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吸血鬼

吸血行為があります。

お気をつけ下さい。

魔法の説明をした後、結局夜まで居座って夕食まで一緒にとったアンディは大量のプレゼントを置いて帰っていった。


プレゼントの中身はヒラヒラドレスや靴、下着、そして宝石がついたアクセサリー。


いや、私もこんなもの貰えない!って突き返そうとしたんだよ?

そしたら「じゃあ捨てましょう。サーラ様以外にプレゼントする気はありませんから。」って言うんだもん。

目が本気だったし、受けとるしかないよね。

それにしても、どうやってサイズがわかったんだろう…。

着てみたドレスも靴もピッタリだった。

下着も。

ああ!考えただけで寒気が…。


ってほんとに寒気がしてきたよ。

何だか頭もボーッとするし…

あ、セバスさんが焦った顔で駆け寄ってくる…


そこでプツリと糸が切れたように、私はそのまま意識を失った。






「サーラ様!サーラ様!しっかりしてください!」


焦ったようなアンディの声で目が覚める。

私が目を開けると、アンディはホッとした顔でそのまま床に崩れ落ちた。


「え?アンディ?どうしたの?」


「よかった…本当に良かったです。セバスからサーラ様が倒れたと連絡があってから今の今まで生きた心地がしませんでした。」


「いや、そんな大袈裟な。多分風邪だよ。寝てれば治るって。」


そう言った私にアンディは真剣な顔で首を横に振った。


「サーラ様、吸血鬼は病気にはかかりません。サーラ様のお身体の症状は寒気と頭がボーッとするものじゃありませんか?」


「…そうだけど…それがどうかしたの?」


「やはり、そうですか。私がしっかりサーラ様の様子を見ていなかったばかりに…申し訳ありません」


え?何事?

セバスさんまで頭を下げてるんだけど…


「サーラ様、よく聞いてください。サーラ様は吸血鬼です。血を飲まなければ生きていけません。」


え?

アンディは何を言ってるの?

血を飲まなければ生きていけないって…私が?

だって今まで普通に動けてたし、普通の食事だってしてたのに…。

目の前が真っ暗になった。

生きたいとは思うけど、人の生き血を啜ってまで生き延びたくなんかない!


「嫌だ!嫌だよ!人の…血を飲んでまで生きたくない!」


「サーラ様…」


アンディの目にうつる今の私は駄々をこねる子供のように見えてるのかもしれない。

でも嫌なんだもん。そんなこと。


「サーラ様、お願いでございます。どうか、どうか私の血をお飲みください。」


「え?やだ、何言ってんの?アンディ」


「わたくしたち吸血鬼はあなた様を失うわけにはいかないのです。あなた様がお亡くなりになれば吸血鬼は私達の代で絶滅します。」


絶滅って…。

この世界から吸血鬼が居なくなるってこと…だよね。

そう考えたら、私の中の何かがそれを強く拒んだ。

あー、もう意味がわかんない。

何もかも。

でも私が死んじゃいけない事はわかる。

これが始祖としての気持ちなのか、自分の気持ちなのか、はたまた世界の意思なのかはわかんないけど。

まぁいいや。腹をくくろう。


「わかった。飲むよ。」


「サーラ様…」


そんな嬉しそうな顔されたら飲むしかないじゃん。


「飲むからアンディ、腕出して。」


「腕…でございますか?首の方が宜しいかと思いますが…」


「じゃあ首でいいよ。」


「はい。ありがたき幸せ。」


何が幸せなのか私にはよくわかんなかったけど、差し出されたアンディの首筋に小さなキバをたてる。

プツリと皮膚を破る音が聞こえたと思ったら、私の口の中に極上のワインのような味わいが広がった。

ワイン飲んだことないけど。

とにかく体に力がみなぎってくるのがわかる。

不思議な感覚。

でもどこか懐かしいような…。


「さ、サーラ様!そろそろ…」


「あ、ごめん。飲みすぎちゃった?」


どうやら夢中で飲んでいたらしい。

危うくアンディを失血死させちゃうとこだったよ。

危ない危ない。

変態でロリコンのアンディでも死んでほしくはないからね。


顔が青白くなってしまったアンディに私は自分の腕にキバをたてて皮膚を破り、ズイッと腕を差し出す。


「飲みすぎちゃったみたいだから。少し飲めば?」


あれ?なんか間違えた?

アンディとセバスさんが目を丸くしてるんだけど。


「え?いらなかった?ごめん。」


引っ込めようとすると、ガシッとアンディに腕をつかまれる。

なんか二人とも涙ぐんでる様な気がするんだけど…気のせいだよね?


「サーラ様!このアンディ・コールセン、人生最大の歓びでございます!失礼いたします。」


「アンディ様、ほんにようございました!」


私の腕に口をつけ血を飲むアンディ。

それを涙ぐみながら見ているセバスさん。

うん。やっぱりなんか間違えたっぽい!



その後、キラキラ笑顔のアンディから聞いた話によると、アンディは吸血鬼の両親から産まれた所謂『純血』と呼ばれる吸血鬼らしい。

なんでも、純血の吸血鬼の血は100年ほど効果があるらしく、私が次に血を飲まなきゃいけなくなるのは100年後なんだって。

とりあえず、夜な夜な血を求めてさまよう…なんてことにならないみたいで安心した。


それで何で私が腕を差し出したときに驚いた顔をしてたかというと…血を飲み合うのは求愛行為なんだって。

つまり、私はアンディの愛を受け止めますって意味らしい。

いやいや、知らなかったし、これ、ノーカウント!!

無理無理!ぜったーい無理だから!


二人で喜び合ってるアンディとセバスさんには悪いんだけど…血って返して貰えないよね…?

ああ、この先の人生が不安だ。

とてつもなく…




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