プレゼント
フンフフンフフーン♪
緊張の食事会から解き放たれた私は食堂で皆と別れて部屋へ戻るためふかふかの絨毯の廊下を歩く。
鼻歌だって歌っちゃいますよ!
いやぁ、まさか食事に国王様まで同席するとは思ってなかったし、破格値で買った魔道具をいざ渡すとなると皆が気に入ってくれるか不安で食事の味なんてわかんなかったよ…。
この国は野菜中心だけど毎日美味しい料理を出してくれるからちょっと損した気分。ぐすん。
それにしても…国王様、私がプレゼント渡すとき手が震えてた気がする…。
(王様の大変さってわかんないけど…きっとお仕事忙しいんだろうな…)
何日か振りに会った国王様は痩せて…というか少しやつれているように見えた。
詳しいことはわからないけど、この国は種族差別とかあるみたいだし、きっと今、大変な時期なんだろう。
この世界の知識なんて無いに等しい私だけど、地球でもこの類いの話はあった。
宗教の違いや人種差別。
私はその小さな歪みが最終的に辿る道を知ってる。
歴史の授業やテレビのニュースで。
戦争…内乱…日本という安全な国で生まれ育ったから気にしてなかったけど、今は他人事じゃない。
昔も今‥…といってもこの世界に来る前だけど、それはなくならない。
(でもそんなの間違ってる!種族が違っても皆、ちゃんと生きてるのに…)
綺麗事かもしれないけど、そんなことを思いながら目の前の扉を開いた。
「「お帰りなさいませ」」
「ただいま、マヤ、ハイジ!」
部屋に入ると猫耳侍女二人が迎えてくれた。
完璧なユニゾンで迎えてくれる二人の顔を見てると心がなごむ。
決して猫耳と揺れる尻尾になごんでいた訳じゃないからね!…多分…
「サーラ様、湯あみの用意ができてますがどうしますか?」
「顔がお疲れのようです。早く休まれたほうがいいのでは?」
あぁ、コテッと首を傾げるマヤも心配そうに耳がピクピクしてるハイジも可愛らしい!
和むわー。
…いやいや、そうじゃなくて!
私、疲れた顔してるかな?
まぁ、今日はなぜか大人数で討伐してー、急いでプレゼント買いに行ってー、自称『吸血鬼大帝』のリズに絡まれてー、国王様まで同席の食事会してー…って!そりゃ疲れるわ!
すぐにでもお風呂入って寝たかったけど、二人にもプレゼント渡さなきゃね!
「あのね、二人に日頃の感謝の気持ちを込めてプレゼントがあるの!えーっと…これなんだけど…」
おずおずとポーチから髪留めを2つ取り出して二人に渡す。
え?なんか二人とも目を見開いて固まっちゃったんだけど…気に入らなかったかな?
「おーい?」
顔の前でブンブン手を振りながら声を掛ければ、ハッとしたように二人は再起動をはたした。
「…ハッ!これを私たちに?」
「…サーラ様自ら選んで下さったのですか?」
う…上目づかいでうるうるしながらこちらを見るのはやめていただきたい。
耳も尻尾も忙しそうに動いてて喜んで?っていうか感激?してくれてるのはわかるんだけどさ…そんな可愛い顔されると耳とか耳とか耳とか触りたくなるし!
「……もふもふ」
「はい?あのっ!大切にします!」
「もふもふ?」
やば!つい願望を口に出しちゃったよ…。
不思議そうに首を傾げる二人には悪いけどそこはノータッチでお願いします。
警戒されちゃったらきっと私、マジ泣きしちゃうんで!
「「行ってらっしゃいませ!」」
「うん。行ってくるね!」
一晩ゆっくり寝て体調は万全!
今日もギルドで依頼を受けようと思う。
同胞探しはどうしたのかって?
うーん。うまく説明出来ないんだけど、今、この国から離れちゃいけないような気がするんだよね。
勘だけど…。
だから今日もお金を稼ぎますよー!
私は早速髪留めを付けてくれている二人に送り出されて部屋を後にした。
城を出るとそこにはユリクさん、マリア、ジン君、リズ…って!リズ?!
「…なんで…」
「今日も依頼を受けにいくのだろう?俺も同行する!」
「サーラだけじゃ心配だしね!」
「ねー?」
「わ、妾も一緒に行ってやってもよいのじゃ!」
ねぇ、私の部屋にカメラとかついてないよね?
まさか私の体にGPSが仕込んであるとか…?
なんでバレてんのー!?
ちなみに、ジン君にプレゼントを渡したら飛び上がって喜び、皆の魔道具を羨ましがって駄々をこねたリズに魔道具を買ってあげる約束をしてしまったことは余談である。
サリアさん…私はどうしても子供の姿のリズには甘くなってしまうみたいです…。ガクリ。