やっと買えたよ…
午後1時。
町の外れにある塔の中ではいまだ再起動出来ず固まったままのタジールさんと、感動?の再会を果たしたシア婆と精霊王達が居ます。
が!しかーし!
このままじゃいつまで経っても私の目的が果たされないので、思いきって言いますよ?
再会に水をさすのも、年上の方にもの申すのも不本意なんですがね…。
私が会話に入れないから拗ねてるわけじゃないよ?
まぁ、私以外の始祖の話とか気になるワードも聞こえてきてるけどそれは一旦置いておくことにします。
こちとら仲間の命がかかってるんで!
「いい加減にして貰えませんかね!?私は魔道具を買いに来たんです!」
あぁ、言っちゃった。
思ったより声が大きかったみたいで全員、こっち見てポカーンとしてるし。
タジールさん、固まりながらポカーンとするなんて器用ですね!じゃなかった、ちゃんと言わないと。
「シア婆、御存じかもしれませんが、今日私は王様主催の夜会に出ることになってます。襲撃者が紛れ込んでるかもしれません。だから仲間に渡す魔道具を買いに来ました。そして夜会は後四時間後です。時間がないんです。わかってくれますよね?」
コクコクと頷くシア婆に満足した私は精霊王達へ視線を移す。
あれー?なんでビクッとしたのかなぁー?
「…アクア、勝手に出てくるなって言ったよね?てか、全員!今すぐ実体化から戻って!シア婆と話したいなら今度!今は時間がないの!わかった!?」
『『『『『『はい!』』』』』』
返事と共に精霊王達が発光体へ戻ったのを見届けてシア婆へ再び視線を戻す。
あたふたしながらテーブルに魔道具を並べるシア婆を見て、何とか間に合いそうだと安堵の溜め息をついた。
タジールさんが唖然としながら「精霊王様方に命令…まさか神か?」とか呟いてたけど、そんなもんは知らん!
今はよくわからない事に吸血鬼始祖で少し…いやかなり縮んでいますけど、元女子高生のただの一般ピーポーですよ?
さて、シア婆から魔道具も買ったことだし、お城へ戻りますかね。
書き置きしておいたものの、あんまり長い時間留守にすると怒られそうだし。
もう遅い気がしないでもないけど…今は考えないでおこう。うん。
「シア婆、タジールさん、じゃあまた!」
そう言って私は羽を広げ、近くの窓から飛び降りた。
やっぱ急いでるときは飛べると便利だよね!
(到着ー…っと!え?何で皆、揃ってるの!?)
こっそりお城の中庭に着地したはずが、柱の影から出てきた面子にサーッと冷や汗がたれる。
「サーラさん?どこへいってた?」
ひぃぃー!!ブラックユリクさん再来ですよー!!
何で皆さん、笑顔なのに背中に黒いものを渦巻かせてるんでしょうか!?
とりあえず怖いので、皆様には事情を話しながらスライディング土下座で謝っておきました。
心配掛けたのは事実だし、多勢に無勢じゃ私に勝ち目はない。
我ながらこれは正しい行動だったと思い…たい。
ちなみにリズに買った魔道具は小さなティアラだ。幼女がドレス着てティアラ‥…どこの王女様だ!と突っ込みたくなること請け合いである。
見た目だけならだけど…。
お金はいらないと言い張るシア婆と、お金を払いたい私の攻防で、結局銀貨5枚になりました。
それを渡したリズはすぐに機嫌を直してくれたけど、マヤ、ハイジ含め、他の面々から許しを貰うには一時間もの時間を要した。
もう二度と勝手に外出などしまいと心に決めたのは余談である。