二十八話
家に着くと人の気配があった。泥棒?かと思ったが違った。
「……千遥か。お帰り。」「帰っていたんだ。」
父さんがいた。いつもは深夜に帰っているらしいが稀にこの時間帯に帰る事がある。
「ご飯はこれからだけどいいか?」
「……ああ。」
適当に買ってあった魚を焼き、みそ汁をつくる。ねぎを切っていると、
「千遥、学校どうだ?」
と、聞いてきた。
「成績はべつに変わりないぞ。」
「成績じゃない。人間関係だ。」
「関係ないだろ。」
はぁ……と、父さんがため息をつく。
「社会人になるには人間関係を築くのが大切だ。お前のその考え方は正直、直すべきだ。」
「あーあー、ワカリマシタ。」
「あのなぁ……。」
説教はやめてくれ。最近似たようなことを言われたから余計に腹立つ。
「父さんは……、仕事どうなんだ?」
「まあまあだ。」
「あっ、そ。」
父はこの町の総合病院で勤務している外科医だ。たまに薬品の臭いがする。
「そうだ。」
「何?」
「今月の生活費。」と、言って金を渡される。
「多過ぎる、これの半分くらいでいい。」
そう言ったが、「余ったら自由に使っていい。」と言われた。
それで会話は終わった。そのあと後は私が料理をする音が家の中に響いた。