魔道具を買いに
やってきました、夜会当日。
昨日すんばらーしく笑顔だった皆が今日、どういう行動出るのか不安は残るものの、今まで差別するだけだった『エルフ至高主義者』が異種族の殺害っていう暴挙に出る引き金になったかもしれない私としては、何かと強く言えないのも事実だ。
だって、私のせいで皆が命の危険にさらされるかもしれないんだから。
いくら、ラスボス並…いや、それ以上の戦力を持つこちら側でも、罠に掛けられたりしたら勝敗はわからない。
始祖の記憶であろういつかの夢でも、吸血鬼が迫害され殺されていた。
力が全てじゃないのだ。
だからこそ、ヤル気になっている皆に強くは言えなかった。
私の一言で仲間を失う事になったら、私は自分を一生許すことが出来ないだろうから。
サリアさん曰く、「私達にはサーラちゃんから貰った魔道具があるから平気よー」なんて言ってたけど、多分私を安心させるための言葉だと思う。
その言葉で若干一名、不機嫌になったけど…。
ということで、不機嫌になった一名の為に魔道具を買いにいこうと思います。
約束を先伸ばしにするのは私の性格的に無理。
それに、魔道具があったら…なんて後悔するのは嫌だしね。
城を出ててくてく歩く。
目的地はこの間の魔道具屋さん。
不機嫌幼女…もとい、リズの魔道具を買いに行くためだ。
「あれー?この辺だと思ったんだけど…もしかして迷子になったかなー?」
歩けど歩けど目的地が見付からない。
方向音痴?いやいや、そんなことはない筈なんだけど…と、戸惑っていると背後から声を掛けられた。
「あの、吸血鬼始祖様ではございませんか?」
(え!?何!?)
普段なら普通に振り向いていただろうけど、タイミングが悪すぎた。
先日、命を狙われたばかりなのだ。
しかも、見た目小娘な私を吸血鬼始祖だと知っている人は多くない。
警戒度をMAXにして振り返った私はポカンとアホ面をさらすことになった。
「え?あ、魔道具屋さんのお兄さん?」
そこには探していた魔道具屋さんのお兄さんが立っていたのだ。
なんてナイスタイミング!…じゃなくて…私、この人に始祖だって言ったっけ?
うーんうーん唸っていると、お兄さんはクスリと笑った。
おおぅ!あの時は店が暗くて気づかなかったけど、お兄さんもかなりの美形ですね!眼福です!
「あの、失礼ですがお店を探していらしたのでは?」
ああ、そうだった!
美形を見てニヤニヤしてる場合じゃないんだった!
「あ、はい。えっと魔道具がほしくて…」
「そうですか…実はあの店は閉めてしまったのです」
「え?閉めたって…もうないって事ですか?」
「はい…」
申し訳無さそうに頷くお兄さん。
(そっかぁ…残念だけど仕方ないよね。他の店を探そう…)
「ですが、主の元へご案内は出来ます。お望みの魔道具があるかはわかりませんが…」
何ですとー!?
それを早く言って下さい!
行きます!行きますとも!
私がお兄さんのローブの裾を掴んでコクコク頷いてしまったのは言うまでもない。
「こちらです。」
「はぁ…ここですか?」
「はい。」
お兄さんに促され歩くこと約15分。
辿り着いたそこにはラプンツェルも真っ青な大きな塔がありました。
つーかさぁ、階段見当たらないんだけど…これどうやって登るの?
いや、それよりも、町から全然離れてないのに、町からこの塔が見えなかったって…どういう仕組みなんですかね?