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幻影

「そろそろ行きましょうか?周りが少しうるさくなってきたので…」


困ったような顔でそんなことを言うアイザックさん。


(いや、それあんたのせいだから。)って思ったけど口には出しませんでしたよ。

だって相手は国で宰相をつとめる有名人。

見た目小娘にしか見えない私がそんなこと言ったら、ただでさえ騒がしいこの場が更に騒がしくなることは目に見えてたからね。

それに…女性から…特に若い女性からの視線が痛いんだよ。

何なの?あの小娘!キィーッ!といったところだろうか?

どうやら、このアイザックという宰相様は、女性に人気があるらしい。

まぁ、美形だし、物腰もやわらかそうだからね。

こんな子供に嫉妬しなくても…と思わなくもないけど。


そんな視線から逃れるために、私は差し出されたアイザックさんの手に、渋々自分の手をのせた。




あれから暫く歩いて、王城へ着き、今はアイザックさんの執務室のソファーに座っている。

王城に着いたときは、え?私やっぱり捕まるの?なんて思って羽根を出す準備までしてたんだけどね。

ひとまずそうならなくて安心した。

せっかく買った服破くの嫌だし。


「そろそろいいかな。疲れたし。」


そんなことを考えてると、アイザックさんがポツリと呟いた。

え?何が?って思って顔を上げると、知らない男の人が立ってましたよ!

さらさらの黒髪に幼さの残る顔立ち、そして銀色の瞳。

間違いなく吸血鬼であろう15才くらいに見える少年は、驚いている私を見て笑顔でこう言った。


「この姿でははじめましてかな。僕はアイザック・ローゼンバルド。始祖様に会えて嬉しいよ。」






「落ち着いた?」


そう私に聞く少年は、間違いなくアイザック・ローゼンバルド本人。

何故なら、「昨日ガリウスから魔導鏡で連絡を受けて…」とか言ってたからね。

名前を知ってたことも納得だよ。


なんでも、さっきまでの姿は、魔法で作り出した幻影らしい。

「さっきの姿じゃないと色々周りが煩くって…」って言ってたけど、そりゃそうだそう。

宰相が少年の姿とか、絶対締まらないよね。

まぁ、私は姿がどうとか関係ないし、同胞が見つかればそれでいいんだけど。

かなりビックリはしたけどさ。


「はぁ…じゃあとりあえずこれ飲んで?」


アイザック(本人の希望により敬語はなしになりました!)にキバで傷をつけた手首を差し出せば、すんなり飲んでくれた。

驚いた様子もないから、ガリウスさんから聞いてたのかもしれない。

よし、これで任務終了!後は他の同胞の場所を聞くだけ…って思ってた私は、アイザックの次の言葉で頭が真っ白になった。


「他の同胞は一人しか知らないけど…居場所はカルロス殿下に聞くのがいいと思うよ?殿下の母上だから。それよりもさ、ねぇ、僕の血も飲んでくれない?」


はい?

カルロス殿下とはキラキラ王子の事ですか?

それすなわち、まさかの牢屋フラグですか?

てか…僕の血も飲んでって…それ求婚ですよね?


「誰が飲むか!このロリコンがー!!」


私は頬を染めながらそんなことを言うアイザックに平手打ちをかまし、執務室から逃げ出した。



うん。逃げ出したんだけどね…迷子になりました。

だって王城って広いんだもん。

さっきからおんなじ場所をぐるぐる回ってる気がする。

そんな時、後ろから声を掛けられた。


「おねぇちゃん、だぁれ?」


振り向いた私は胸を撃ち抜かれたような衝撃を感じた。

柔らかそうなハニーブロンドの髪にくりっくりの緑色の瞳をした男の子が小首を傾げながら立っている。

なにこの子!めっちゃ可愛いんだけど!!


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