試練?
血生臭い表現があります。
お気をつけ下さい。
『一撃必殺』
その言葉がピッタリな光景が目の前で繰り広げられていた。
熊さん…もといワイルドベアの首を魔力を纏わせた剣でスッパリと斬り落とすユリクさん。
群れだったのか、その後ぞろぞろと出てきたワイルドベアをマリアは魔法で、ジン君はナイフで首を狙って次々と倒していく。
うん。連れてくるんじゃなかったかもなんて思ってごめん。
戦力外どころか、バリバリ戦力だったよ…。
(凄い!…けどこのままじゃ私がお荷物ってことになるんじゃ…それは嫌だ!)
ギルドに行き、依頼まで決めた私が何もしない訳にはいかない。
私は慌てて、ワイルドベアに向けて魔法を放った。
新魔法が出来ました!
戦闘…というか蹂躙?のような戦いの中で開発した、その名も『広範囲ブーメラン魔法』。
相変わらずあれなネーミングだけど、威力は凄い…と思う。
次から次へと出てくるワイルドベアを一匹ずつ倒すのが面倒になったから開発したんだけどね。
まぁ、名の通り、風の刃をブーメランみたいに飛ばすだけの魔法なんだけど…。
勢い余って森の樹まで傷付けちゃってユリクさんにジト目を向けられたから場所を選ばなきゃいけないことを学習しました。
すみません。
まぁ、そんな一コマもありつつ、ワイルドベアの討伐は終了したわけだけど、ギルドに討伐証明部位を持っていかなきゃいけない。
(えーっと……23、24、25匹!?そんなに沢山倒したっけ!?それにしても角…固そうなんだけど…)
どう考えても手でポキッとは折れそうもない角を見て思案する。
「サーラ?何する気?角は固いから私が…」
そんなマリアの声を聞きながら、魔力を手に集めるようにしてワイルドベアの角に手刀をかました。
サクッ
「あ、角とれた!ってか切れた?」
嬉しくなって皆の顔を見ると、一様に微妙な表情をしている。
え?駄目だった?
「まぁ、サーラだからね…」
「メチャクチャだね…」
「そうだな…」
何なの三人とも!言いたいことあるなら言えば良いじゃん!
なんかすっごくいたたまれないんだけど!
「ワイルドベアの角は固いから生えている部分をくり貫くように取るのが普通なんだ。サーラさんのやり方は誰にでも出来ることじゃない」
「そうだよ!まぁ、そのお陰で毛皮の剥ぎ取りも楽だけどね!」
「やっぱりサーラお姉ちゃん凄い!」
「……はぁ、それはどうも」
褒められているのかなんなのか微妙だけど、一応お礼?を言っておいた。
手刀という新たな武器を手に入れた訳だけど、ユリクさん曰く「あまり多用しない方がいい」とのこと。
まぁ、体が武器とか人に知られない方がいいだろうしね。
それにこのままいくと自分の体がどこぞの戦闘ロボットのようになりそうで怖い。
そんな自分を思い浮かべてブルリと体を震わせた私は、毛皮の剥ぎ取りに集中することにした。
私が日本で読んでたファンタジー小説では『剥ぎ取り』という行為は、血の匂いとグロテスクさに主人公が最初にぶち当たる試練のはずである。
ちなみに、私は今までギルドで依頼を受けていたけど、剥ぎ取りをするのは初めてだ。
だってギルドの職員さんに何も言われなかったし。
今まで倒してた魔物はスライムとか虫みたいのとかばっかりだったしね。
つまり何が言いたいのかと言うと「剥ぎ取りなんて私にとって大した試練じゃない」ということ。
普通ならナイフで…とかまどろっこしい行程を踏まなきゃいけないところなんだろうけど、幸い私の手刀でサックリと剥ぎ取れる。
吸血鬼という種族だからかもしれないけど血の匂いは別に気にならないし。
まぁ、いい匂いなわけでもないけど。
変態ロリコンやマザコンの相手をするほうが余程試練と言える。
そんなこんなで初の剥ぎ取り体験はさほど手間取る事もなく終了し、町へ戻ることになった。
てかさ、今気づいたけど…私ばっかり働いてない?!
おい!そこの三人!和やかに談笑してるんじゃない!
…うん。やっぱり連れてこなくても良かったわ…。