親子?
サイラン国主都ルパナ。
この町では今、住民の視線を欲しいがままに集めている三人組が居た。
ハイエルフであり、この国の騎士団長でもあるユリクさん、吸血鬼でありナディア国第二王子の母サリアさん、そして私だ。
何も知らない人が見れば、微笑ましい家族だと思うだろう。
でもここはサイラン国主都、騎士団長の顔を知らない人は殆ど居ないと言っていい。
だから当然、色んな憶測が囁かれているわけで…
「あれ、ユリク様じゃないか?」
「結婚なさったのか?」
「子供までいるとは…」
はい、そこ、完全に聞こえてますよー。
そして私はこの二人の子供になった覚えは全くありません!
ユリクさんも満更でもない顔をしない!
サリアさん、微笑みは肯定と見なされるからやめてください。あなた他国の側妃でしょーが!
あーもう!何でこうなった!?
私が始祖だってバレた後、テンションが無駄に高いままのキラキラ王子の母、(後にサリアという名前だと判明)を放置して、呆然としているユリクさんにこの国へ来た目的をなんとか理解してもらった。
まぁ、だいぶ端折ったけどね。
どこまで話していいかわかんなかったし。
とまぁ、ここまでは順調だった訳だけど、サリアさんを確保しつつ、再起動を果たしたユリクさんに宿を紹介してもらうために歩き始めて気付いたんだよね…ユリクさんがこの町の有名人だって…。
だって町の至るところからワラワラと人が出てくるんだもん。
人混みが私達に道を空ける様は、モーゼの十戒みたいだった。
そんな事を考えているとユリクさんの足が急に止まる。
何事かと前を向いた私はフリーズした。
「着いたよ。ここでちょっと待っててくれないか?話を付けてくるから」
爽やかな笑顔でそう言い残して、走り去っていくユリクさんの後ろ姿を見ながら私は溜め息をつく。
いや、考え込んでて前を見てなかった私も悪いかもしれないけどさ…ここ、どう見ても城っぽいんだけど!
気のせい…だよね?
てか、話を付けてくるって誰によ!?
困惑することおよそ5分、ユリクさんが戻ってきましたよ。
隣にはユリクさんに良く似た男性が立っている。
(え?誰?ユリクさんにそっくりなんだけど…え?双子?)
そんな事を考えていると男性が口を開いた。
「ようこそサイラン国へ。私は国王のザリーク、ユリクの兄にあたる。歓迎するぞ。ナディア国の側妃に吸血鬼の始祖殿よ」
あー、そうなんですかぁー、お城に招かれるなんて素敵!……なんて思えるかーい!
あぁ、私が望む普通の生活がどんどん遠のいていく…。