日記帳
欠食児童か!ってくらいに食事を貪る精霊王′sを横目にうつしながら食事を済ませて、御開きの時間となった。
え!?精霊って食事必要だったの?って思ったけど、アクア曰く「嗜好品」とのこと。
そういえばアースはシア婆のお菓子がどうたら言ってたし、フレイアはリンゴが好物みたいだったから納得。
自称保護者としてはちょっと安心した。
だって食事を必要とするのに、今まで与えてなかったんだとしたら完全に私が悪いもんね。
精霊王′sを神の遣いなんていって崇めてるショタっ子はじめ、教徒の人に知られたらどうなってたことか…。
想像するだけで恐ろしいわー!
まぁ、精霊王′sがそんな遠慮をするとは思えないけど。図太そうだし。
それはともかく、食べ終わったらさっさと発光体に戻った精霊王′sに呆れながら、ルルシカさんが用意してくれたっていう部屋へ移動しようとしたら、ショタっ子から声が掛かった。
「始祖様、少し時間を貰えないだろうか?」
「はぁ、いいですけど…どうかしたんですか?」
「こちらへ…見てもらいたいものがあるのだ」
いや、キリッとしながらそんなこと言われても残念ながら可愛らしさしか感じないんだけど…と思いながら頷いて、ショタっ子の後に続く。
相変わらず真っ黒で違和感ありまくりの廊下を歩いて、たどり着いたのは真っ白な扉の部屋だった。
モノトーンも甚だしい。
「ここは?」
「ここは限られたものしか入れぬ部屋だ」
「はぁ、私が入っちゃってもいいんですかね?」
「よいから連れてきた」
そりゃそうだ。ダメなら連れてこんわな。
そんなことを考えながら部屋に入った私は正面にある絵を見て自分の目を疑った。
(は?なにこれ…冗談にしても趣味が悪すぎるんだけど)
豪華な額縁に飾られた一枚の絵。
そこには、沢山の見たこともない魔物に襲われ逃げ惑う人々や、魔物と戦うエルフ、ドラゴン、そして吸血鬼の姿が、まるで写真かと見紛う程の細かさで描かれていたのだから。
「始祖様、これを…」
絵を唖然としながら見ていた私にショタっ子がどこから出したのか本のようなものを差し出す。
反射的にそれを手に取った私は、表紙に書いてある文字を見て、完全に言葉を失った。
(…これって…どういうこと…)
『異世界日記☆』
☆はなんか凄く腹立たしいけど、重要なのはその部分じゃない。そんなことは些細なことだ。今は。
なぜなら…日記帳だと思われる古ぼけた一冊の表紙に書かれているのが‥…数ヵ月前までは毎日のように目にしていた、そして、おそらくこの世界で私以外には読める人はいないであろう文字…そう、紛れもない日本語だったのだから。