記憶持ち
「孤児院に物心つくかつかないかという頃に教会から迎えが来た。本当の親に気味悪がられて捨てられたこの身を、教皇に据えるのに反対する者は一人としていなかった。親のように慕っていた院長ですら…だ。知らないはずの言葉や知識があるんだ。言わずとも気持ち悪いと感じていたのだろうな」
ショタっ子には珍しく饒舌に話された内容は、決して聞いていて気持ちのよいものではなかった。
意味がわからないと思われるクゥ以外が全員苦い顔をしているので、この世界の人間や竜からしても楽しい話ではないんだろう。
そりゃそうだ。
子供を捨てる親もそうだし、人と違うっていうだけで気味悪がられたりされたら誰でも嫌だもんね。
ん?ちょっと待てよ?
ショタっ子の状況って、私にも当てはまるんじゃ…。
だって、始祖の記憶とやらで知らないはずの事まで知ってるし?
かと思えば常識すら知らなかったりするし?
あれ?私のほうが酷くない?
一人百面相をしていると、不思議そうにバルさんが聞いてきた。
「サーラ嬢ちゃん 、どうしたんじゃ?」
「あー、いや、私も記憶持ちってやつなんじゃないかなーなんて」
「何?!それは本当か?!」
おおう!ショタっ子、食いつき半端ないな!
必死な形相に私がたじろいでいると、バルさんが説明してくれた。
「サーラ嬢ちゃん、記憶持ちは度々うまれるんじゃ。じゃが、教皇のような高位なものの記憶持ちならまだしも、他の記憶持ちは不吉なものとして殺されるか、捨てられるかで、圧倒的に数が少ない。じゃから教皇の坊は驚いたのじゃろう。のう?」
「あ、ああ、そうだ。記憶持ちにはじめて会ったから少し取り乱してしまった。すまない。」
「うん。いいけど。私も記憶持ち?だと思うよ。っていうか、私の場合、少しずつしか記憶が流れ込んでこないから違うかも知れないけど…」
シュンとするショタっ子に説明してるうちに自信無くなってきたわ。
異世界トリップ?転生?をした私にこの世界の理は当てはまるのか?
「いや、記憶持ちの中には先天的な者と後天的な者がいると聞いたことがある。始祖様は恐らく後者なのだろう。」
「うーん、そうなのかな‥.?まぁいっか。で?教皇様は先天的なの?」
「ああ、そうだ。」
「ふぅーん。よくわかんないけど、それじゃあ私たち一緒だね!」
え?なに?
なんか変なこと言った?
皆様、目を見開いてるんだけど!
ダメだ。やっぱりこの世界の常識はわからん!
でも、ショタっ子がどことなく嬉しそうなのでまぁいいか。