プロローグ
斉雅行典:『YUMI』の研究の第一人者。研究者としてかなりの実績をもつ。
駿河今日子:『YUMI』の開発部のメンバー。少し乱暴で、よくものを壊す。
鳥谷悠介:『YUMI』の開発部のメンバー。なんでもきっちりしているが、抜けているところも多い。
完成した。ついにやった。俺はやったんだ。
「う~ん………。」
待ちに待ったこの日がやっと来た。今度こそ俺は世界を救う勇者になれる。
「………うぅ………眩しい………。」
今日という日はきっと歴史に残る人類にとって最高の一日となるだろう。そして俺はその偉業の第一人者。俺は今まで誰にも出来なかったことを成し遂げたのだ。
「………あなたが…………ご主人………様………?」
おっといけない。まだプログラミングの途中だった。
「そうだよ。名前はプログラムされているはずだ。言ってみろ。」
「はい。………さいが………ゆきのり様………」
「よし。いいこだ。」
記憶装置との連携は一応丸っと。
んじゃ次は………。
「よし。じゃあ立ってみろ。」
「はい。」
ふむふむ。
「よろしかったでしょうか。」
「うん。オーケーオーケー。」
機械音極小っと。あと興味関心もみられたな。
「じゃあ次は別室だから。ついてきて。」
「はい。」
よしよし。歩行もオーケーと。
「やあ行典!」
「げっ!」
しまった。厄介な奴に出会ってしまった。
「おぉーっ! ついに出来たのか! いやーよくやったよ行典! プログラミングの途中か?」
「あ、ああそうだよ。」
「そっか。じゃあ邪魔しちゃ悪いな! 終わったらみんなのとこ連れてこいよな!」
………ふぅ。何とか助かったな。またどこか壊されたらどうしようかと………。
「今のお方は?」
うぅん………あまり教えたくないが………。
「駿河今日子っていうんだ。俺と同じ研究者の一人。言っとくけど、あいつには近付かないほうがいいぞ。」
「なぜですか?」
「後にわかる。」
「はぁ。」
とか言ってる間に目的の部屋に到着。
「ここで何をするのですか?」
「まぁ簡単に言うと、能力テストだな。とりあえずそこの真ん中に立って。」
そして俺は別室へ移動する。
「今からお前の戦闘能力を調査する。」
「戦闘能力………ですか………?」
「あぁそうだ。今からお前のいる部屋に何体かの試験用エネミーを投入する。そいつらを今お前が持ってる武器………たとえば、その太ももについているレーザー銃だとか、腕に内蔵してあるダガーだとかで、倒すことができれば、今日のところはオーケーだな。」
「できなければ?」
「お前が食われておしまいだ。」
「了解しました。」
よし。じゃあエネミー投入っと。
「やぁぁっ!」
おお。動きが速い。それにプログラミングしたエネミーの弱点を的確についている。もう三体も………。こりゃすげぇや。
「ようし。十分たったな。おしまいだ。」
「はぁはぁ………はぁ………。どうでしたか?」
「最高だよ。今後の活躍に期待だね。」
一応これで試験は終了だな………。
「おしまいですか?」
「ああ。そうだ。もう眠ってもいいんだが、どうしたい?」
「今日子様のところへ行かなくてよろしいのですか?」
あぁそうだったそうだった。
「じゃあいこうか。」
数ヶ月後
「行典! 今日子と話しすぎじゃない!? ちょっとは私にかまってよ!」
「いや………あたしはそういうつもりは………。」
「仕事のことで話してんだよ! 変な勘違いしてんじゃねぇ!」
「むぅ………。いつになったら遊んでくれるの?」
「仕事が全部片付くまでだ。」
「えぇー!? そんなの待ちきれないよぉ!」
「いいからお前は自分の部屋に戻ってろ!」
「………はぁい………。」
ったくいつの間にあんなにうるさくなったんだ………。
「プログラミング間違ったのか?」
駿河が結構真剣な顔で聞いてくる。
「そんなはずないんだが………。」
「この場合、媒体となった人間の影響があるかと。」
「わぁっ! びっくりした!」
いつの間におれの後ろに………。
「悠介おかえりー。アイス買ってきた?」
「ええ。こちらでよろしかったでしょうか?」
「おーありがとー!」
仕事しろよ。
「悠介。俺の分は………。」
「何もおっしゃられなかったので。」
………死ねよ………。
「そんなことより行典さん。サイボーグ研究、最終検査終了おめでとうございます。もう軍の方々は早速『YUMI』に注目しているみたいですよ。」
「あぁ。ありがたい話だ。」
「でもそうなったら離れ離れになっちゃうよ。」
「せいせいするな。」
「やっぱりか………。」
なんてったって『YUMI』は軍事ように開発した兵器でもあるのだからな。軍に行くのがさだめってやつだよ。
「エネミーも最近増えてますからね。少しでも役に立てればと思うのですが。」
「あぁ。」
二百年前に落ちた巨大隕石群『天罰の雨』。それにより襲来した地球外生命体。今地球はそいつらによって脅かされようとしているのだ。俺はそんな事実のためではなく、ただの興味本位であのサイボーグを開発した。
「実の妹を手放すんだよ? ほんとにいいの?」
「それは媒体の話だ。ユミとは関係ない。俺はもう気持ちははっきりしているって言ったろ? それとこれとは関係ない。」
「でも………。」
「しつこいですね今日子さん。本人がそう言ってるのです。もう放っておいてやってください。」
「なんかえらそうなのがむかつくな。」
それに、サイボーグを作ると決めたのも俺自身なんだ。だからそれなりの決意はしているつもりだしこうなることだって最初からわかっていた。
「ま、活躍してくれれば、こっちとしたら最高の開発者孝行なんだけどね。」
駿河が遠くを見る目で言う。
「我々はそれを期待するほかないでしょう。」
「あぁ。そうだな。」
『YUMI』が軍に配属されたのはそれから三週間後のことだった。涙のお別れ………となっていたのは駿河だけだったが、向こうは向こうで察していたようで、特に驚きもせず、淡々と別れの言葉を口にし、去っていった。




