、皆の好みが違うからな。購買では、安価なやつしかないしな」
そんな話をしている間に、さくら達の模擬戦が終了したみたいだ。
「さくら、ごくろうさん」
近くに置いてあったスポーツドリンクを投げてわたした。
「京君、ありがとう」
さくらは、受けとって、一気に飲み干す。
「そしたら、訓練はじめよか」
そう言って、俺は訓練場の縁を走る。
「京ちゃん、走ってばっかりやね」
「礼ちゃんも付き合って走ったら?」
「えー、イヤだよ。それに京ちゃん速すぎだし」
「京君、対人戦強すぎるから走るぐらいしかできないし」
一息ついたさくらは走ってる俺を見ながら呟く。
「少年が強い?マナが128しかないから、自分は弱いといってたぞ」
「えっ、本当?そんなはずないけどな」
「麻生、柚先輩、模擬戦できるか?」
「いいよ」
会長たちが模擬戦を始めた。
そんな感じでいつものように午後の訓練を過ごした。
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次の日のお昼休み、昨日同様さくらに断りをいれて教室をでる。
『イーちゃん東雲さんの居場所わかるか』
『中庭の近くですぅ。案内しますぅ』
イーちゃんの案内に従って進むと中庭で一人で昼食をとっている女生徒がいた。
今日はいい天気で空が晴れていた。外の気温も段々夏に向かって暑くなってきてるが今日は丁度いい気温である。
俺は真っ正面から彼女に近づくと、彼女も気付き少し驚き顔をした後、表情を消した。
「ええっと、東雲さんやな」
「はい、そうですが、どちら様ですか?」
彼女は警戒心ありありで返事をする。
「生徒会の椎堂なんやけど、ずばり東雲さん生徒会に入らへん」
「あら、いきなりですね」
こちらを睨み付けて、
「お断りします」
そう言った。
「けんもほろろやな。生徒会に入っらいろはの監視しやすいやろ」
「なんの話かしら?」
「すっとぼけてもしゃあないで、キヨから聞いたし」
「……………………………」
「美里さんの人選ミスやな。唄姫を監視役に付けたらばれるわ」
「……………………………」
「てゆうか。いろはに監視が着くのは想定内やし、東雲さんデゴイやろ。だから、生徒会に入らんか?」
「何を言ってるのか解らないわ」
こんな解りやすい監視役を美里さんが付ける訳がないので、彼女が囮役なのは間違いない。美里さんなら監視役を複数準備するはずである。
「そうか。だけど、悪いけど強制的に生徒会にはいってもらわなあかん。唄姫は見過ごせん。キヨやしな」
「あら、生徒会にそんな権限あったのかしら?」
「あるで、だけど、生徒会じゃなく俺が東雲さんを排除するげどな。美里さんにいろはに付く害虫は駆除するでって伝えてや」
俺は殺気をぶつけて、中庭を後にした。
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夜、女子寮の一室、ルームメートがお風呂に行ったのを確認した後、キヨを呼び出した。
『キヨ、司令に繋いで』
『承知しました』
暫くして、音声通信が繋がる。
「東雲三尉、直接通信とは何かありましたか?」
「司令、済みません。任務失敗です。監視対象に気付かれました」
「そんなこと。別に気付かれても問題ないわ。引き続き監視を続けなさい」
「構わないのですか?」
「ええ、気付かれることは想定内ですよ。いろはが言ってきたの?それとも、京君?」
「椎堂君です。いろはに付く害虫は駆除するでと司令に伝えるよう言ってました」
「そう。学園内で貴方を排除出来るのは彼だけだから気を付けなさい」
「彼、弱いですよ。負けるとは思いませんが」
「強さじゃないわ。彼とは敵対しないようにしなさい」
「承知しました。後、彼から生徒会のメンバーになるよう言われました」
「バレたなら、入るしかないわね。入りなさい。監視はそのまま、定期的にいろはの様子を連絡しなさい」
「承知しました」
通信を遮断する。
『キヨ、椎堂君って何者?』
『司令が警戒するほどの人ではないと思います。直接戦えば、必ず梓が勝ちますね』
『そうよね。司令の考えが解らないけど、命令だからしょうがないわ』
そうしてため息を付きつつ、明日、椎堂君にどう話すか頭を抱えるのであった。
『キヨは優等生ですぅ』
『イーが天然なのよ』