アンディ先生の魔法講座?
初依頼から5日間、それはもう頑張って、晴れの日にも負けず、もくもくと依頼をこなしましたとも。
全てはお金のため!
身寄りのない見た目子供の私が生活するには必要なのです!
とまあ、日本での貧乏生活で養われた、その不屈の精神のお陰で冒険者ランクは着々と上がり、今やBランク。
一人前の冒険者の仲間入りを果たしたわけです。
なんかランクが上がる度に「異例なことですが」って言われ続けたけど、もうギルド職員の口癖なんじゃないかなって思ってる。
本当のところはどうかわかんないけど。
まぁ、程ほどに充実した毎日を送っていた私ですが、今日は悲しいお知らせがあります。
ついに‥…ついにこの日がきてしまったのであります。
変態ロリコンことアンディから魔法の使い方を教わる日が!
という現実逃避はこの辺にして、今、私はアンディと向かい合って座ってます。
場所は、今や私の棲み家と化したアンディの別邸の応接室。
アンディは私を見て蕩けるような笑顔を浮かべてるけど、私は何故か鳥肌が止まらない。
絶世の美青年なんて呼ばれてるアンディは確かに整った顔をしている。
私と同じ色の瞳は少し切れ長で、スッと通った鼻筋に少し薄い唇。
そして肩下までの流れるような黒髪。
しかも帝国魔術師団長という肩書きも相まって、この国にとどまらず、他の国にもファンがいるらしい。
仲良くなった市場のおばちゃんの話だから、どこまでほんとかわかんないけど、ギルド職員のお姉さんもそんなようなことを言ってたから本当の事なんだろう。多分。
だがしかーし!
いきなり跪かれて手の甲とはいえキスをされた私からしてみれば、いくら美形であろうが人気があろうが、ただの変態ロリコンである。
だって私を見る目が恐いもん。
なんか凄いうっとりしながら見るんだよ?
見た目20代半ばぐらいの男が、見た目子供の私を。
もう、恐怖以外のなにものでもないっつーの!
それでも、住居を提供してもらってるし、本当に私のことを心配してくれてるみたいだから、こうして会ってるわけだけどさ。
吸血鬼について聞きたいこともあるしね。
羽根の使い方とか。
だって飛べるもんなら飛んでみたいし。
「サーラ様、この屋敷の住み心地はいかがですか?」
はっ!完全に脳がトリップしてた!
アンディの声で現実に引き戻されたよ。
「うん。快適。ありがとね。」
「いえ、サーラ様の為でしたらこれくらい。ところで今日は魔法の使い方をお教えするという約束ですが、覚えていらっしゃいますか?」
覚えてるさ。覚えてますとも。
忘れたかったけど。
「サーラ様?」
「うん。覚えてる。でも魔法使えるよ?想像すれば。」
私の言葉に驚きを隠せない様子のアンディ。
「まさかそれまでとは…」とか「いや、始祖様ならありえる…」とかブツブツ言ってるけど放置していいかな?
ってか、私が始祖だってアンディに言ったっけ?
「ねぇ、アンディ、私が始祖だってなんで知ってるの?」
「はっ!私としたことが少し驚いてしまいましてすみません。えーっとサーラ様か始祖様だということを何故知っているのか?でしたね。それはわかって当然の事なのです。同族は始祖様を待ち望んでおりましたし、何よりも私の身体を流れる吸血鬼としての血が教えてくれました。」
うん。全くわからん。
待ち望んでおりましたって言われても…私、なんでこの世界に来たのかすらわかんないからね。
「ふーん、まぁ、いいや。ところで魔法の練習って何するの?」
「それなんですが…まさか既に無詠唱で魔法を使えるとは思っておらず…」
「つまり、やることはないってこと?じゃあ私、仕事行っていい?」
「それはダメでございます。約束ですから。一週間に一度は私と会うという」
いや、ちょっと待て!
私は魔法の使い方を教わる為に一週間に一度はアンディに会うって約束をしただけであって、ただ仲良くお茶飲む為に会う約束をしたわけじゃないんだけど!
「はぁ…まぁいいや。じゃあ何するの?」
「ではまず魔法の説明からいたしましょう。」
一時間が経過。
「ということです。ご理解頂けたでしょうか?」
はー、長かった。
朝礼での校長先生の話より長かったよ。
でも、わかったことは沢山あった。
つまり、魔法は、基本、詠唱が必要である。
それをすっ飛ばしてるのが私ってこと。
次に、魔法を使うには魔力が必要である。
ギルドの登録のときに測定不能だったやつね。
次に、魔力が完全に枯渇すると死ぬ。
うん。怖いね。けど、測定不能レベルの魔力が枯渇する状況って多分ないよね。
次に、言葉を使って魔法を使う重要性。
これは耳が痛かった。
何故なら、「想像してる間に攻撃をされることもあります。そのためには魔法に名前をつけて言葉を発するだけて発動するようにしておく必要があります」と言われたから。
確かにそうだよね。
想像してる間に攻撃されたら魔法使う暇もなく、死んじゃうかもしれないからね。
「それに関してはこれから経験を積んで一つ一つ名前をつけていくしかないでしょう。でもまぁ、吸血鬼を死に追いやる事の出来る魔物などそうそうおりませんが…ましてや始祖たるサーラ様ともなれば尚更。」
うん。そうだね。
経験は大事だよね。私に圧倒的に足りないものだからね。
って…待て!私、何と戦わなきゃいけないの?
衣食住が保証される程度のお金が稼げればいいんだけど!!
スライム踏んづけるだけでも充分お金稼げるんだけどー!!