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第十二話 ごまかしかた

その日の夜は、死んだように眠った。

自分自身は意識してないが、初めてのダンジョンでかなり疲れていたのだろう。

そして、次の日は授業、訓練、生徒会とこなし、早めに夕食を済ませて、地下の部屋にいろはと共に降りる。


「京、ダンジョンはどうやった?」

「芳しくないな、八階層の外縁部は問題ないが十階層はてんではなしにならんわ。普通に死にかけたわ」

「あちゃー。見透しが甘すぎたか」

「それもあるけど、半分は俺の実力やな」

そう反省する。実際、シルバーベアからは逃げ切れず、姉貴に助けてもらわなければ、確実に死んでいた。

「十階層の虫系統は、電波を感知したですぅ」

3Dになって、姿を現したイーちゃんが付け加える。

「あら、それは大変でしたね」

不意に、部屋に等身大の3D映像が写し出される。

年の頃は、26才頃、顔はかなり整ったべっぴんさんでしかも、愛嬌がある顔立ち。十人いれば、十人とも好きになるような、そして、何処と無くイーちゃんに似ている女性が労いを掛けてくれる。

今日はスーツ姿か、似合ってる。

「出雲、お久しぶりやな」

「あら、京様と話すのは久しぶりでしてか?あらあら」

「いろはとは、毎日話してたんやろ。俺はダンジョン潜る準備で慌ただしかったからな」

「そう言えば、ここ十日ほど、お声はかけてませんでしたね。イー、ダンジョンのことも含めてデータ貰える」

「ハイですぅ。お母様」

「……………………………………………お母様?」

出雲の顔が曇る。イーちゃん無意識に地雷踏んだ。

「イー、お姉様の間違いよね。私は子供も作った覚えはないわ」

3D映像なのに、頭グリグリしている。どうして、出来るかはなぞやな。

「は、ハイですぅ。お姉様」

イーちゃんが涙目になって言い直した。出雲凄すぎ。

「階層が下になれば、魔素が濃くなり、魔物の強さも強くなってますね」

データを受け取った出雲が瞬時に分析をする。

「出雲、今さら当たり前なことを言ってどうする。それは、ダンジョンの常識だ」

「いろは様、常識ですが私も初めて唄姫からデータを貰ったんですよ。伝聞と実直データの差は大きいんですよ」

「出雲でも、知らんこと有るんかいな」

「逆ですわ。知りすぎて真実が見えないんですよ。私の中には確かなマイノリティデータもありますから」

「そんなもんか。いろは、話戻そか。実際、今の俺には十階層外縁すら自由に歩かれへん。これは、今回の一番の成果や」

「残念な結果だけどな」

「ですが、データを見る限り、蘭様は出来てますね」

「ああ、間違いなく出来とる」

「それは、朗報だな」

「蘭様にコツを聞いたのですぅ」

「あら、何て言ってました?」

出雲が期待に目を輝かせる。

「経験ですぅ」

「……………真っ当な回答やけど、蘭ねぇだから出来てる事が正解かもしれないな」

「ああ、それが正解や」

「私もそう思うわ」

「蘭様が特別ですぅ」


「予測の範囲内やけど、どうする?」

「京様の強化が一番早道かと」

「それは正道だが、決め手にかけるな。見透しが甘すぎる」

「そうなや、俺が在学中に十階層を自由に歩けるようになる保証がない」

「しかも、それではダメだ。多分、《つばさ》のそばには、ダンジョン主がいる」

「いろは様、そうとは限りませんよ。確率が高かろうとも、それは可能性の一つでしかありません」

「いや、俺の感が言ってる。間違いなくヤツの寝床に《つばさ》はいる」

いろはには、何か感じるものがあるのだろう。

「第一候補として、そこをまず、捜索するのはええけど、ダンジョン主は確実に十階層の中心部、しかも、魔素が一番濃いところやろ。探索するのも命がけやな」

「魔素の測定データが増えれば、ダンジョン主の寝床が解ります」

「出雲、簡単にゆうけど、現状それが難しいんや。手がたりんし。他にも唄姫がいたら話は別やけど」

「いるですぅ」

「「「…………………………………」」」

イーちゃんにみんなの目が集まる。


「イー、そんな報告受けてませんよ」

「ん? 連絡するよう言われてないですぅ」

「……………イーちゃんもしかして、今まで、唄姫の存在を感知しても連絡してなかったんか」

「ハイですぅ」

「はいですやない!何故そんな危険なこと連絡せんのや」

「妹は危険ではないですぅ?攻撃されれば、妹でも通知しますぅ」

意味が解っとらんな。

「京、とりあえずその事は置いておこう。唄姫は誰の元にいるんだ」

「学園内にイー含め、四人いるですぅ。チーがさくら様」

「チーちゃんがさくらの元にいるのは知っとる」

「次、ウイのマスターは三井様ですぅ」

「会長か!だからあの強さか」

「後、キヨのマスターは東雲様ですぅ」

「「誰?」」

俺といろはの声が重なる。

「Bクラスの東雲梓、データではこの子みたいですね」

出雲がすかさづ、写真を見せる。

見た目は綺麗系のやけど、目立つ感じがしない。

「Bクラスなら知らんのもしゃないか?ランキング戦の順位は?」

「七位ね」

「低いか?覚醒してない?」

「それはないですぅ。覚醒前の妹とは話せないですぅ」

「出雲、ランキング戦の映像見せてや」

出雲は葵君と東雲さんの試合の映像を流す。

試合は、序盤は東雲さんの短刀が葵君のバリヤに少しずつダメージを与えていたが、後半、動きに慣れた葵君の大剣がクリーンヒット、それが決め手で葵君が勝っていた。

「東雲さん、わざと負けてるな」

「ああ、多分、姉貴の手解き受けとる。防衛隊の関係者やな」

「他の試合も分析しましたが、わざと負けた形跡が高いですね。マナ測定も操作した跡があります」

「間違いなく、俺の監視役だな。経歴は?」

「中学時代のデータはありますね。………在校生時代の学園内の映像に姿が写ってないですね。黒ですね」

出雲が経歴が嘘であると確定する。

「そう言えば、キヨちゃんは美里さんに渡したな、防衛隊のデータは?」

「ざっと見、ないですね」

「とゆうことは、防衛隊のグリーンで間違いないな。出雲か、イーちゃん、キヨちゃん呼べる?」

「可能ですがこちらの情報が渡りますよ」

「構わない。元々、美里さんにはある程度、こちらの動きはバレている」

出雲は目をつむり考える動作をする。

「キヨ、応答しなさい」

不意に空間に三頭身のマスコットのような3D映像が浮かぶ。姿はイーちゃんの天然系ではなく、優等生な感じである。

「出雲お母様、いろは様、お久しぶりです」

「…………」

出雲の顔が曇り、先ほどの再現がくり返される。

唄姫たち、地雷踏んで、出雲は怒らしたらあかんがな。

「グスン、わ、解りました。おか…、お姉様」

「キヨちゃん、お久しぶり。」

「お久しぶりです。いろは様」

「キヨちゃんか。初めまして、イーちゃんのマスター、椎堂京や」

「初めまして、椎堂様、イー姉様がお世話になってます」

「おおきに。ところで、東雲さんの情報くれる?」

「無理ですよ」

普通に笑って答られた。

「京、流石に無断で情報をリークするサーバントは使えないだろう。キヨちゃん、今日話すことは、東雲さんには内緒にして貰えるか?」

「できる限りは約束します。ですが、マスター権限を使われたら、話さない訳にはいけません」

「ああ、それでいい。まず、東雲さんの目的は俺の監視か?」

「ノーコメントです」

「所属は防衛隊か?」

「………ノーコメントです」

「期間は三年間?」

「………………ノーコメントです」

「ありがとう」

いろはが笑う。キヨちゃん駆け引きダメダメやな。

「ところで、東雲さんって、蘭ねぇとおうたことあるん?」

「えっ、椎堂様は椎堂蘭様のご親戚ですか?」

「ああ、蘭ねぇは俺の姉貴やで」

「あっ、………ノーコメントです」

ごまかしかたが下手過ぎる。



『キヨ、イーちゃんルームにようこそです。二人目のお客さまですぅ』

『イー姉様、お招き有り難うございます。ところで、二人目とおっしゃいましたが、一人目の方はどちらです?』

『一人目は、チーですぅ。寝てますぅ(笑)』

『………………………………………えっ』

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