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ドラゴン

考えろ!考えるんだ私!

敵?味方?

あー、わかんない。

攻撃しちゃっていいかな?


はい。テンパりすぎててごめんなさい。

サーラです。

今、私は思いがけず人生の岐路に立たされております。

目の前には片目を開けて私をロックオンしていると思われるドラゴン。


何でこうなった!?


いや、キラキラ王子から逃げ出した私はさっきまで何事もなく空の旅を満喫してたわけですよ。

鼻歌まで歌いながらさ。

だけど調子のって飛んでたら、いつの間にか夜になってたわけ。

さすがに早朝からほとんど飛びっぱなしなわけだし、どこかでちょっと休もうと思ったら丁度良く洞窟っぽいのが見えたんだよね。

やったー!寝床ゲットー!って思いながら急下降して、洞窟内に入ったのは良かったんだけどさ。

そこには先客が居たわけで…。



もうパニックだよ!

私の背丈と同じくらいの顔があるんだもん。

しかもドラゴンだよ、ファンタジーな世界だからいるのかなーなんて思ってたけど、こんなタイミングで会うことになるなんて…。


大体私、ドラゴンが敵か味方かなんて知らないし。

日本に居たときにファンタジー小説とか読んでたけどさ、ドラゴンって賛否両論じゃん?

あー、こんなことならアンディにでも聞いておくんだった…。

どうやら、始祖の記憶とやらも、そんなに上手いことよみがえってくれる訳ではないようで…。

片目を開けているドラゴンと私の睨めっこは続いてるわけなんだけど。


(はぁ、失礼しましたって言って許してくれるかな?明らかに私がねぐらに勝手に入った侵入者なのは間違いないよね…)


そんなことを考えてるとドラゴンから声が聞こえてきた。

聞こえてきたってより頭に響いてきたってほうが正しいけど。

え!?ドラゴンって話せるの?


『吸血鬼か。それにしては気が大き過ぎる気がするが。ここへ来たのは儂を殺すためか?』


なんか物騒な言葉が出てきましたよー。

驚きながらも、私は否定の意味を込めて首をフルフルと振る。


『そうか。楽になれるかと思ったんじゃがの。ならばどうしてここへ来た?ここは結界で外からは見えないようになっておる。何か目的があったのではないか?』


は?結界?

いや、普通に洞窟が見えたから寝ようと思って来ただけなんだけどなー。

何か色々誤解されてる気がする。

これは誤解を解いておかねば!


「あの、ドラゴンさん、私は飛び疲れたからちょっと休もうと思った時に洞窟が見えたからここに来ただけですよ?といぅか、普通に見えましたし?目的は…あるとすれば寝ることですかね。」


『……』


うーん、何か間違えたかな?

ドラゴンさんは両目を開けちゃったよ。さっきまで片目だけだったのに。

これってピンチ?


「あのー、ドラゴンさん?私はもう出ていきますから。お邪魔してごめんなさい」


ペコリと頭を下げて洞窟を出ていこうとすると、ドラゴンさんはいきなり笑いだした。

え?何事?

ポカーンとする私を見て、目を細めたドラゴンさんはとんでもないことを言い出しましたよ。


『あー、面白い!長生きはするものじゃのう。まさか儂の結界をこうも容易く破るものが現れるとは。しかも寝るためじゃと?フォッフォッフォッ!存分に体を休めていけ。儂とおしゃべりでもしようぞ』


いやいや、どこに笑える要素があったのかもわかんないし。

しかも存分に体を休めていけってことはドラゴンさんと一緒に寝るってことだよね?

無理無理無理!口開けたらパクっといかれそうだもん!体格差ありすぎだし!

まぁ、何となくそんなことはしなさそうだって確信っぽいのは感じてるけど。

そういえばアンディも私を殺せるほどの魔物なんて殆ど居ないって言ってたし…そこにドラゴンが入っていないかはわかんないけど。

いや、そもそもドラゴンって魔物に分類されるのか?

まぁ、いっか。体も考えるのも疲れたし。

保護膜掛けて寝れば大丈夫だろう。


「はぁ、じゃあお言葉に甘えて。食べないでくださいね?」


一応、釘はさしておく。

その言葉にまた笑いだしたドラゴンさんは何か楽しそうだった。



結論。

食べられませんでした。

食べるそぶりさえ見せませんでした。


それどころか、すっごく紳士的だった。

話も面白いし、為になるしで最高だったよ。

アンディの知識なんて目じゃないくらい!

楽しすぎて話し込んじゃったお陰で寝不足気味ではあるけどね。

でも…もうすぐ死んじゃうんだって。

「寿命ですか?」って聞いたら病気だって言ってた。

なんでもドラゴンだけがかかる病気で段々体が麻痺して動かなくなってくらしい。

だからもう洞窟にしかいられないんだって、空を飛べるのが羨ましいって、そう言ってた。


それを聞いて何か私にできることがあるんじゃないか?って思った。

だって始祖の記憶が訴えかけてくるんだもん。

『血を…』って。


だから私は手首にキバを立てて血をなめてってドラゴンさんに言ったの。

ドラゴンさんは目を見開いてビックリしてたみたいだったけど『死に逝く身じゃ、吸血鬼の血を飲むのも一興かも知れんの』って躊躇いなく私の血を舐めた。


『体が軽くなった』とは言ってたけど、あんまり変化がないように見える。

私、間違えちゃったのかな?

『また遊びにおいで』って送り出して貰ったけど、私は何だかもやもやした気持ちで空へ飛び立った。

必ずまたここへ来ようって思いながら。











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