卵の中から
竜王バルディアンガルド。
およそ3000年ほど前の魔物の大量発生の際、絶滅するかに思われた人族、亜人族を救ったとされる伝説のドラゴン。
その伝説はいまだに語り継がれており、神のように崇める者もいる。
とはサリアさん談。
当の本人、(人ではないけど)であるバルさんは『ただ空を飛んでおったら魔物がおっての、仲間と一緒に倒したまでじゃ。あの頃は儂も血気盛んだったからのう。…いやぁ、懐かしい話じゃわい』と懐かしむように目を細めていた。
私はというと…
(ほえー、バルさん強いんだぁ)
なんて素直に感心してたりしたんだけど、なぜかサリアさんに呆れられました。
「はぁ…サーラちゃんだものね」とはどういう意味ですか?!
いや、バルさんが凄いドラゴンさんなのはわかったよ?
でもバルさんは、なんか優しいお爺ちゃんみたいな感じだから、戦ってるところとか全く想像つかないんだよね。
いくら私が年齢的には歳上であろうが、実際生きてきた記憶は18年だもん。
この世界に来てなぜかいきなり老けただけで…。
あ、なんかまた悲しくなってきた…。
『それにしてもサーラ嬢ちゃんは凄いのぉ。不治の病と言われておったものを治すとは…』
遠い目をして、軽くトリップしてた私の耳にバルさんの声が響いてくる。
「そんなことないよ!私は何も凄くない…だって初めて会ったときに治し方を知ってれば、バルさんだって苦しむことなかったのに…」
反射的に口をついて出た言葉を噛み締める。
紛れもなく、今の私の気持ちそのものである言葉を。
だって私がもっと物を知ってれば…初めて会ったときにバルさんの病気を治せたはずだもん。
そうすれば体が動かせなくなるまでバルさんが苦しむことはなかった。
そんな事を考えていると、バルさんが笑った。
『フォッフォッフォッ!サーラ嬢ちゃん、それは違う。儂はもうすぐ死に逝く身じゃとあきらめておった。病を治す方法すら探さずにじゃ。愚かなのは儂じゃよ。何千年も生き、仲間が病で死んでいくのを見ても何もせんかった。サーラ嬢ちゃんは違うじゃろう?一度しか会ったことのない儂のために病を治す方法を探し出してくれた。それはなかなか出来んことじゃよ。』
「そうよ、サーラちゃん。そんな事を出来る人は少ないわ!サーラちゃんは誇っていいのよ?」
バルさんとサリアさんの励ますような…それでいて本当にそう思ってくれていると分かる言葉に胸が熱くなる。
そっか、私は私に出来ることをすればいいんだ。
いきなりこの世界に来てわからないことだらけだけど、始祖の記憶にばっかり頼らずに、私がしたいと思ったことをすればいい。
うん。なんか元気出てきた!
よし、今日は朝まで語り明かそう!
そう思って私がバッと顔を上げると、バルさんとサリアさんが目を見開いていた。
え!?何?どしたの?
ガリッバリッ!
(え?何の音?!…あ!もしかして!?)
『キューキュー!』
鳴き声が聞こえたのは幻聴じゃないよね?
うん。てことは…
ウエストポーチから飛び出してきた小さな影に私は恐る恐る視線を向けた。
そこで見たものは…
「え?大トカゲ?」
『ばかもん!それはドラゴンじゃ!』
ナイスツッコミです!バルさん!
って、そうじゃなくて!
「ええーー!!ドラゴン!?」
私が拾った卵からは真っ白なドラゴンが産まれました。
いや、魔物じゃなくてよかった、よかったんだけどさ…ドラゴンって…マジか…。




