何の卵?
イグスの町を出て3日ほど飛んでいると国境が見えてきた。
(やば!また旅券頼むの忘れた…)
仕方なく高度をあげる。
相当、目がよくなければ鳥かなんかと思ってくれるだろう。多分。
そう願うのみだ。捕まりたくないし。
よく考えたら、地球では考えられないことをしてるって思う。
だって国境を通らずに入国するって密入国だよ?
よくテレビとかで「船の中に紛れ込んで…」とかニュースになってたけど、私には無縁なことだって思ってたし。
さすがに空を飛んで…ってのはなかったけど。
てか、空飛んでたら密入国以前に大変な騒ぎになるだろうしな…。
と、割りとどうでもいいことを考えながら国境を無事抜けた私はゆっくり高度を下げる。
だってせっかくの空の旅だもん。
厄介事には巻き込まれたくないけど、地上の様子も見たい!
サイラン国は亜人種が多いって聞いたし、もしかしたら猫耳の可愛い女の子とか居るかもしれないし!
ミーナみたいなさ。
って思ってたんだけどね、国境を抜けた先にはひとっこ1人居なかったよ…。
(空から見た感じだと近くに村とか町とかなかったから当たり前か…。ガッカリ…。ん?あれ何?)
期待していた光景が見れずに項垂れる私の目の端に丸いボールのようなものがチラリと見えた。
(なんだろ…ボール?なわけないか。ちょっと降りてみよ)
好奇心でその場に降り立った私は、後悔した。
広い草原の中でポツンと落ちている?それは明らかにボールじゃないことがわかる。
「卵?何の?…っっ!!」
白とベージュが混じったようなまだら模様の卵は私の顔ほどに大きい。
何だろう?と思って触ろうとしたところで私は気付いたわけだ。
卵があるってことは、どっかに親が居るんじゃないか?って。
とりあえず、すぐさま距離をとる。
だって私の顔ぐらいある卵だよ?
ヒヨコが出てくるとは考え難い。
多分、大きな魔物とか未知の生物とか?そんな感じだろうと思ったからね。
30分経過…
うん。もうなんかさ、緊張してた私が言うのもなんだけど…親なんて居ないんじゃね?
親が30分も卵を放っておくなんて考えらんないよね?
もし居るなら、どんだけ放任主義なんだよ!って説教コース確定だ。言葉が通じる相手ならだけど。
だってここ、草原だよ?
これが山の頂上とかだったら話は別だけど、誰かが通りかかる可能性のある場所に放置って…あり得ないでしょ。
盗まれたり魔物に襲われたりするかもしれないのにさ。
それにしても…これどうしよう…。
私は目の前の卵を見て考える。
このまま放っておいて無事孵ることが出来るのか?と。
(魔物かもしれないけど…人じゃないとは言い切れないよね…)
問題はそこだ。
魔物の卵ならこのまま放っておくのが一番だと思う。
でも、ここはファンタジーの世界。
色んな種族がいることから、絶対に人じゃないとは言い切れない。
だって竜人族とか鳥人族の人とか見たことあるけど、どうやって子供産むかなんて知らないしね。
「ま、いっか。持っていこ。最悪、魔物だったら私が責任とればいい話だし」
人の体で、この大きさの卵を産むことは難しいだろうとわかっていながらも、目の前の命を見捨てる事が出来なかった私は大きな卵を抱え、僅かに脈動しているそれをウエストポーチにしまう。
私が救ったかも知れない命が人を害する魔物でないことを祈りながら。
なんとか熱も下がり、体がだいぶ楽になってきました。
調子に乗ってまた再発なんてことにはなりたくないので、ゆっくり休むことにします。
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風邪も治る…かも。
嘘です。すんません。