五十三話
「はーなーれーろー。」
「無理だってば。」
今、私たちは電車の中で……ある意味密着している状態である。
いやらしい意味ではなく電車が思いのほか混んでいて多少くっつくのはしかたがない。
だけどこいつはくっつくのレベルを超えている。民事訴訟を起こしたいくらいだ。
「そんなにくっつかなくてもいいだろう。まだスペースがあるぞ。」
「他にも人が来るかもしれないよ。」
「さっきの駅がピークだからもうあんまり来ないだろうよ。だからさっさと離れやがれ。」
「いーじゃん。友達なんだし。」
「はぁ?私がお前の友達にいつなった?秒単位まで答えろ。」
「ネックレスをあげた瞬間さ♪」
「わかった、返すよ。」
「あげたものは返せない☆」
「返せる。」
ネックレスの箱を永島の上着ポケットにねじこむ。
「わわっ、ちょっと。」
「はいはい今の時点でそれは永島のものだ。」
勝ち誇るようにそう言ってやった。
「千遥〜、何でだよ〜。」「お前のアホくさい理屈なんて簡単に覆せるんだよ。」
「そうじゃない。ほら、今だって一緒に帰ったりしているのに友達じゃないって。」
「はぁ?」
「十分に俺としては千遥は友達なんだけど……。」
「お前が勝手に寄って来るだけだろう。私から言えばいちいち話し掛けられるのは迷惑だ。」
「……本当?」
「本当だ。わかったら離れろ。」
妙に悲しげな顔をされるけれど、本当のことなんだからしかたがない。
「あのさー、今日も嫌だったんだよ。」
「……なにが?」
「『勉強教えて』だ、『昼食一緒に取ろう』とか挙げ句に『一緒に帰ろう』だろう?」
「勉強のは物に釣られたけどね(笑)」
「うるさい!でも頼んだのはお前らなの。」
「はいはい。」
「ったく、だから今後私に近づくなよ?スッゴく迷惑極まりない。」
「えー、い・や・だ♪」
「なんでだよ。」
「なんか楽しいし。」
「あぁ?」
何を言い出すんだ。
「でも千遥だってさー、最近楽しそうだよ。」
「はぁ?ちょっとまて……。」
「だって本当に嫌だったらもっと拒絶しそうだし。」「……。」
「そもそも人間って一人ぼっちじゃ生きていけないよ。それに仲間がいるからこそ、人生に彩りが添えられるし。」
……馬鹿のくせに。
「千遥はなんで友達を作ろうとしないの?人見知り……っぽい感じは無いけど。」
「もともとは人見知りだった。」
「えっ?」
「でもな……、最大の理由はな……。」
「……何?」
「……やっぱり教えない。」
「……ちょっ!」
私の急激な心変わりに興を削がれるような顔をする。
「なんでだよ!」
「だって冷静に2秒考えたら教える必要性が無いなって思った。」
「えー、ずるいよ。」
「なんとでも思うがいい。……おっ、お前の降りる駅に着いたぞ。」
「わわっ、もう。今度教えてね♪」
「いいえ、嫌だ、断る。」「地味に否定的な言葉……。まぁ、じゃあね。」
「……(ペラッ)」←参考書を開いた。
「無視かよ。」
そんな声が聞こえたが私は参考書を見ることに集中した。
明日はバレンタインだけど友チョコオンリーf^_^;
彼氏欲しいー(T_T)