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聖騎士団

今回ちょっと長めです。


村へ入った私が見たものは地獄絵図の様な光景…ではなく、何とも不思議な光景だった。

思わずポカーンが発動してしまうくらいには。


「あの白い人たち誰!?」


それもそのはず、村の中でもさぞや酷いことを行っていると思われた盗賊たちは殆どが気絶もしくは死亡している。おそらく白い服や鎧を着た人たちによってだと思われる。

ちなみに尋ねてみても精霊王′sは首を傾げるだけだ。引きこもり集団め…。


(敵じゃないみたいだけど…これどうすれば…)


勇んで村へ突入したはいいものの、やることがなくなってしまった私は戸惑った。


(いや、被害が食い止められたことは喜ばしいことなんだけどさ…)


「まぁいいや。アクアは怪我人の回復をお願い。あとフレイアとフレイは火の制御と消火を。アース、ルミナリア、ダークは瓦礫の片付けをしてくれる?」


『わかったわ!』

『『了解』』

『おう!』

『…わかった』

『…うん』


盗賊の討伐は白い人たちに任せるとしても、まだやることはある。

家屋からはまだ火がのぼってるし、燃えつきた木材や瓦礫だって転がってる。

それに少なからず怪我してる人も居るみたいだし…。

ハイエルフである王様やユリクさん、シア婆が聞いたら『精霊王様に何をさせるのだ!』なんて言われそうだけど、この場では貴重な働き手だ。

チートは使うべきだよね。本人たちやる気だし。


「さて、じゃあ私も働きますか!あ、私も手伝いまーす!」


精霊王′sが各自行動を始めたのを横目に私はとりあえずギョッとしている白い人たちの援護に入ることにした。

え?何で驚いてんの?



約30分後、100人程いた盗賊を全員討伐したころには精霊王′sも仕事を終えたようだ。

そうなれば『お前ら誰だよ!』的な視線が自然と集まるわけで…。

私的にも『この白い人たち何?』って思うわけで…


「あのー、貴方達は…?」


「あ、ああ、我々は聖騎士団だ。それで君達は?」


「えっと…迷子ですかね?」


『はぁ?何いってんだこいつ』って視線がとっても痛いです!

でも事実なんだからしょうがなくない!?

それよりも『聖騎士団』って何ぞや?




聖騎士団とは…リングル国の教会専属の小数精鋭の騎士団らしい。

最近、辺境の村を襲う大規模な盗賊被害が多発しているらしく、この村に注意を促しにきたんだってさ。ナイスタイミングというかなんというか…。

精霊王′sに興味を示してたから紹介したらなぜか皆平伏しちゃったよ!?え?何故に?

驚いていたら、団長であるルルシカさんが詳しく説明してくれました。

なんでもリングル国は信仰深い人が多いらしく、教会が権力を持つそうな。

つまり、精霊王は神の遣いとも言われていて信仰の対象らしい。

私からすればただ騒がしいだけのチート集団なんだけど、それは言わない方が良さそうなので黙っておく。空気を読むのに長けた日本人ならではの処世術ですよ。宗教の力は恐いのです!

てか、精霊王′sよ…どや顔やめろ!


説明してくれたルルシカさんはキラキラ王子顔負けのキラキラ度を誇るハニーブロンドの髪に碧眼の見目麗しい方なんだけど、キラキラ王子を思い出してどうしてもちょっと距離を空けてしまう。

防衛本能なのです。これも全てトラウマを植え付けた変態マザコン王子が悪いのですよ!

精霊王′sとはどれだけ近付いてもいいので許しておくれ。



それはともかく…リングル国ってマジか!?

また不法入国だし…。

はぁ…帰りたい…切実に。




ーーーーーーーーーーーーーーーーー


Side ルルシカ


最近、辺境の村を狙う大規模な盗賊被害が多発していると教皇様から聞かされた私たちは辺境の村へ注意を促しに向かった。

私が束ねる聖騎士団は小数精鋭であると自負している。

人族だけとはいえ、ある程度の魔力を持ち、毎日の剣の鍛練も欠かしたことはない。

リングル国最強の騎士団。

だからもし村で盗賊と鉢合わせたとしても、大丈夫だろうとたかをくくっていたのだ。


あの時までは…。


リングル国主都から馬でおよそ五日ほどかかる辺境の村『ナレス』。

そこに到着したと同時に盗賊の襲撃にあった。

盗賊たちにとって聖騎士団は目の上のたんこぶだ。

逆を言えば、聖騎士団さえ居なくなれば盗賊たちは何の憂いもなく村を…ひいては町までも襲う事が出来る。

まさかこの襲撃はこれを狙っていたのか!?と気付いた時にはもう遅かった。


爆発音と共に焼ける村の家屋。

聖騎士団が15名程に関わらず、盗賊たちは100名ほど。


「落ち着け!これでは奴等の思うつぼだ!」


怯む団員たちにそう声を掛けるも、いくら小数精鋭といえど僅か15人では出来ることなど限られている。


(仕方ない。盗賊だけでも殲滅しなければ…)


燃える家屋を目に写しつつも、何も出来ない自分に歯噛みしながら向かってくる盗賊たちを一人、また一人と葬っていく。

その間にも村の被害は拡大し、火の勢いは止まらない。


(くそっ!どうにかならないのか!)


自分の驕り、そして愚かさに心の中で悪態をつきながら神に祈った。


(どうか…どうか善良な村人達を悪人の手から御守りください!男神ゼフ様!どうか!)


その願いは聞き届けられ、そして叶えられた。

少女たちによって。


驚異的な魔法によって次々と盗賊たちを葬っていく吸血鬼の少女。

そして村の被害を食い止め、さらには瓦礫などを片付けていく少女の仲間。

自分達が出来なかったことを軽々とやってのける少女たちは血を浴び煤にまみれても気高く、そして美しかった。


(ああ、神よ!感謝いたします!)


団員たちの士気も上がり、全ての片がつくまでにさほど時間は掛からなかった。

それも全て神が遣わして下さった少女たちの力によるものが大きい。

呆然としながら少女に目を向けると、おずおずとしながら少女が口を開く。


「あのー貴方達は…?」


「あ、ああ、我々は聖騎士団だ。君達は?」


それからの会話は衝撃的すぎて余り覚えていない。

だが、精霊王様方を従える吸血鬼の少女という異色の組み合わせには覚えがある。

教会の奥深く、限られたものしか入れない部屋に残っている一枚の古い絵。

そして昔話として国民に伝わる物語。

そのどちらにも登場するのが『吸血鬼始祖様』と『精霊王様』。

これが偶然であろうか?

私だけでは判断がつかない。

教皇様にどうにか会っていただかなくては。

そんな事を考えながら私はこの出会いを心の底から神に感謝した。


Side Out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


サーラが帰れるのはいつになるのでしょう?

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