異変
ただいま絶賛迷子中のサーラでございます。
いや、元々世界を跨いでの盛大な迷子なわけだけども、それは一先ず置いといて。
さぁ人を探そう!と意気込んでみたは良いものの、目を皿のようにして探し続けているんだけど、いかんせん現状は芳しくない。
詳しい時間は不明だけど、お日様の様子から考えると、もう二時間程は低空飛行を続けてるはずなのに、ひとっこ一人見つからんのよ。これが。
まぁ、ここは荒野だし、そうそう好き好んでこんな場所に来る人なんて居ないだろうけど…一人くらいそんな奇特な人がいたっていいじゃないか!
と、心のなかで叫んでみても何か変わる訳じゃないので、仕方なく高度を上げる。
(人を探すより、まず村か町を探したほうがいいかも…)
急に居なくなって帰ってこない私を心配しているであろう皆の元へ早く帰りたい一心で、人の捜索を始めた私が約二時間かけてたどり着いた結論だった。
気付くのが些か遅すぎる気もするけど気にしない。
だってこんなに人が通らないなんて知らなかったんだもん!
そんなことを考えながら、雲に邪魔されない程度に高度を上げた私が見たのは豆粒くらいにしか見えないけど確かに人が住んでいると思われる村?町?だった。うん。だって煙出てるし。
てか私の二時間って…。
とりあえず目的地が決まったので、急いで移動を開始!
『オソイ…』
おい!今遅いって言ったやつ出てこいや!
これが私の最速なんじゃ!
てか、結構なスピード出してるのにこれで遅いって…無意識だった私は一体どれくらいのスピードを出してたんだろうか?
しかも無意識でしか使えないチートって…必要か?
それから体感で約30分後、無事に人が居るであろう場所の近くに降り立った。吸血鬼がいきなり上から降ってきたら驚かれるかも知れないとの配慮だ。一応。
(着い…た…これ…で勝つる…ってなにこれ…)
無我夢中で飛んで息も絶え絶えな私の目に写った光景に一瞬で意識が冴える。
逃げ惑う人に襲いかかる男たち。
むせかえるような血の匂いに、何かが燃えているであろう大量の煙。
そしてこの光景に不似合いな愉快そうな笑い声。
明らかに普通じゃない。
目の前で服を切り裂かれ凌辱されそうになっていた女性のすがるような目に突き動かされるように、私は女性に馬乗りになっていた男の首を魔法ではねた。
「大丈夫ですか!?何があったんです!?」
震えている女性の肩を揺らし、正気に戻らせる。
「は、はい。大丈夫です…でも…村の人が…盗賊が…っっ!!村の中に娘が居るんです!!助けてください!お願いします!」
必死になって私に頭を下げる女性の言葉は何とも要領を得ない。
でも出てきた単語でおおよその事態は把握できた。
「全員実体化!!盗賊殲滅するよ!アクアは村の人が怪我してたら回復!フレイアは火の勢いを止めて!アースは…もう!とにかく各自出来ることを!行くよ!」
そう叫んだ私は時間が惜しいとばかりに村へと走り出した。