食事
ミーナと一緒に町を歩く。
私もミーナも歩幅が小さいから、さっきから全然進んでない気がするけど気にしなーい。
「サーラさん、何が食べたいですか?」
「うーん、私は何でもいいよ。ミーナの食べたいもので!」
私の言葉にうーん、と悩むミーナはやっぱりとても可愛らしい。
妹がいたらこんな感じなのかな?
それにしても…どんどん高級そうな店が並ぶほうへ来てる気がするんだけど大丈夫なんだろうか?
「サーラさん、ここで食べましょう!」
そう言って連れてこられたのは高級レストランだった。
え?冒険者ギルドの職員ってまさかの高給取りですか?
って訳ではなく、どうやらミーナは給料が出たばかりらしい。
「ここ、町でも話題の店なんです!一度来てみたかったんですよねー」と目を輝かせている。
まぁ、ミーナに払わせる気なんて更々ないけどね。
これでもBランク冒険者だ。
依頼で溜め込んだお金は結構あるんだから。
「じゃあ入ろうか?」
「はいっ!」
と意気込んでレストランへ入ったはいいものの、席が空いてませんでしたよ。
人気店なら仕方ないよね。
しょんぼりしてるミーナを慰めながら店を出ようとした時、「お客様、相席で宜しければとあちらのお客様が仰ってるんですが」って声を掛けられた。
ニコニコと営業スマイルを浮かべるボーイさんの視線の先には一人の男性。
四人がけのテーブル席で食事をとってるみたい。
「ミーナどうする?」って聞こうと思ったけど、どうやらその必要はないみたい。
猫耳がピンと立って、尻尾がゆらゆらしてる。
分かりやす過ぎるミーナの様子に苦笑しながら「じゃあそれでお願いします」って言った私の判断は間違っていなかったはずだ。
それがどうしてこうなった!?
席に案内されたところまでは良かったんですよ!
ミーナが男性に向かって「え!?宰相様!?」って言わなきゃね。
恐縮しきってるミーナに対しても驚いてる私に対しても、紳士的にリードして料理を頼んでくれる素晴らしい男性でした。
問題は…私がガン見されてることなんだけどね。笑顔で。
そりゃもう最初のスープから最後のデザートまでずっとですよ。
そんなに見られてたら味なんてわかんないっつーの!
「美味しかったです!ご馳走にまでなってしまってすみません」
ミーナが宰相にペコリと頭を下げる。
もちろん私も下げました。
味なんて全然わかんなかったけど、ご馳走になったのは事実だからね。
「いや、いいんだよ。楽しい時間を過ごさせてもらったからね」
いや、宰相さん、そんなこと私を見て言われても意味がわかんないんですけど…。
「じゃあまた会おう」って握手を求められて手を伸ばしたとき、手のひらにカサリという感触が伝わった。
不思議に思って手を開くとメモが握らされていた。
『明朝9時、冒険者ギルドの前までお迎えにあがります 。アイザック・ローゼンバルド』
!!!
え!?まさかの三人目!?
でも…宰相さんの髪は銀色で瞳は水色だったよ?
だからガリウスさんの情報は間違ってたんだと思い込んでたのに!
「宰相様、かっこよかったですねー!サーラさん?どうかしたんですか?」
「あーうん。ソウデスネー」
ミーナ、ごめん。今の私の頭の中は??マークで一杯です。