まさかの!?
「…様!始祖様!」
タジールさんの焦ったような声で現実に引き戻される。
いまだに朦朧とした意識の中で周りを見渡すと
シア婆→日記をめくってなんだか嬉しそう?
タジールさん→私を抱きかかえたままホッとした顔
精霊王's→発行体のまま私の周りをふよふよ
という、なんとも統一感のない状況が出来上がっていた。うん、こっちの世界の人ってそうだよね。もう慣れたさ…
ってか!
タジールさんに抱きかかえられてるのはまずい!
いや、子供体型だからまぁ恥ずかしさはあまりないとしても、頭上からの冷え冷えとしたオーラに気づかない程私は鈍くないんですよ?はい。
「クゥ、ちょっと抑えようか?タジールさん、ご迷惑をかけたみたいですみません」
そそくさと立ち上がって、タジールさんに頭を下げつつ、頭上のクゥを撫でる。
僕のママに触った…とかブレスで焦がす…とか物騒な言葉が聞こえてきたので、一発バシッと制裁済みだ。
クゥの威圧?に若干顔を青くしたタジールさんには申し訳ないが、私にはそんなことよりも気になる光景があった。
(シア婆…日記読んでるよね?だって笑ってるもんね?てか、あれ日本語なんだけど!?)
シア婆が日記に夢中なのである。
「あのー、タジールさん?」
「…はい」
「ハイエルフの人って自動翻訳機能とかそなわってませんよね?」
「自動翻訳機能…というのが何かはわかりませんが…先程チラッと見た限りでは私には全く読めない言語でした。これでも大陸全ての民族言語や古代言語まで読めると自負していたのですが…」
しょんぼりしてしまったタジールさんを一時放置して、私は考える。
(あれ?私が気を失う前に…シア婆は誰かの名前を呼んだ?え?あれは日記を見て思わず口から出たって感じだった…なんだっけ?えーっと…も?も...もか?)
「えー!!!ももかー!?」
頭の中で優しかった母親の顔がヒットした私は叫んだまましばし固まったのだった