二十六話
ゆっくりと歩きながら駅に向かいながら小さな紙を見つめる。さっき貰った早田の連絡先だ。
字は、慌てて書いたらしいので少し下手くそだ。
連絡しなくてもいいよな、と思い破ろうとしたら誰かが紙を奪い取る。
「誰の連絡先?」と、奪いとった奴が言う。
「べつに言わなくてもいいだろ。」
「え〜、じゃあ返さないよ。」
「いいけど。」
そんなやり取りをする。
「もしかして男?千遥も隅に置けないな。」
奴がおちゃらけながら言った。
「まぁ、男だ。」
そう言うと奴は驚き、ふて腐れるような顔をする。
「連絡するの?」
「しない、面倒だ。」
「…………。」
「変だな。」
「えっ!?」「いつもなら『相手に悪いからちゃんと連絡しなさい。』とか言ってるだろ?」
奴がなぜか黙り込む。
「まぁ、どうでもいいけどな。」
私はとりあえず奴から離れようと早足で歩く。だけど奴はすぐに追いつく。
足の長さの違いを見せつけてるのかコノヤロー。
いくら頑張っても奴から逃げ切るのは難しいのでペースを戻す。
「千遥ー。」
「なんだ。簡潔に話せ。」「好きなタイプってどういう人?」
「……なんで聞くんだ?」「いーじゃん。」
「あー、わからない。」
「えっ?だって自分の好きなタイプだよ。自分が一番わかっているじゃん。」
「人を好きになったことがない。つーかなれないかもしれない。」
「え〜。」やや不満そうな顔をする。
「じゃあ顔で選ぶ?性格で選ぶ?」
「どうでもいいけどな。」「じゃあ学力で選ぶ?体力で選ぶ?」
「あー、体力かな?まぁ私より頭いい奴もいいな。」「……千遥って学年何位?結構頭いいらしいけど。」「教えなくてもいいだろ。」
「じゃあ前の1番よかったテストの科目は?」
「数学と化学だ。」
「スゲー、でもうちのクラスの岸下には千遥でも敵わないと思うよ。」
「誰?」
「クラスで1番頭がいいんだ。しかも3位だったのに学年2位になったんだよ。凄くない?」
「なんだ、1位になってないじゃん。」
「えー、でも1位の人は知らないな……。まぁ多分2組のガリ勉君だよ。」
2組のガリ勉野郎は知ってる。模試で会った奴だ。
「まぁとりあえずこんな無駄話はやめよう。」と、言って会話は途切れた。