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第一村人発見!


自分が吸血鬼という種族だという衝撃の事実を受け止めてから三日が経った。


諸事情により、(主に私の事情だが)日が傾いてから移動し、日が上ってから休むという不健康極まりない生活を続けている。


そんな不健康生活の中でも、ミーナからかなりの情報が得られた。


まず、この世界はユーラディアというらしい。

主に四国がおさめる大陸で東のリングル国、西の帝国、南のナディア国、北のサイラン国となっているらしい。

領土の大きさは言われてもわからないので今は無視だ。

その他の民族の些細な争いはあるらしいが、四国は今は平和で戦争などもないとのこと。

戦死フラグはたちそうもなくて助かった。


次にお金について。

盗賊みたいな男たちの荷物から頂戴したお金は一番高価な貨幣以外は全部揃ってて一つずつ教えてもらった。

まずは銅貨。

銅貨15枚もあれば一日の食事が賄えるらしいので、たぶん百円位の価値なのだろう。

次に銀貨。

銅貨10枚で銀貨になり、銀貨三枚から六枚程で宿に泊まれるとのことなので、これはたぶん千円くらい。

次に金貨。

銀貨が10枚で金貨になるらしいのでこれはたぶん一万円くらい。

次に大金貨。

金貨10枚で大金貨になるらしいのでこれはたぶん十万円くらい。

その上に水晶貨というのがあるみたいだけど、これは手に入るとも思えないので説明を省いてもらった。

時間は有限なのだ。

無駄な知識より、すぐ使える常識を覚える方が先である。


次に魔物だが…冒険者ギルドがあると聞いたときから予想していたが、やっぱりいるらしい。

まぁ、これも追々覚えていけばいいだろう。


「こんなものですかね。しかしこんな常識を知らないなんて、サーラさんはどんな生活をしてきたんですか?」


呆れたようなミーナの言葉には『生まれてこの方引きこもってて外の世界に初めて出てみたら捕まった』ということにして誤魔化した。


「そうなんですか。」と素直に納得してくれたのでセーフだ。


異世界から来て、体が縮んで吸血鬼になっちゃってた!なんて言ったら同じ反応は得られなかったと思うし。

騙してるみたいでちょっと良心が痛むけど、何でトリップしたのかわからない今の状態で、私の事情に巻き込むわけにはいかないしね。

もし、『禁術』でとかの召喚だったら、事情を知ってしまったミーナの身も危ないかもしれない。

それだけは避けたかった。



「とりあえずそろそろ歩こうか。日も傾いてきたし!」


「そうですね。食料も底をつきそうですし、早めに町や村に着かなければ。」





歩き出したはいいものの、私達の足は完全に止まっていた。

何故なら…


「ここって森?だよね?」


「はい。森…ですね…」


「魔物ってさー、森とかによく出るんだよね?」


「はい。しかも夜は特に行動が活発になります」


「「どうしよっか?」どうしましょう?」


まぁ、そういうことである。

迂回しようにも目の前には木、樹、木、樹。

まず迂回は難しいだろう。


(突っ切るか…最悪、魔法もあるし…それしか手がないしなぁ…)


「よし!突っ切ろう!」


「えぇ!!このままですか!?」


「まぁ大丈夫っしょ。最悪魔法もあるしね!」


「はぁ…サーラさんの魔法の腕は信頼してますけど…そうですね。このままじゃ足止めですし。」


「うん、うん。じゃあ行こう!レッツゴー!」


「レッツ?は、はい。」


意気揚々と森に入る私の後を恐る恐るといった様子でついてくるミーナ。


獣の遠吠えにミーナがビクビクするといった事もあったが、それから約1時間程経った頃、私は足を止めた。


「うわっぷ!サーラさんどうしたんですか?」


急に私が立ち止まったことで、思いっきり私の背中に激突したミーナが声をあげる。


「しっ!静かに!」


私の緊迫した声音に、ミーナがびくりと肩を震わせる。


「ミーナ、少し先に何かに追われてる人がいる。多分狼?」


「え?もしかしてフォレストウルフ?!」


「知ってるの?」


「はい。冒険者ギルド指定でCランクの魔物です!」


「そう。助けにいくけどミーナどうする?」


「わ、私もいきます!」


「なら保護膜かけるね。これでよし!私から離れないでね、行くよ!」


「は、はい!」


走ってその場所へ向かうと、木こりっぽい男の人がフォレストウルフに囲まれていた。


(…六匹か…森で火の魔法は使えないし…どうするか…)


私が考えていると、木こりっぽい男の人がこちらに気付いたらしい。


「嬢ちゃん達!逃げろ!」


その声にフォレストウルフが反応して一斉にこちらを向き、近付いてくる。

どうやらこちらが獲物認定されてしまったらしい。


(まぁ、その方が戦いやすいからいいんだけどね!)


「ミーナそこから動かないで!そこのおじさんも!」


(よーし、決めた。風の刃にしよっと!)


「行くよ!」


今にも私達へと飛びかかりそうになっていたフォレストウルフの首を風の刃ではねる。

他のフォレストウルフは仲間が殺されたことに一瞬怯んだようだが、すぐにこちらへ敵意を向けてきた。

一匹ずつ、時には二匹同時に、同じ要領で首をはね、私の異世界初討伐は3分程で終わりを告げた。


(ミーナとおじさんは!?)


振り返りミーナの無事を確認し、おじさんの無事もついでに確認した私はホッと息をつく。


「じ、嬢ちゃん、凄いんだなぁ…」


おじさんの言葉にミーナはハッとなったように私へ詰め寄ってきた。


「サーラさん!フォレストウルフは群れだとギルドの指定でBランクの魔物ですよ!それを5分と掛からず倒すなんて!凄いです!」


「あ、うん。ありがとう?」


ミーナの勢いに圧された私はとりあえずお礼を言っておいておいた。








「いやぁ、木こりの仕事が思ったより遅くまでかかっちまってなぁ。帰ろうとした所で魔物に追いかけられたんだ。嬢ちゃんには助けられた。ありがとう。是非村へ寄っていってくれ!礼がしたいんだ」


とのおじさんの言葉に(やっぱり木こりだったんかい!)と心の中で突っ込みつつ、私とミーナはやっとのことでたどり着けた村に喜びを露にし、「はい!是非!」という遠慮も何もない返事を返したのだった。





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