チートってやつ?
アクアが実体化したのが合図だったかのように、次々と実体化していく精霊王達。
6人もいるから誰が誰だか見分けがつかないかと思ってたんだけど、要らぬ心配だった。
だってさ…、発光体の時と同じ髪の色なんだもん。
間違えようがない。
てか、わかりやすすぎる。
まず、アクアは水色のウエーブかかった長い髪のお姉さんでしょ。
フレイアは長めの赤い髪のプレイボーイっぽい雰囲気のお兄さん。
アースは緑の短髪で中学生くらいのヤンチャっぽい男の子。
フレイは紺色の長い髪のおっとり系。高校生くらいかな?
で、ルミナリアとダークはリズと同じくらい?で何と双子だった。
金髪のふわふわロング、長い黒髪のストレート以外はそっくりだ。
ちなみに全員、瞳の色も髪の色と同じ。
しかも全員タイプは違えどかなりの美形。
って…そんなことより!人口密度が凄いことになってるんだけど!!
なんで全員実体化するかなぁ!?
『国王、私達は始祖様であるサーラと行動を共にしたい。ここへ住まうことを許してはいただけぬか?』
「は…はい!それはこちらとしましてもありがたいことでございます!」
『世話になる』
「はい!」
えーっと…勝手に話を進めないでいただけるかな?
てか、アクア!あんたさっき『宜しくね♪』なんて言ってたよね?
全然話し方違うんだけど二重人格かなんかですか!?
それから私と精霊王達を部屋に残し、とりあえず全員この部屋を出ていった。
王様が気を利かせて「今後の事を話し合われたほうが良いだろう」って言ってくれたからなんだけどね。
まぁ、私もそうするのがいいと思うんだ。
そこはかとなくフリーダムな会話をしてる精霊王達に聞きたいこともあるしね。
「ねぇ」
『あ、これお菓子だろ?食っていいかな?』
『こら、アース!はしたない!…っっ!これは!リンゴのお菓子じゃないか!』
『…フレイア、あんた本当にリンゴが好きね…』
『当たり前だろうアクア!甘味と酸味の絶妙なバランス!リンゴこそ一番の果実だ!フレイもそう思わないかい?』
『ふふっ、そうね』
『…私は桃がすき』
『…私も』
「…ねぇってば!!人の話を聞けー!!!」
『『『『『はい、すみませんでした』』』』』
今更だけど森に帰って貰うことって出来ないかな?
このフリーダムな精霊王達と行動を共にするって思うと、頭が痛いんだけど…。
溜め息で幸せが逃げるんだとしたら、私の幸せは今日一日で随分なくなった気がする。
到底、このメンバーをまとめ上げる事は無理だと早々に諦めた私は、個人面談をすることにした。
ちなみに、面談中、他の精霊王は発光体に逆戻りだ。
話が進まなくなりそうだから。
「えーっと、まずはアクア!」
『はいはーい♪』
「じゃあまず、アクアがこの世界で担ってる役目と、出来ることを教えて」
『うーん、私は水の精霊王だから豊かな水で生き物を生かす役目?なのかしら?出来ることは…怪我を治すことかしらね。望むなら大陸を洪水にすることくらいは容易いわよ!』
精霊王って凄いんだーって思って聞いてたら、最後に恐ろしい台詞が聞こえたよ!
しかも、胸を張って言うから揺れる揺れる!
…何が揺れるかは想像にお任せします。
切なくなったんで次!
「じゃあ次は…」
長かった…頑張った自分を今日ほど誉めてあげたいと思ったことはないかもしれない。
だって皆、話がすぐ逸れるんだもん。
幼稚園児と話してる気分だった…。
とりあえず全員の面談が終わって時刻は深夜。
結局わかったのは、全員が魔法を得意としてることと、本気出せばこの世界を壊せるってこと。いや、させないけどね?
アクア→回復魔法特化→世界を洪水にすることくらいは可能
フレイア→火の攻撃魔法特化→世界を火の海にすることくらいは可能
フレイ→風の補助魔法特化→世界中にハリケーンをおこすことくらいは可能
アース→植物の成長補助魔法特化→世界の地を地割れにすることくらいは可能
ルミナリア→闇を払う魔法特化→世界を灼熱に照らしサウナ状態にすることくらいは可能
ダーク→光を抑える魔法特化→世界を闇に覆うことくらいは可能
うん。とっても物騒な方々です。
~ことくらいって言うけどさ、これって所謂チートってやつだよね!?
いや、確かに皆、世界に無くてはならない存在なんだろうってことはわかるよ?
どれが欠けても生きていけないからね。
でもさ、爆弾抱えてる犯罪者の気分になるのはなんでなんだろう。
(まぁ、いいや、寝よ…)
全員が発光体に戻った事を確認してベッドへ横になった私は、考えることを放棄してそのまま意識を手放した。
人間、脳のキャパがオーバーすると現実逃避する事を身をもって証明した…とも言える。