酒は飲んでも…
どんなときでも別れは悲しい。
いつまた会えるのかわからないなら尚更。
そう。どんなときでもだ。
例え、私含め、皆が酔っぱらっていようと…。
「ちょっとー、サーラちゃん、飲んでるのー?」
「飲んでますとも!飲まなきゃやってられないってーの!あぁ、クゥちゃーん…」
『サーラ嬢ちゃん、儂がちゃーんと面倒みるからのー!クゥのことは心配せずともよいぞー』
しなだれかかってくるサリアさんに、居酒屋で飲むサラリーマンのような言葉を返し、クゥを抱き寄せると、それを見たバルさんが頼もしい事を言ってくれる。
いつもと違う間延びした感じの話し方に不安が少し膨らんだ気もするが、全員が泥酔…とは言わないまでも、かなり飲んでいる状態では正常に頭が働くはずもなく、私は「バルさーん、お願いしますぅー」とバルさんの顔に頬擦りをしながら涙を流す。
「なんだこの混沌…始祖様は泣き上戸とか…」
おい!マクシミリアン!
聞こえてるぞ!お前も飲め!
巨大な酒壷を抱えながらマクシミリアンにお酒をついだ私は、朦朧とする意識の中で考える。
何でこうなった?と。
私が寝付いて暫くたった頃、外が騒がしいのに気付いてバチっと目を覚ます。
(んー?何事ー?)
目を擦りながらバルさんの家を出ようとしたところで私は固まった。
(え!?何事!?何で広場にドラゴンさんが勢揃いしてんのー!!)
無言で呆気にとられている私に気付いたらしいバルさんが『サーラ嬢ちゃん?どうしたんじゃ?』と言いながらのそりと顔を覗かせると、広場に集まっていたドラゴンさん達から歓声がわいた。
『長ー、お帰りなさい!』
『始祖のお嬢さん、ありがとう!』
『ありがとう!』
『長、酒を持ってきましたよ!』
『飲みましょう!』
は?お酒?
てか、ありがとうって何が?
バルさんを治した事?それともマクシミリアンを連れて里を出ること?
もう私は完全にパニックだ。
困惑しながらバルさんを見れば、楽しそうに目を細めている。
いつの間にかサリアさんとマクシミリアン、クゥまで起きていて、騒ぎを見ながら唖然としてるし。
『うむ。皆と飲むのも久しいの。今宵は騒ぐとするか』
え!?お酒飲むの?
今宵ってもう朝方なんだけど…今から!?
てか、私、未成年なんだけどー!!
サリアさんは「あら、いいわねぇ♪」なんて乗り気だし、マクシミリアンは「飲み比べか!」なんて意気込んでるし、クゥは何が楽しいのか尻尾を揺らしながら『キューキュー♪』なんて鳴いてるし‥…。
あ、私に拒否権はないんですね?
了解しました。
ってことで無理矢理、飲み会が始まったわけだ。
なんでも、ドラゴンは酒好きらしくって、何かあるとすぐ飲み会を開くんだそうな。
うん。知りたくなかった。そんな無駄情報…。
そして私はドラゴンさん達に進められるままお酒を飲み、大人の階段を1つ登ったわけだけど…。
あ、そんな事を思い出してたら頭がぐるぐるしてきたよ。
「サーラちゃん、大丈夫!?」
サリアさんの声が遠くで聞こえる。
えーっと、大丈夫…じゃないかも…?
(そういえば酒は飲んでものまれるなって言葉があったなぁ…)
誰が言ったかもわからない先人の言葉を思い出しながら…私の視界は暗転した。
年末年始、お酒の飲みすぎには注意しましょうww