五十話
「いらっしゃ……ってませガキか。」
「こら、お客様にそんな言葉遣いをしてはいけません。」
「……っせーな。」
バイト中に無駄な客が来たのでそう言ったら怒られた。
「申し訳ありません、お客様。」
「いーよ。全然気にしてないし。」
そう言った少年・大塚俊介、こいつはまだ12歳の子供だ。
「ねぇ、お兄ちゃんみたいなお姉さん。」
「潰すぞ。」
「……僕が泣いたら怒られるよ。」
「チッ……、とりあえず注文は?」
「ミルクティー。」
「ガキはミルクで十分だ。」
「アキラ兄ちゃんのほうが牛乳飲むべきだと思うよ。」
「どういう意味だ?」
「胸がないじゃん。」
「……ガキ、後で……。」「そんなこと言っていいのかな?店長さん呼んじゃおーっかな?」
「……かしこまりました。」
このガキ、割と苦手だ。自分の立場を死ぬほど理解しやがっていて、有効利用するんだよ。
「ねぇー、アキラちゃん。」
「んだよ。」
「今日はV系なんだ。」
「店の趣味。」
この店は日によって衣装とかなんか変わる。
妙に派手な衣装とメイク、どこかのV系バンドをイメージしたとか店長が言ってた。
私は髪が黒いので金髪のヅラを被されている。頭カユッ。
「……ほらっ、ミルクティー。」
「砂糖入ってる?」
「抜いてある。(嫌がらせ)」
「……うぅ、てんちょ「わかったわかった。」
本気で泣かれると大変(給料減)なので砂糖を入れてやる。
このガキは前にバイトの休憩中に会った。男装したまま外に行ったらこいつがいきなり「お兄ちゃん!」って呼びやがった。
で、何か言おうとしたんだけど声出したら公衆の面前で女ってばれちまう。(結構私、声高いから)
いかにもコスプレ的?な服だったから女だと痛い子になっちゃう。
しょうがないから店に連れて来ててめぇの兄ちゃんじゃねぇって教えてやった。
こいつの兄貴はこいつの小さい頃になんか家出しちまったらしい。
で、よっぽど兄貴に似ているらしく私に変に懐いちまった。
私、子供嫌いなんだよな。
砂糖を入れてやってから、とりあえず厨房に戻る。
接客や嫌な時は適当に料理を作っていれば問題ない。
カップケーキを作っているとヒロが来た。
「あの子、また来たね。」「ませガキのことか?」
「えっ、ああ。俊介君、結構美少年じゃない。将来が楽しみ。」
「お前の男好きの将来も楽しみ。警察に捕まるか、結婚詐欺に遭うか。」
「なんてことを言うのよ。」
「そろそろ三十路だろ。」「ちょっ……。」
ヒロ(愛里)はかなり若作りしているのだ。だが、年齢的に色々アウトだと思う。
「ていうよりアキラ。」
「んだよ二十八歳九ヶ月と十七日のヒロ。」
「……アキラ、覚えておきなさい。それよりなんでバイトしてるの?」
「遊びたいから。」
「嘘でしょう。」
「その通りだ。」
「本当は?」
「何となく。」
「えー、そんなわけないでしょ。」
「ヒロ、そういう押しが強くなっていくのはおばさんになっている証拠だ。」
「なっ!」
ヒロは頬を引き攣らせる。
「わかったらさっさと行けよ。客来てんぞ。」
「……いつか仕返ししてやる。」
「はいはい。」
とりあえずヒロは客に愛想を振り撒きに行った。