四人目の居場所
キラキラ王子とアイザックに腕をホールドされて連れてこられたのはジメジメした牢屋…ではなく、無駄にきらびやかな装飾のなされた部屋でした。
ポカーンと口を開けて絶句していると、何を勘違いしたのか、アイザックが微笑ましいといった表情で説明を始めた。
「驚きましたか?この部屋はカルロス殿下の自室ですよ。素晴らしい装飾でしょう?」
はぁ、それにビックリしてた訳じゃないんだけどね。
だって昔テレビで見たどっかの国の石油王かなんかの部屋のほうがもっと金ぴかだったし。
悪趣味だと思ったけど。
まぁ、何はともあれ牢屋コースは回避できたようだから、とりあえず頷いておこう。うん。
「おい、アイザック、その気持ち悪い話し方はやめろ!吸血鬼としてはハーフである俺より純血のお前のほうが上の立場だ。私には普通の話し方でいい。姿もな。」
「そう?ならそうさせてもらうよ。疲れるんだよね。この話し方。」
キラキラ王子の言葉でアイザックは元の姿に戻った。
何度見ても違和感が凄い。
二回しか見てないけど。
だって30才くらいの青年が一瞬で15才くらいの少年に変わるんだよ?
しかも姿かたちが全く違うんだもん。
共通点が美形ってとこしかないし。
それにしても…上下関係が逆転する主従ってややこしいな…。
そんなことを考えてると二対の視線が私を見ていることに気付く。
「なにか?」
そう尋ねると、待ってましたといわんばかりに凄い勢いで話しはじめましたよ。キラキラ王子が。
「サーラさん、私はあなたに出会って世界が変わりました。その身から滲み出る美しい気、いや、魔力とも言うんでしょうか?母上も美しい気を纏っておられましたが貴女はそれ以上!母上が今まで理想の女性だと思っていましたが…貴女は容易くそれを覆した。貴女こそ私の求めていた女性です!どうか私と婚姻してもらえませんか?」
「何を!サーラ様は僕の嫁です!いくら殿下であろうと譲れないね!大体…」
あー、またこのパターンね…。
ってか!おい!アイザック!誰が嫁じゃ!誰が!
もう突っ込む気も失せたわ。
勝手にやってください。
「喧しいわー!!」
いや、勝手にやってくれと思ってたけどね、思わず声が出てしまいましたよ。
だってもう一時間くらい言い合いしてるんだもん。
不敬罪?そんなの関係ないね。
マザコンVSロリコンの言い合いをここまで静観してた私の忍耐力を誉めてほしい。
怒りの叫びにビクリと肩を震わせ、静かになった二人を見て、私は満足気に本題を切り出した。
なんか二人とも怯えてるような気がするけど無視だ。
「キラキラ…じゃなかった、カルロス王子!」
「は、はい!」
「私は貴方のお母さんを探してるの。ここまではいい?」
「はい!」
「で、どこに居るか知りたいんだけど。」
「はい!母上は自由な性格でして、旅に出ております。つい先日サイラン国に着いたと魔導鏡で連絡があったので、今頃はサイラン国の主都ルブリに居ると思われます!」
「そう。ありがとう。じゃあ私行くから!」
「え?サーラさん…」
「サーラ様!」
「何?」
まだなにかあるのかと威圧付きで聞いてやりましたよ。
二人ともブンブンと首を横に振っている。
うん。なにもなくて何よりだ。
そんなことを考えながら私はキラキラ王子の部屋を後にした。
部屋から出るときに「恐ろしい」とか「怒らせてはダメだ」とか聞こえた気がしたけど、きっと私の気のせいだろう。