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初仕事ですよ

天気はどんより。

気分は最高!

おはようございます、サーラです。


いやぁ、今にも雨が降りそうな外の景色を見て、こんなに嬉しい気持ちになるなんて日が来るとは思わなかったよ。

人生って何があるかわからないね。



ちょっぴり昨日、変態ロリコンことアンディから教えてもらった魔法を使ってみたかったってのはあるけど。

とまぁ、回想はこの辺にして、私は今日大切なミッションをこなさなきゃならない。


そう!冒険者ギルドでの初依頼だ!

今のところ、お金の心配はしなくても大丈夫だけど、いつあの変態ロリコンアンディに飽きられて放り出されるかもわかんないからね。

お金はあるに越したことはない。

大体、あの変態は久々に会う同族が珍しくて、執着してるだけのような気がするし。



ということでベッドから起き上がった私は、この屋敷の玄関ホールへと向かう。

もちろんギルドへ行くためなんだけど、そこには執事のセバスさんが笑顔で立っていた。


「おはようございます、サーラお嬢様。昨日はよく眠れましたでしょうか?」


「はい。お陰さまでぐっすり。」


あー、朝からセバスさんの笑顔はなんかなごむわー。マイナスイオンでも放出してるんじゃないだろうか?

ほっこりした気分で受け答えしていた私にセバスさんの言葉が衝撃を与えた。


「それはようございました。湯あみの用意が出来ておりますが、いかがなさいますか?」


!!!湯あみ!!

もしかしなくてもそれってお風呂って事だよね?

この世界に来てから今まで、体を拭くことしか出来なかった身としては是非ともお風呂に入りたい!

私はその提案に飛びついた。


「はい!入りたいです!是非!」


私の勢いある返事を聞いて、セバスさんは笑みを深めた。



それから約一時間後。

ビバお風呂!

いやぁ、いい湯でございました。

心が洗われるね。

これで更にいい気分で依頼を受けられそうだ。

ちょっと予定より出発が遅くなっちゃったけど、そんなことはお風呂の前では些細なことでしかない。

私はルンルン気分で屋敷を後にし、ギルドへと向かったのだった。



昨日ぶりの冒険者ギルドは天気のせいか、昨日よりも人が少ない感じがする。

そんなことは大して気にも止めず、私は壁に貼り出されている依頼書を見上げた。

そう。見上げなきゃいけないのだ。

あぁ、もうこの小さな体がうらめしい。

でも慣れるしかないんだよね。


(どれどれ?えーっとランクEの依頼書は…っと。)


人が少ないお陰ですんなりと依頼書を見れた。

その中で候補は三枚。


*ククリ草の採取。

*スライムの討伐。

*ゴブリンの討伐。


一応Dランクまでの依頼は受けられるらしいけど、初依頼だからまずは様子見として大人しくEランクの依頼にしとこう。


(うーん、ククリ草って何かわかんないし、スライムかゴブリンかなぁ…ゴブリンってファンタジー定番の人型魔物だよねぇ…人型はハードル高いかな。よし!スライムにしよ!)


依頼書を剥がし、受付へ急ぐ。

時は金なりだからね。


「すみませーん、この依頼受けたいんですけど」


「はいはい、この依頼ですね。カードをお願いします…はい。受理しました。スライムはこの辺りの草原に出没する魔物です。討伐証明部位として核をお持ち帰りください。一匹につき銅貨5枚の報酬になります。それでは行ってらっしゃい。」


「はーい、行ってきまーす」


意気揚々とギルドを出る。

聞きたかったことは受付のお姉さんが全部教えてくれたので、後はスライムを見つけて倒すだけだ。

それにしても一匹につき銅貨5枚とは世知辛い世の中だ。


降りだした雨に打たれながら、(保護膜張ってるから濡れてないけど)草原に着くと、そこはスライム祭りだった。


(なんかぷよ○よ思い出すなぁ…)


所狭しとひしめき合っている様子はなんともシュールな光景である。


(そういえばお姉さんが核を持ってこいって言ってたっけ?)


よく見るとスライムの体の真ん中に光る石のようなものが見えた。


(あれが核?まぁ、とりあえず討伐しますか!っていっても魔法はなに使えばいいかわかんないし…とりあえず踏んでみよう!)


そう考えた私は体を覆っている保護膜を念のため3重にし、近くにいたスライムを踏んでみる。

すると、踏まれたスライムは核?を残して消滅した。


(え?倒した?ってか、弱っ!!魔物としての威厳はどうした!まぁいいや。どんどん踏み潰そう。)


手応えが無さすぎて拍子抜けしたが、これもお金のためだと思い直す。

どんどん踏み潰したことにより、草原に居るスライムは一時間を過ぎた頃には数えるほどになり、最後のスライムを踏み潰した後の草原には核と思われる光る石が散乱していた。


(はぁー、なんかどっと疲れた。精神的に。魔物を踏んで倒すって‥.あー、しかもこれ拾うのかぁ…魔法で集めらんないかなぁ…えーっとこの辺一帯の風を集めるイメージでっと。あ、出来た!)


シュルシュルと核である光る石が、私の足元に集まってくる様子は元がスライムだと思わなければかなり美しい光景だ。

まぁ、踏み潰した本人である私からすれば何とも言い難い光景だけどね。


とりあえず集まった核をセバスさんが用意してくれた麻袋に詰め込んだ私は、もうここに用はないとばかりに草原を後にして、ギルドへ急ぐ。

麻袋を持たせてくれたセバスさんに、心の中でお礼を言いながら。



麻袋を引きずりながらもギルドへ到着した私は真っ直ぐに受付へと向かった。

依頼達成の報告をしなきゃいけないからね。

それにしても重い。何匹くらい踏み潰したんだろ?


「すみませーん、依頼終わったんですけど…あ、昨日の…」


受付には昨日、私の登録をしてくれたお姉さんが座っていた。

私を見た途端、顔がひきつったような気がするけど…


「は、はい。カードをお願いします。えー、スライムの討伐ですね。お疲れさまでした。」


あからさまにスライムというところでホッとした表情を浮かべるお姉さん。

私はなんだと思われてるんだろう?

一度ちゃんと話し合う必要がありそうだ。


「はい、それで核?なんですけど、これです。」


ドスンと受付カウンターへ麻袋を置く。

私の行動に不思議そうな顔をして麻袋の中身を確認したお姉さんが完全に停止した。


「し、少々お待ちいただけますか?これだけの数ですと数えるのに時間が掛かりますので…」


うん。無事再起動してくれて何よりだ。

まだ顔はひきつってるけど…スライムが嫌いなのかな?


「はい、わかりましたー」


私がそう答えると、お姉さんは凄い勢いでギルドの奥へと走っていった。麻袋を抱えて。

数えるのに時間がかかるのはしょうがない。

待ちますとも。

報酬のためですからね。


それから20分後、なんか疲れた顔をしたお姉さんが戻ってきた。


「サーラさん、スライムの討伐お疲れさまでした。核を確認したところ、全部で238体の討伐となります。報酬は1190銅貨、つまり、大金貨1枚と金貨1枚銀貨9枚になります。お確かめください。それで極めて異例なことですが、サーラさんのギルドランクがDランクに上がりました。おめでとうございます。」


「はぁ、ありがとうございます?」


どうやらランクが上がったらしい。

異例だって事だけど、私なんかしたっけ?ま、いいか。


「あと、差し支えなければどうやって大量のスライムを討伐したのか教えていただけないでしょうか?」


「あ、踏み潰しました。」


「は?踏み潰した?」


「はい。」


「そ、そうですか。お教えいただきありがとうございました。ではまたのお越しをお待ちしておりましゅ」


あ、また噛んだ。

どこか具合が悪いんじゃないだろうか?

顔色も良くないみたいだし。

私はギルドのお姉さんの心配をしながら家路を急いだ。

初報酬を小さな手に握りしめて。














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