三十四話
放課後、とりあえず眼鏡を買いに行こうとすると……
「千遥〜、どうした!?眼鏡がないから一瞬わからなかったぞ!」
「大声出す事じゃないだろう。うぜえ、ぶっとばすぞコノヤロー!」
「いつも以上に言葉遣いが悪いね。大丈夫、俺は匂いでわかったから☆」
「変態じゃねーか。気持ち悪!!50m以上離れて欲しい。」
「そんな事は置いといて……。」
「置いておくな!戻せ、今すぐ。」
「なんで眼鏡ないの?もしかしてコンタクトに変えてくれたの?」
「ちげーよ。ぶっ壊れただけだよ。」
「そんな……、てっきりオシャレに目覚めて「そんなわけない。国語辞典で殴るぞ馬鹿野郎。」………そうだよね。」
がっくりとうなだれる……永島だっけ?
「えっと……永島?」
「えっ!」
奴が驚いた顔する。
「どうした?」
「いや……、なんか初めて呼ばれた。」
「何を?」
「な……名前。」
「苗字だぞ?」
「あっ、いや……。出来たら龍斗って呼んでよ〜。」「………。」
「……………ダメ?」
「…………龍斗♪」
ふざけてだいぶ前に捨てた可愛いげを一瞬だけ蘇生させて言った。そして凄まじい自己嫌悪に陥る。
なんでそんなことを言ってしまったんだ自分、数分前に帰りたいよ……。
強烈な自己嫌悪に陥っていると、やけに目キラつかせた永島が、
「……千遥、もう一度。ワンモアプリーズ?」
「二度と言えるわけないだろう。」……そうだ、私には果てしなく大事な用事があるんだった。
「私はそろそろ行かないとな。」
「どこへ?それより「メガネショップです。」
危ない、傷口を抉られる。主に精神的な……。
「新しい眼鏡を買わないと人は道の石ころ並に見分けがつかない。それはどうでもいいけど字が読めない。」
「えっ、石ころ!?」
私は近視+乱視のせいで眼鏡がないとよく見えない。
「コンタクトのほうが良いと思うよ。」
「それは眼鏡愛用者への挑戦状か?」
「そうじゃないって。全く千遥は考え方が本っ当にひねくれてるな。」
「面倒でしょう?だったら近付くなよバカヤロー。」「…………。」
「……っ!」
無言でデコピン。地味に痛いんだよ……。
「二度とそんなこと言っちゃダメ!」
「別にいいだろ。私が何を言おうと勝手だろ。」
「とにかくダメなものはダメ!」
なんて幼稚な主張なんだ。呆れてため息をつくと、
「それより眼鏡買うんでしょ?」と、強引に話を変えられた。
「まぁな。」
「俺も行く。」
「………はぁ?」
いきなり何言ってんの。
「千遥の眼鏡選んであげるよ☆」
「遠慮する。」
「またまたー、照れ屋さんなんだから。」
「……一体どうしたらそんな考えになるんだ。」
「早く行こう!」
「はいはい、わかった。」
諦め半分、私はとりあえず店に行くことにした。
龍斗「千遥の一瞬のデレ発動!」
千遥「誰かコイツにトドメを刺して……。」