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村にて

ニコニコニコ。


木こりのおじさん、(ザイルさんというらしい)の家へと招かれ、久方ぶりの暖かい食事にありつけたのは良かったものの、私はとても眩しい視線に食事の味なんてわからない状況にいた。


原因は明らか。

ザイルさんの奥さん、セラフィさんの熱視線である。


(何でこんなに見られてんの!?しかも笑顔で!え?わたし、なんかした??)


チラリとミーナを見ても、我関せずといった様子でシチューに舌鼓をうっているし、熱視線を一人で全身に受けている私としては軽いパニック状態だ。


「おい、セラフィ、そんなに見たら食べづらいだろう!」


(おお!ザイルさん、天の助け!もっと言ってやってください!)


私の心からの応援はその後のセラフィさんの言葉に意味をなくすことになった。


「だってぇ、あなた!こんなにかわいい女の子なのよ?しかも吸血鬼!もう私、嬉しくって♪」


「そ、そうだな。お前はアンディ様の大ファンだから仕方ないか…はぁ…」


弱っ!ザイルさん弱っ!!

しかも吸血鬼ってばれてるし!

んで、アンディって誰だよ…。

そう思いながらも言葉に出さなかった自分を誉めてあげたい。


「サーラさん、アンディ様っていうのは帝国の魔術師団長のことです。」


ポカーンとアホ面を晒していた私にミーナがそっと耳打ちをした。


(成る程。そのアンディって人を知ってるから私が吸血鬼だってわかったってことね。ってことはここは帝国領!?)


私がそんなことを考えている間も、セラフィさんのアンディ様の素晴らしさは…という演説は止まらない。

なので、ザイルさんに尋ねてみることにした。

セラフィさんは…暫く放置でいいだろう。うん。


「ザイルさん、あのー、ここは帝国領なんですか?」


「ん?そうだぞ。嬢ちゃん達は知らなかったのか?」


「はい。いやぁ、盛大な迷子でして…」


まさか世界を越えての迷子ですとは言えず、何とか誤魔化す。


「そうなのか…大変だったなぁ…明日になれば商隊の馬車が来る。それに乗せてもらえば帝国の主都まで行けるはずだ。乗せて貰えるよう頼んでみようか?」


「お願いします。あ、ミーナは…」


「私もそれで構いませんよ。冒険者ギルドのネットワークで早く安否を知らせておきたいですし。」


「よし、じゃあ二人ともだな!任せとけ!商隊には幼馴染みが居るんだ!なんとかしてみせる。俺の命の恩人だからな!そうと決まればもう寝ちまえ。疲れてるだろう?」


「はい。ありがとうございます。」


その夜は久しぶりのベッドでぐっすり…とはいかず、私は部屋の窓から空を見上げていた。

ミーナはぐっすりと眠っている。


「やっぱり月が三つ.…なんでこんなことになったんだろう…」


私は一人呟いた。

異世界に来て5日。

今日、はじめての魔物との戦闘で、命を奪うことに躊躇いを全く感じなかった自分に驚いた。

何故かはわからないけど、日本に帰りたいとは不思議と思わない。

もしかしたら、日本に私の居場所はもうないのかもしれない。



「まぁ、考えても仕方ないか。寝よ。」


藤崎 桜 、 サーラとなってしまった今でも細かいことは気にしないの信条は受け継がれているようである。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ところ変わって日本。


都内某所のとある家庭でのテレビの画面では、沈痛な顔をしたニュースキャスターがニュースを読み上げていた。


『12月5日の午後五時頃、東京都○○区の一軒家で火災が発生。バックドラフト現象により、帰宅した藤崎 桜さん18才が亡くなりました。バックドラフト現象とは‥…』






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