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仲間

シリアス風味です。

これから二話くらいはシリアスが入る予定ですが、その後はまたほのぼのに戻ります。

町へ帰るために森を歩く。

私は甲虫討伐&素材回収がうまくいったこともあって上機嫌だ。

昨日と同じで楽に剥ぎ取り出来たから、私の取り分を多くしてくれるって皆が言ってくれたしね!

これでリズへのプレゼントも買えるし、貯金も貯まる。

これからこの世界で生きていくんだから、使命が終わった後にマイホームだって欲しいし。

大体、この体はあとどれくらいの寿命があるかもわからないのだ。

千年単位で生きるとして、いつまでも居候してるほど私は図太くないし、根なし草でいられるほどぼんくらでもない。


(うん。また夢に一歩近付いた!)


私が望むのはただただ平凡な幸せ。

異世界に来て、吸血鬼始祖になって、個性の強い人と知り合いになった時点で、それは難しいかもしれないけど…。


そんな事を考えながらルンルンで町へ歩を進めていた私は気付けなかった。

このあと起こる事に…そして人の殺意のこもった視線に…





「ユリク殿?ここはもう結界の中じゃな?」


「ああ、リズナベット殿、その通りだ。」


「ならばやはり…」


「ああ、魔物ではない」


「そうか。残念じゃな」


「…仕方ない。同胞であるエルフを殺めるのは些か気が引けるが.…」


あと少しで町…ってところでなんだかユリクさんとリズが物騒な会話をはじめました。

え?何事?

二人の真剣な顔に私やマリア、ジン君まで緊張が走る。


「ねぇ?リズ?どうしたの?」


戸惑った私がリズに尋ねると同時に一陣の風が吹く。

思わず目を閉じた私が目を開けた時…そこには10人程のエルフが私達を囲むように立っていた。


(え?何が…魔法?あ、あの人たちこの間の…)


いきなり目の前に現れた男たちを観察する。

そこには、マリアと出会うきっかけとなった…ジン君を蹴っていたとされるエルフの三人も含まれていた。


(何でこの人たちが…牢に入れられたって…それに.…)


向けられる殺気に体が震える。

今、この場で起きていることを…脳が否定する。

だって…この殺気は全て…私に向けられているのだから。


「…なんで?」


私が無意識に絞り出した言葉はエルフの一人に嘲笑された。

いつかの門番のお兄さんだ。


「フッ、何故だと?それは汚らわしい吸血鬼が目障りだからだ。だから殺すんだよ!そうすれば我が君もお喜びになられる!」


「‥…我が君?」


「ああ、お前のような下践な者では近づけぬ程の素晴らしい御方だ!」


「‥ほう?是非その御方とやらに会ってみたいものじゃな!なぁ?ユリク殿」


「ああ、王である兄の客に手を出そうとする『我が君』とやらに…」


駄目だ。頭が追い付かない。

怖い。そして…悲しい。

とりあえず…私への嘲笑で怒りをコントロール出来ていないユリクさんやリズ、マリアやジン君を止めないと!

でも悲しいかな平和な世界で生まれ育って、ここまであからさまな殺意を向けられたことのない私は声すらも出せずに立ちすくみ震えることしか出来なかった。



目の前で血が飛び散る。

その芳香に頭が冴える。


『桜、仲間ってね大切なのよ?だからあなたも大事な人を守れるように心を強く持ちなさい』


そう言ったのは誰だっただろう?

ああ、お母さんだ。

私が小さい頃、懐かしむように強い意志を持った瞳でそう言った母の言葉はまだ幼い私には理解出来なかった。

でも今なら…それがわかる。


(皆は私の為に戦ってくれている!ユリクさんは同胞と…なのに私は何をしてるの?)


「皆…ごめん…ありがとう」


戦っている皆に聞こえているかはわからない。

気持ちを言葉にした私は仲間に保護膜を掛け、魔力を放出した。



光が森を包む。

結界ですら吹き飛ばす程の膨大な魔力の奔流が敵であるエルフ達へと向かう。

なぜ私だけを狙ったのかはわからないけど…


「仲間を傷付けたあなたたちを私は許さない!」


吸血鬼の傷はすぐ塞がる。

でも、汚らわしいと言われた心の傷は?

下践と言われ蹴られたジン君の心の傷は?

同胞に刃を向けなければならなかったユリクさんの心の傷は?

ねぇ、誰か教えて。

私は救世主なの?それとも…災厄を運ぶ…


『桜、幸せになるのよ?』


魔力の無理な放出で意識が反転する前に、懐かしい母の声が聞こえた気がした。












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