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第二話 「彼」と闇内

その日闇内は一人で家路についた。元々他人と関わることがあまり好きじゃない彼だったがそれでも友人と呼べる人間は何人かはいた。しかしこう一人で帰る日は今までにも度々あった。それは“裁き”の報道があった日、しかもある限られた手口での“裁き”が報道された日である。彼は一人で帰る日は寄り道もなにもせず真っ直ぐ家に帰った。そして何か考えているのか誰かに呼ばれても気付かないことが多かった。






一人であることと彼の家が学校に近いこともあって彼が一人で帰る日はすぐ家についた。彼は自分の鞄から鍵を出して家の鍵をあけた。彼の家は典型的なアパートである。彼はそんなありふれた自分の家に入って小さく「ただいま」と呟いてみたが返事はない。当然だ、彼の家には彼以外誰もいないのだから。家に誰も居ないのはほかの家族が買い物に言っていたからでも旅行に行っていたからでもない。彼の家には本当に一人しか住んでいない。闇内 疾風、彼一人しか。


彼は冷蔵庫を開け中に入っていた残り少ないペットボトルに入っていたジュースを飲み干した。そして台所にあるキッチンマットをめくった。そこにはどの家にもあるような床下収納があった。彼はその蓋を開けた。そこには床下収納などなかった。そこにあったのはとてもその家にはあるとは思えない、いやどの家にもあるとは思えない機械があった。そこには液晶画面がついていて機械的に「暗証番号を入力して下さい」と表示されていた。それを見て彼は慣れた手付きで8桁の番号を入力すると機械とは思えないように静かに開いた。そこには梯子がついていた。彼はそこに足をかけると床下収納に見せかけている蓋を閉め部屋は何事もなかったかのようにして下っていった。その先にはエレベーターがあって彼はそれに乗り換え今までとは比べものにならない速さで潜っていった。




彼が潜っていくと最下層まで着いてエレベーターは止まった。そして目の前に見えるドアの前に立つと機械が作動し、指紋認証や瞳孔認証やとにかく警戒心が高かった。             十数回に及ぶ検査の結果、彼の目の前の扉は開いた。そこにはありふれた日本の町の地下とは思えないような膨大な広さを持つ施設が広がっていた。彼は慣れたようにそこに入りある場所を目指して足を進めた。しかしその彼に話しかけてくる人がいた。

「よう疾風 見たぜテレビで おまえはもう少し派手に殺れよ」

そう彼に話しかけてきた。その人は彼より年上、17歳の彼から見れば十分オッサンといえる年だった。彼は面倒くさ言い返した。

「派手にやる意味なんて無いじゃないですか ただ殺せばいいんですから」

そういうとその人は何か言いたそうにしたが彼は相手に話す隙を与えず付け加えた。

「じゃあ失礼します あの人に用があるんで」

それを聞くとその人は話すのを止め、おう行ってこい、と言ってどこかへ行ってしまった。彼は気にせず足を進めた。

数分歩いたところに他の部屋と比べ一段と大きい部屋があった。そこには『首領部屋』と書いてあった。彼は少し緊張した面もちで「失礼します」と言った。すると中から「入れ」と低い声で返ってきた。彼はもう一度、失礼します、と言って扉を開け部屋に入った。そこには彼の方を向かず何かを見ている男がいた。大柄すぎる体型でもなければ華奢な体型でもない男が。男は「何だ」と彼に言った。彼はそれを聞いて少し機械的に答えた。

「報告します 今日未明10年前強盗致死容疑で手配されていた白石 三木男を粛正しました」

そう言った。男はそれを聞くと少し頭をあげて言った。

「ああ おまえの針技にはいつも驚かされるな」

それを聞いた彼は「恐縮です」と少し頭を下げた。

そこにいたのは確かに闇内 疾風だった。しかし男の話に出ていたのは夜深い時間にいた「彼」だった。しかし闇内はそれを否定しなかった。ただ平然といつものように。なぜなら真実だからだ。彼は、闇内 疾風は、「彼」だから、だ。

そんな話は関係無しに二人の話は進む。

男はさらに彼に言った。

「では次の仕事だ 詳しいことはいつもの所に入れておいたから見ておけ 以上だ」

それを聞くと彼は「失礼しました」と言いその部屋に背を向け男が言った「いつもの所」に向かっていった。


彼はそこに着いた。そこには膨大な量の郵便ポストのような物があった。彼は慣れた手付きで自分の名前が書いてあるそれの中から一つの大きめの封筒を手にとった。そこには彼が次に“裁き”を行う相手についての情報が丹念に調べられていた。そいつの名前から行き着けの定食屋までとにかく基本的なことは洗いざらい調べられていた。彼は仕事の度にいつも見てきたから一通り目を通したらさらに細かいことを調べに行くつもりだったのだが彼は資料の中のある一枚の紙に目が止まった。なぜならその紙は今までの資料にはなかった物があったからである。それを見て彼は呟いた。

「家族が…いる」

なぜなら犯罪を犯したらできるだけ地味に過ごしていった方が警察に見つからないからである。故に結婚なんて目立つことをした相手を持つのは初めてだったのである。彼は少し立ち止まって考えたが足を進めその施設から出た。そして次の仕事について調査しに行った。

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