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三十二話
朝食を食べ終わり、弁当作りを再開する。弁当箱におかずを詰めていると、
「だからトマト入れるなよ。」と、声が聞こえた。
「早死にするなら財産たくさん残せよ中年。」
「はいはい。」
ったく、ミニトマトは楽なんだぞ。隙間があった時にさっと入れられるからな。
適当に詰め終わったら洗い物を片付けなければ。
ガチャガチャと洗っていると父さんから声をかけられる。
「傷跡………。」
「……っ!」
「治らないな。」
私の腕を指さす。
「結構深かったからしょうがないし。」
「……まあな。」
小学生の時に色々あってそのまま……、とにかく跡は消えない。
「塞がって、血が出なければ大丈夫だろ。全く痛みはないし。」
「……そうか。」
……最悪な夢見た後にこれを指摘されるとイラッとくるな。
嫌な気分を飲み込むようにカップに残っていたコーヒーを飲み干す。
コーヒーはぬるくて不快な苦味を口に残した。