二十七話
「あっ、そうだ。」
私はそう言って立ち止まった。奴はどうしたといわんばかりに私の方を見る。
「なんで合コンをしていた私と同じ時間に帰っているんだ?部活でもやっているのか?」
時間的に少しおかしい。学校が終わるのは3時半頃。
2時間半くらい空白があるぞ。
「ええっ!あぁ……、聞きたい?」
「べつに言わなくていいがな。」
何かよくわからないが妙に焦ってる。
「そーいえば千遥って最近悩み事ってある?」
「あるぞ。例えば勝手に誰かさんに『千遥』って呼ばれるし、最近うっとうしいのが付き纏うし、それから………。」
つらつらと悩み事を言っていくとだんだん奴が暗くなっていく。
「千遥って俺の事、どう思っているの?」
「面倒な奴」
「うぐっ……。」
あーあ、本格的にがっかりしている?らしい。優しい子とかなら慰めるだろう、があいにく私は優しくない。
「だってそっちが勝手に私に近寄っただけだろ?」
「でもさー、心を開くみたいなさ、可愛いげがあってもいいだろ。野性の動物が懐くみたいな?」
「はぁ?」
可愛いげ?そんなもん焼却炉に捨てたわ。それ以前に私を野生動物だと?
「私は東京で生まれて4歳でこの町に来た。野生ではないぞ。」
「いや、例えだから……でも動物は否定しないんだ。」
「霊長類だからな。」「……?」
「ヒト類やサル類とかサル目の総称……、それくらい常識だろ。」
「ふっ、常識に囚われないのが俺のモットーだ!」
「………。」
「お願いだから人を馬鹿にするような目で見ないで……、少し傷つくから。」
「私には全然問題ないから。」
「俺に問題あるから。」
はぁ、私はいつまでこいつと話しているんだ?
「そろそろ私はダルいのでしゃべるのをやめるぞ。」「えっ!」
「………。」
「千遥〜、ねぇ答えてよぉ話そうよぉ。本当に黙ったまま?」
「…………………。」
そのあと色々しゃべりかけたりつつかれたりしたが私は黙り通した。
奴の悲愴な顔がたまらなく面白かった。