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プロローグ 「彼」
「もう…止めないか こんな無駄な鬼ごっこは」
「彼」は眼の前の男に冷徹な眼を向けながら言った。
「お…お前は…誰なんだ!?何故俺を…追いかけてくる!?」
「彼」はその質問には答えず、一歩、また一歩と距離を詰めていった。
「な…何だ?何が目的だ?金か?それ以外の物か?何でもやるから……」
そう言った男に向かって「彼」は足を止めて男に向けて言い放った。
「何でもやる…か お前が殺した人達がそう言ったときお前はどうした」
そう言うと再び足を動かし男との距離を詰め始めた。
「なっ…何で…それ知っ……ああぁぁ!!誰か助け……!!」
「彼」は何かを確かめたのかそれを聞いた瞬間足の早さを一気に早めた。
「あ…ああぁぁぁ!!!来るな!来るな!!来………」
男の口には「彼」の手の中に隠し持たれていた布が当てられた。そして含まれていた薬品によって男は気を失った。それを確かめると彼は着ている服の上着の内側に付けられていた細く普通の物より随分長い針を手に取った。そして「さよなら」と小さく呟くと「彼」は男の後ろの首筋にその針を突き刺した。男の顔から一気に生気が無くなった。