夜会1
出来上がってきたドレスに着替えさせられ、髪をセットされる。
豪華な刺繍がされたドレスを着るのも髪のセットをしてもらうのも、人生で初めての経験。
昨日注文したドレスの完成度にビックリしたけど、マヤの髪を結う器用さにも驚愕だ。
「妹の髪を結っているので…」なんて言ってたけど、そんなもんで済まされる技術じゃない。
美容師さんも驚きの出来ばえだと思う。
複雑な編み込みでまとめられた髪に紫色の豪華なドレスを着た私は鏡の前で感嘆の溜め息をもらす。
今の私は美少女だからね。
何をしても何を着ても似合うわけですよ!
欲を言えば身体にもうちょっと凹凸が欲しいところだけど、それだけはどうにもならないから今後の成長に期待することにする。
リズが幼女姿だって事を踏まえるとあんまり期待できないけど…まぁ、想像するだけならタダだ。
この顔のまま成長してくれたらさぞかし美女になれることだろう。
「お綺麗です!サーラ様!」
「本当に!お伽噺の姫様のようです!」
うっとりしながらそう言うマヤとハイジに、こんな凹凸のないお伽噺の姫様がいてたまるかー!って突っ込みたくなったんだけど、二人とも尻尾がゆらゆら揺れてたから本心なんだろう。
とりあえず、ありがとうとだけ言っておいた。
「よし!さぁ行きますか!」
尻尾の誘惑に打ち勝つ為に気合いを入れる。
これからいく場所はきらびやかな夜会じゃない。
私にとって戦場になるかもしれない…いわば戦地だからね。
マヤとハイジの尻尾にニヤニヤしてる場合ではないのですよ!
コンコン
「サーラちゃん?準備出来たかし…っっ!!まぁ!なんて可愛らしいのかしら!!是非息子のお嫁さんになってほしいわー」
「サリア、落ち着くのじゃ」
「サーラ綺麗!」
「うん。サーラお姉ちゃんお姫様みたい!」
「…サーラさんっっ!!可憐だ…」
あー、皆さん、今日もフリーダムですね。
まぁ、予想はしてたけど。
つーか、サリアさん、まだ諦めてなかったんかい!
マヤとハイジも『王子様と結婚!?素敵!』とか言わないの!
その王子様はマザコンでロリコンだからね?
それと、なんかユリクさんが少し壊れぎみに見えるのは私の目の錯覚かしらん?
目がウルウルしてて顔が赤いような気がするんだけど…風邪かな?
とりあえず、ここでキャイキャイやってても仕方ないからゾロゾロと廊下へ出ましたよ。
さて、夜会はどうなるんでしょうね?
出来れば面倒ごとはなるべく穏便に収めたい私としては殺る気…じゃなかったやる気になってる皆の行動がとても不安です。
一人こっそり溜め息をつきながら、私は夜会の会場である大広間の扉をくぐった。
夜会が始まる…。