二十五話
カラオケの室内は熱気が篭っていて暑かったが外はだいぶ日が暮れていて、寒かった。
さっきまで言い争っていた奴は「寒いわ♪慶君。」と、言いながら早田に引っ付いている。
早田は軽くあしらってから私の方へと近付く。
なんだ?と思っているとおもむろにケータイを取り出すと、「メアド交換しようよ。」と、言ってきた。
……浅倉は驚き、「私のはどうです?」と言っていたが、無視されている。
「断る。」
「どうしてだい?」
「答える義理はない。」
「……そう、じゃあ紙に連絡先書くからいつでも連絡してよ。」
紙を渡されたが、みんなの前で破り捨てる。
「必要ない。」と、言って私はその場を立ち去った。
駅に向かう途中「ちょっと待ちなさい!」と、言う声が聞こえて無視したが腕を掴まれる。
最近人を無視すると腕を掴まれるな……。
振り返ると浅倉が怒った顔をして私を見ていた。
「慶君のご好意をなぜ無駄にするのかしら。本っ当に貴女って最低ね!」
「……あっ、言う事ってそれだけ?」
「えっ?」
「そんなどうでもいいこと言うために追い掛けて来たの?」
「どうでもいいわけないですわ!慶君の気持ちを踏みにじっていますわ。」
「じゃあどうすればいい?そろそろ帰りたい。」
「慶君に謝りなさい!」
「わかった。」
私は早く帰って寝たいので早田のところへ行く。
「あー、ゴメン?」
「あ、あぁ……。」
疑問形(しかも棒読み)で謝ったがいいみたいだ。キーキー後ろで抗議の声が聞こえたが無視。
帰ろうとしたらすっと何かを差し出される。
「やっぱり貰っておいてくれる?」と、メアドが書いてある紙を出される。
いつの間に書いた?と、聞きたくなるが、まぁいっか。
最近人としゃべることが多くて疲れた。早く帰ってゆっくりしたい。
そう思い、いつもより若干遅いペースで歩きだした。