表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽りの悪旗~地球(テラ)再調査編~序章 深海に潜む異邦の巨艦  作者: 新景正虎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/12

第7話 銀河に進出するアメリカ合衆国

「なんだね?」


「彼らがこちらの想像以上に繁栄し、我々地球人以上の勢力になっていたらどうされます?」


 補佐官の言葉に大統領は乾いた笑いを見せる。


「君の想像力は実にたくましいな、そんなことがたかだか数十年でできると思うかね?」


 大統領の嘲りに補佐官は淡々と答える。


「かつて大戦に敗北した日本人が、あれほどの復興をなし得た実績がありますので」


 補佐官の指摘に大統領は反論をせず、腕を組んで憮然と補佐官をにらむ。


「…失礼しました。ですが、そもそも地球上での軍事衝突になる可能性もあるのでは?それはどうされるのです?」


 その問いに大統領は再び笑みを浮かべる。


「それについてはな補佐官、敵の敵は味方というだろう?そやつらを利用するのだ」


 大統領の言葉を聞いた補佐官には心当たりがあった。


「つまり奴等と我らと対立する勢力を争わせると?いかにされるおつもりですか?」


 その問いに大統領は出来の悪い生徒を教授する教師の顔つきで講義を始める。


「過去の接触の記録から奴等は我々と多くの価値観を共有していることがわかっている。特に民主主義(democracy)の価値観を共有しているのは大きい。奴らより中国やロシアの方が我等にとってはよほどエイリアン(Alien)だよ」


 この時、大統領はことさらにエイリアン(外国人)と言う単語を強調した。


「エイリアンには立ち向かわなければならない。それに対して我々は支援を惜しまない。しかしその結果我々にとって新たなるエイリアンが生まれては困る。

 よって、奴等を表舞台に引きずり出した後、我らは表向きゼフィルとは友好態勢をとる。この広い宇宙で出会った自由と民主主義の価値観を共有する同士としてな」


「そして潰しあわせると」


 補佐官の指摘に大統領はニヤリと笑みを浮かべる。


「そうだ、ゼフィルの存在は奴等にとっても驚異。それが我々アメリカと協力体制をとる。そうなれば我らの対立勢力の心中は穏やかではない、必ずその協力体制を潰そうと画策するだろう」


 大統領は席を立ち、ゆっくりと執務室を歩き続けながら続ける。


「我らはその間に立ち、対立と融和の流れを制御コントロールして双方を弱体化させる。そして弱らせたゼフィルからは地球での軍事活動を支援する見返りとして技術を手にいれ、銀河への進出の見通しが出来たら奴等を侵略者として排除して銀河に進出し、最終的には彼らの本国を我々の支配下に置き、その経済圏を我らの手中に納める。

 あるいは我々の対立勢力がその野心の赴くまま核兵器で奴らへの恫喝を行いながら彼らの勢力圏へと進出させ、その土地を制圧するのを妨害しながら双方を弱体化させる。それが歴代の研究チームが立てたシナリオだよ」


「そううまくいくでしょうか」


 その指摘に大統領は補佐官を睨み付ける。


「上手くいくかどうかではない、上手くいかせるのだよ。さもなくば我々は逆にゼフィルの植民地同然となり、未来永劫奴等の支配下に置かれることになる。

 そうなる前に我らが奴らを屈服させ、従わせるのだ。

 今の日本のようにな」


 そう言うと大統領は再び席につく。


「補佐官、やつらとの戦いは容易くはない。ハリウッド映画のようにはいかぬよ。

 我らにとって都合のよい、我らに倒されるために存在する宇宙人は映画の世界にしか存在しないのだ」


 そう言うと大統領は書類の一枚にサインする。


「国防総省からの提案通り、海軍に速やかに北極海の調査を進めさせる。表向きは北極海の海底調査と言う名目でな」


 差し出された書類を補佐官は受けとる。


「北極海ですか」


「国防総省の分析ではそこがゼフィルの我々に対する前線拠点となっている可能性が高いという。我々とロシアの喉元に短剣を突きつけられる場所、しかも軍事作戦を行うのも厳しい環境。やつらが拠点をもうけるにはもってこいだろう。

 今回、奴らが大西洋から北極海に向かいカムチャツカを抜けてきたのも北極海に拠点があるからだろう。

 なんとしても奴等の拠点を探り出す必要がある。もし、北極海に奴等の拠点があるのなら我々はロシア以上の軍事的驚異にさらされる。

 そして我々が北極海で動きを見せればロシアも動く、うまくいけば潰し合いに持っていけるだろう」


 その言葉を聞いた補佐官はうなずくと背を向け、部屋を後にしようとするが、


「補佐官、君は酒を嗜むかね」


 不意に大統領が声をかけてくる。


「はい、カリフォルニア産のワインをよく」


 その産地名に大統領は笑みを浮かべるが、


「それは結構、しかし今後は酒は控える事だ。

 君は優秀だ。だからそんな君を不用意な発言で失いたくはない」


「……はい」


 その発言の意味するところを察した補佐官は、短い沈黙の後にそう答えて部屋を後にする。


 その後、一人となった部屋内で大統領は呟く、


「奴等の存在を引きずり出すことに成功すれば異星人との交渉を行った大統領として歴史に名が残る。いや、それどころかやつらの技術と経済圏を手中に納めることができれば人類史に永遠に私の名が残るだろう。

 慎重に事を進ませねばならん。もし逆にやつらの経済圏に飲み込まれれば私の名は地球人類の汚点として記録されるだろう。それだけは避けねばならん」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ