背後に注意!?
青い空!おいしい空気!
いやぁ、いい朝ですね!
『洗濯魔法』と名付けた魔法で、名の通り洗濯を済ませた私は空を見上げて大きく伸びをした。
あ、洗濯魔法ってのは、まんま洗濯機をイメージして作ったんだけどね。
球体の水の中でぐるぐる衣服が回る様は、何度見ても洗濯機!
なんと、その後熱風で乾燥までしてくれる優れものなのだ!
って言っても私が開発したんだけど…。
だってこの世界って手洗いなんだよ?
洗濯板でごしごし擦るとかめんどくさいもん。
一度やったことあるけど、縮んだ私の体には、かなりの重労働だったし。
勿論洗濯洗剤なんてものも無いから、洗濯は石鹸だ。
多少ゴワゴワするけど、汚い洋服を着続けるよりは全然いい。
柔軟剤の有り難さをこの世界に来て感じることになるとは思ってもみなかったよ。
とまぁ、軽く現実逃避してみた。
なぜならサリアさんが私に抱きついて離れてくれないからだ。
「サーラちゃん!こんなに可愛らしいお洋服持ってるなら着てくれれば良かったのに!もう!本当に可愛いわ!どうしましょ!」
私が今着ているのは、ナディア国のオカマさんに見立てて貰った黒いドレスワンピ。
だって、さすがに全裸で洗濯するわけにはいかないからさ、洗濯してる間だけそれを着てたんだけど…どうやらそれがサリアさんの好みどストライクだったらしく…。
こうなるのが何となく予想できてたから、今までサリアさんが寝てる間とかに洗濯してたのにー!!
頭痛の種だったマクシミリアンが居なくなった事で浮かれてた私は、背後から忍び寄るサリアさんに気付けなかったよ…。
「サーラちゃん!その格好で今日は過ごしましょうか!」
「嫌です!」
「あら!どうして!?可愛らしいのに…」
そういう問題じゃない!
スカートで飛んだら色々丸見えになるでしょーが!
って言いたかったけど、サリアさんにそれを言ったところで返ってくる言葉が何となく予想できたから、無言を貫いた。
『ミラージュ更衣室もどき』でさっさと着替えましたよ。
てか、サリアさん!何でそんなに残念そうな顔をしてるんですか!
(絶対サイラン国に着いたら新しい洋服を買おう…うん)
密かな決意を胸に秘めて、私は空へと飛び立った。
サリアさんと共に向かうはサイラン国。
(門番のお兄さんに会いたくないなぁ…)
そんなのんきな事を考えながら、まだ残念そうにしているサリアさんに向かって声を掛ける。
「サリアさん!早くしないと置いてきますよー」
「待って、サーラちゃん!やっぱりさっきのお洋服‥…」
「まだ諦めてなかったんですか?絶対嫌です!」
「そんなぁ…」
うん。今日も平和で何よりだ。