旅立ち
「壮観じゃー!やっほーい!」
私は今上空から帝国の主都を見下ろしている。
そう、上空から!
いきなりで飛べるかな?なんて考えてたのがバカみたいに普通に飛べた。
これも始祖の記憶ってやつかもしれない。
昨日は、あれから部屋に誰も入れないように念じながら魔法をかけて着々と旅立ちの準備を整えてましたよ。
あ、買い物も行った。
どれだけ物を入れても、重さが変わらないっていうドラ○もんの四次元ポケットみたいな魔道具と洋服を買いに!
私は便利バッグって命名したんだけど、これがもう凄いのなんのって!
大きさも重さも変わらないのに、物がバンバン入る!
リュックタイプとウエストポーチタイプがあったんだけど、ウエストポーチタイプを購入した。
リュック背負ってたら飛べないからね。
洋服は仕事帰りにちょこちょこ買ってたんだけど、どうせだからって新調した。
アンディからプレゼントされたヒラヒラドレスや靴なんかじゃ絶対飛べないし。
買ったのは、麻のシャツとベージュのキュロット。
シャツの方は、持って帰ってから、羽根の場所に切り目入れてチクチク裁縫したけどね。
毎回これしなきゃいけないのかと思うとちょっと憂鬱。
それから備えとして食料とかも買ったけど、必要なかったかもしれない。
なんかアンディの血を飲んでからお腹が空かないんだよね。
かなり燃費のいい身体になったっぽい。
とまぁ、昨日の行動を振り返りながらも、私はぐんぐん進行中だ。
なんか遠足気分なのは否めないけど。
高度を上げると、来たときにはあんなに大きく感じた帝国がミニチュア模型みたいでなんか不思議。
(さて、そろそろスピードあげて行きますか!)
飛ぶ感覚を堪能し終えた私は帝国に背を向け、スピードを上げた。
目指すはナディア国と帝国の国境だ。
暫く飛んでいると、何か下が騒がしいことに気付く。
(ん?何だろう…んー、ここからじゃ豆粒みたいにしか見えないなぁ。ちょっと高度下げますか!)
ぐんぐん高度を下げて近付いていくと、戦ってるっぽい現場が見えた。
しかも戦ってる片方は、どう見てもいい人そうには見えない。
むしろ悪人にしか見えない。
(盗賊?が馬車を襲ってるって感じかな。うーん、あんまり目立ちたくないんだけど…明らかに馬車を庇ってる方が押されてるんだよね…このまま通り過ぎるのもなんか後味悪いし‥…助けるか!)
そうと決めた私の行動は早かった。
地上へ降りて魔法を使う。
(馬車と馬車を護ってる人達に保護膜!)
私がそう念じれば、推定盗賊達が焦りだす。
そりゃそうだよね。
攻撃が全く通らなくなったんだから。
そんなことを考えていると、どうやらその場の全員が私の存在に気付いたらしい。
(いまさらかよ…)
「おい!そこのチビ!何しやがった!!」
盗賊Aが聞き捨てならない言葉を吐きやがりましたよ。
とりあえずムカついたから悪人決定!
雷を落としてやりました。
「おい!チビ!てめぇ、仲間に何しやがった!」
「許さねぇぞ、チビ!」
「おい!お前らこのチビやっちまえ!」
盗賊B、C、Dが何か吠えてるけどシカトですよ。
聞き流すってスキルはアンディで鍛え上げられたからね。
それにしても聞き流せない単語が連続で聞こえてくる。
ついに私の堪忍袋の緒が切れた。
「うるさい!チビって言うなぁ!」
私の叫びと同時に雷が落ちる。
B、C、Dは静かになった。感電して。
「私だってチビになりたくてなった訳じゃないんだよ!はぁ、気分わる!さっさと退散しよ。」
羽根を広げて空に飛び立とうとすると「お待ちください!」と後ろから呼ばれた。
反射的に振り向いた私が見たのはキラキラしたオーラを放つ男性。
多分、馬車に乗ってた人だろう。
「危ないところを助けていただきありがとうございました。私はナディア国第二王子のカルロスと言います。貴女のお名前をお訊きしても?」
あー、なんか面倒事フラグ立ったっぽい。